九尾の猫
☆STEP 1
今回はエラリー・クイーンです。個人的にはとっても好きな作品。学生の頃、古本で買って、新訳が出たのできちんと買い直しました。ゆえに手元には二冊あります。
英訳、今回は簡単そうです。要するに尻尾が九本ある猫、ということでしょう。猫は基本ですね、【cat】。しっぽ、尾は【tail】。九は【nine】。うん、全部、パーツは揃いました。
問題は九尾。tailの複数形です。単純にsを付ければいいのか。なんとなくesのような気もします。
ここで新たな悩みが。「複数の尻尾って、存在するのか」。
いや、概念としてはありうるし、映像的に想像はできます。ただ、私の動物知識では、いくつもしっぽのある生物はいません。
確か尻尾の機能は枝の上などでバランスを取るためのものだったのではないか、とおぼろげな知識を引っ張り出す。
でも、犬は喜びの表現として尻尾を振るし、牛なんかはたかってくるハエを追い払うのにも尻尾を使ってます。だとしたら、いくつも道具があったほうが便利ということで、複数の尻尾があってもいいはず。
結局、こうなりました。
☆STEP 2
The Nine Tailes Cat
☆STEP 3
正解は……
Cat of Many Tails
でした。
え、manyって? 九は? 九はどこいった?
そうか、日本人は九尾の狐という妖怪というか霊獣のイメージがあるから、翻訳する上で九にしただけなのか。
ちょっとネタばらし気味ですが、確かに事件の数も九ではなかったはず。
事件の性質を考えると、確かにこれはnineじゃいけないんです。manyでないと。
いつ終わるかわからない、何人の犠牲者が出るかわからないという恐怖が、あの騒ぎの本質なんですから。
九番までしかない曲に見立てた事件なら、事件は九回起こるとわかっています。嫌な書き方をするならば、九回しか起きない。十回目はない。まぁ、これを逆手に取るという手もありそうですが。
うーん、翻訳はこういうパターンがあるのか。訳す言語の類する文化に近いイメージに寄せるというか、なじみのある言葉に寄せるというか。
ちゃんとした反省としては、tailの複数形はtailsだったということ。そしてきっとセイヤーズの『ナインテイラーズ』に引っ張られたんだろうな、と今さら思いました。
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