第262話我が新世界とか言うやつは、大体破滅する
「まあいい。
それよりゴミどもを片付けるのが先だ。
アレク、エルウィン、追いついてきた兵を指揮して奴らの包囲を狭めろ。
1匹も逃すなよ?
ただし、包囲は
それとガイア、ラビットはちょっと手伝え。
レイルズとローラと……セルトアだっけ?
お前らはいいや」
「あんたは相変わらず好き勝手……」
俺とユリーナのラブ劇場を黙って見ていたせいで、今まで完全に空気となっていたラビットたちはそうぼやきながらも剣を地面に突き立てながら立ち上がる。
「いいやって、おい……」
「セルドアです……閣下」
レイルズとセルドアはそんなことを言うが無視無視。
俺の態度にローラは苦笑い。
レイルズ、セルドア、ローラの3人はもう振り絞る魔導力のカケラもないぐらい、ボロボロなのはすぐに分かった。
セルドアとローラに至ってはそれほど能力が高いわけでもないからな。
ユリーナへの忠誠心はずば抜けてるから信用出来るけど。
ガイア、ラビットもまともに動けるほどの体力は残っていないだろうが、魔道力は搾り出せばイケる、イケるぅ!
ユリーナは……さっきたっぷり俺から吸収した。
「それとラビット。
レイアいたぞ。
いまも元気について来てるから後で再会しておけ。
あと、あのポンコツ妹属性具合なんとかしてやれ」
ラビットはその言葉に驚きの表情を見せる。
「あんたにレイアのこと言ったか?」
そういえばラビットから聞いたことなかったような気もしなくはない。
なので適当に返す。
「幼馴染は運命によって導かれる、それだけのことだ」
「おい、あんたそれ。
勢いで誤魔化そうとしてるだろ?」
「レッド、それちょっと適当過ぎ……」
そうか?
まあいいだろ、ノリで。
ラビットの幼馴染事情など実はどうでも良いので、誤魔化すようにギュッとユリーナを抱きしめる。
「リュークさぁ……、ユリーナ以外に冷たすぎない?
僕、さっき血吐いたんだよ、血?」
ガイアはぶーと不満げに文句を言ってくる。
ラビットと同じようにアルカディアの剣を支えにしてどうにか立っている。
負傷もあるが、なにより才能はあるが小柄な身体だ。
疲労によって動けないのだろう。
「そうなのか?
元気そうだから口切っただけだろ?
内蔵系なら動きたくても動けねぇだろうしな」
「……まったく、冗談だよ。
動けるに決まってるよ」
ガイアは呆れたように言いながらも深い息を数度繰り返す。
体力的には限界でどう見ても強がりだが、少し前のガイアならへこたれていただろう。
それだけガイアの心が強くなれたのだと感じる。
「第一、動けなんて言ってねぇだろ?
……受け取れ」
ガイアとラビット、それにユリーナに金属片を渡す。
もちろんユリーナには優しく手を握り添えるように手渡し、他の2人には放り投げて。
「何これ?」
ガイアがしげしげと受け取った金属片を空に透かして見る。
以前、渡した通信の金属片と見た目変わらないから透かしてみてもなんにもねぇぞ?
「それ持って魔導力込めてろ。
合図をしたら投げつけてくれれば良いから」
不思議そうな顔をする3人。
それを言ったタイミングで駆け回っていた黒騎士とミヨちゃんが両サイドに戻ってくる。
スッと空から着地する感じで。
格好いいな、おい。
リリーはアルクたちが合流を果たした時点で後方に下がっている。
なので気遣いは無用だ。
俺はプライアの剣を抜き放ち、黒騎士たちに呼び掛ける。
無論、もう片方の手はユリーナを抱き締めたままだ。
『いい加減、姫様離しなさいよ……』
呆れたようにメラクルが通信を送ってくる。
チラッとメラクルに目線を向けたが、今度は本当に呆れ顔。
無視無視。
「ちょっとレッド、もういいんだけど?」
弱めの力でグイグイとユリーナは俺の腕から抜け出そうとする。
なので逆に再度引き寄せ、苦しくない程度にぎゅーっと抱きしめる。
「大将〜、今戦闘中ー!
イチャイチャするのは後にしてくれ!」
襲い掛かってくる黒い獣のナニカを黒騎士がいなしながら、さすがに待ったを入れてくる。
仕方ない。
そろそろヤルか。
『メラクル、こっちに来い』
「なになに〜?」
俺は通信でメラクルに呼び掛けると、メラクルは新女神転生派のヤツらを蹴飛ばし素早く駆け寄って来た。
俺はもっと近づくように手招き、首を傾げながら無警戒に手の届くところまで寄ってきたメラクルのあごに手を伸ばし……。
そのまま口を重ねた。
「んっぐつ!?」
もきゅもきゅと口から魔導力を送る。
口を離し、1つ息を吐く。
「補充だ。
頼んだぞ」
「あんた、唐突過ぎ!
……ったく、だけど」
メラクルは俺にニッと笑う。
俺がプライアの剣を持つ方の手のこぶしをメラクルに見せると、メラクルはそのこぶしに自らのこぶしをコツンと合わせる。
「任せて」
コイツとはこんな関係がよく似合う。
友とよべる間柄。
出会った頃に嫁にもらうことになるとはまさに夢にもみなかった。
人生とはそんなものかもしれない。
メラクルは再度駆け出し、新女神転生派と黒い獣と両方を相手取り走り回る。
「邪魔邪魔〜!!!」
「電池として便利だね」
俺たちのやり取りを眺めていたガイアは、すっかり荒い息を整え終わりそんなこと言う。
「ダメですよ?」
何故か同じように俺の腕の中でそれを見ていたユリーナがクスクスと笑って答えた。
ガイアは本気で言ったわけではないのだろう、微笑を浮かべ肩をすくめて見せるだけだった。
「さあて、ゴミ退治だ。
行くぞ!」
俺の掛け声と共にさらに兵たちは勢いづく。
教祖グレゴリーは部下たちが公爵軍の兵により1人また1人と倒れていく中、憎々しげに俺を睨んで来る。
「貴様は……!
一体なんだァァアアアアアアアア!?」
「知ってるだろ?
我が名はハバネロ、ただの公爵様だよ。
それとも悪を断罪するカラフルレンジャーレッドとでも名乗ろうか?」
そこで駆け回るメラクルが今度は声に出して叫ぶ。
「カラフルレッドは私よ!」
「聞こえてたんかい。
つーかお前、茜の騎士って名乗ってたじゃねぇか」
もちろんポンコツ戦隊カラフルレンジャーの隊長はメラクルだから、レッドは譲ってやっても良い。
ノリで言ってみただけだから。
……前のときはちゃんとツッコミ入れてあげられなかったからな。
「ハバネロ公爵、貴様生きておったのか!
パールハーバーを倒し我らの大公国支配を邪魔し、その際に死んだと聞いていたが……。
だが、どちらでも同じことよ!!!
貴様らを始末して我が新世界の
どちらでも同じはまさにその通りだろう。
……だがな、一応は宗教家だろうから、そんなヤツが我が新世界とか言ってんじゃねぇよ。
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