第264話叫べ!必殺カラフルレインボー!
それは正しく邪神と呼べるのかもしれない。
何故なら、どこからどう考えても誰のプラスにもならない欲望と破壊のために生まれた存在だからだ。
崖下から半身をのぞかせた状態でありながら、その頭は見上げるほどに高い位置にある。
あたり四方を
そこから放つ威容は生半可な攻撃では通じまい。
「これぞ世界を救済する我らの救世主にして、新世界の神の姿だ!
さあ、ひれ伏せ、恐怖しろ!」
まあ〜、月並みな悪党台詞ありがとうございますと言いたくなるほど、教祖グレゴリーは自らに酔いしれている。
「これは……」
「なんて巨大な……」
ローラとセルドアがエセ邪神の威容に恐れおののく。
「あー……」
なんて定番の驚き方をしてるんだ。
グレゴリー教祖様が喜んでしまわれるではないか!
思わず上司であるユリーナを見てしまう。
何を言いたいか伝わったらしく、ちょっと困った顔。
可愛い……、やはりユリーナは至高。
隣のメラクルが半目で俺に。
「いや、あれ見てそう思うの当たり前でしょ……。
私らはあんたに先に聞いてたから心構えできてるけど、普通はあの超巨大モンスター見たらビビるから」
それもそうか。
教祖グレゴリーが叫ぶ通り、邪神ともいえる恐ろしいモンスターにしか見えない。
要塞型と呼ばれる巨大モンスターよりも1回りも2回りも大きいだろう。
事前に知っていなければ確かにビビる。
すまんすまん、とローラとセルドアに片手を挙げると、とても複雑そうな顔。
「ハバネロ……、それどう見ても喧嘩売ってるようにしか見えないから……」
そうか……、人間関係って難しいな。
事前に知っていた理由はもちろんゲーム設定の記憶だ。
ゲーム設定の記憶の中ではカスティアが生贄に捧げられ、素質の違いだろう、アレよりももっと巨大で凶々しさがあった。
悪いが俺からしたらグレードダウンしているようにしか見えない。
邪神に捧げられる素質とか、どう考えてもご遠慮願いたいものだろうけど。
もっとも悪魔神を封印した邪神とは完全に別物なわけで、実に
「……何故、貴様は邪神を前にそのように平然としておる?
教祖グレゴリーが邪神の威を借りる狐のようにキーキー吠える。
俺は耳の穴がなんだか痒くなって、小指で耳の穴をホジホジ。
「お前らが邪神と呼ぶモンスターをここで使ってくると分かってたからなぁ、今更だ」
「何だと?
この邪神のことを知っていたとでも言うのか?
強がるなよ、小僧!!」
教祖グレゴリーは吠え方といい、実に三下悪党っぽい。
俺は耳の穴をほじったカスをフッと吹き飛ばす。
「テメェらの手の者は様々なところに入り込んでいるつもりだろうがな。
それは裏を返せば、その全てに情報の抜け穴を持つということに他ならない」
何事もそうだが、動くということはそれだけ相手にも動く隙をみせるということでもある。
なにかの情報を得たと思えば、それを報告するために行動する。
その後をつければ拠点がわかるし、その仲間もわかる。
嘘の情報で釣るのは定番でもあるし、盗まれた情報からなにを欲しているのかを推測することも可能。
全員が生粋のプロというわけにはいかない。
数が増えればそれだけ穴もデカくなる。
ましてや、新女神転生派のやつらは情報戦のプロ集団ではない。
「つまりまあ……。
お前らの動きはバレバレだということだ」
面倒だったのは各権力者に繋がりを持っているから、それを丁寧にちょん切ってやる根回しだったわけだが。
面倒ではあったが問題はない。
この程度が出来なくては公爵なんぞやってられんからな
そこでメラクルがスススと更に寄ってきて、俺の耳元に口を寄せてくる。
「ねえ、ちょっと。
こんなのんびりしてていいの?
アレ、なんとかしなくていいの?」
アレと言いながら邪神もどきを指差す。
耳元で
「良いんだよ。
時間稼ぎなんだから。
……アレク、やれ!」
「はっ!」
アレクは俺の合図に即座に反応し魔剣に力を込め……放つ。
「
いくつもの竜巻が邪神もどきに絡みつく。
動きを完全に封じるにはあまりも邪神もどきは巨大だった。
だが、少し動きを止めればそれで良かったのだ。
何故なら……。
俺は力を込めていた金属片を投げつける。
それが邪神もどきにぶつかると、赤い陽炎が邪神もどきに
この初撃を当てられれば良かったんだからな!
そして俺は懐から細かいある物を入れた袋を取り出し、宙にばら撒く。
それは投げた先で浮き上がり、邪神もどきの周りへ飛んで行く。
魔導力を纏う小さな金属片。
それが100以上。
「何をするか分からん
切り札の1つや2つ用意するさ」
金属片はグルグルと回転しながら、復活直後動きのない邪神の周りを回る。
「ユリーナ、ガイア! ラビットも!
あいつにソレを投げつけろ!」
最初にメラクルが金属片を投げつけ手をかざす。
金属片が茜色の尾を引き回転に混ざる。
黒騎士とミヨちゃんも懐から金属を取り出し投げつける。
そして手をかざす。
すると黒色が回転を始める。
呼び掛けられた3人も金属片を投げつける。
ユリーナが手をかざす。
白い魔導力が。
リュークが手をかざす。
青い魔導力が。
ガイアが手をかざす。
緑の魔導力が。
それぞれの個性を表す魔導力が光となり混ざり合い、カラフルな光の渦が邪神もどきを包み込む。
そして俺も手をかざし、開いた手のひらをぎゅっと握り込むことでソレを発動させる。
「ひっさぁぁあああああああつ!!!
カラフルレインボーーーーーー!!!」
「技名ダサッ!!!」
メラクルのツッコミと共に渦が膨れ上がり光が溢れる。
グォォォオオオオオオオオオンと、山々に響く断末魔をあげ、邪神もどきはなにをすることもなく消え去った。
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