第47話共闘③
村の簡易な高台から、ゴブリナたちの姿を確認出来た。
うん、なんとかゲーム通りの動きだ。
予想と違ってもなんとかなるだろうが、戦闘は予想通りにいった方が絶対に良い。
だから策略家や戦術家はいく通りもの展開を予測し、その筋道を立てて置くのだ。
戦闘狂などは予想通りいかない方が面白いとか言うこともあるが、それはそういう生き方だからだ。
何かを守りたかったり、他に大事なものがある者はそのような生き方をすることはない。
あくまで戦闘狂などは己1人の酔狂な生き方でしかないのだ。
俺?
危ないことは真っ平ごめんだ!
ただでさえ、詰んでいる状況で戦闘を楽しむ余裕などあるわけが無い!!
そんなことをしている間があったら、少しでもユリーナを口説く!間違いない!!
「……仰ってた通り、ですわね。」
「ん? まあ、予想が当たって何よりってこと、です」
「今更、無理に敬語にしなくても良いですよ?」
そう言ってユリーナはクスクスと笑う。
可愛い〜。
「可愛いな」
何故かユリーナがキッと睨んでくる。
「か、可愛いとか誰にでも言うべきではないですよ!」
「誰にでもではない。ユリーナ様だけだ」
ユリーナの手を取り目を見つめると、ユリーナが見てわかるほど動揺し出した。
……このまま持ち帰りたい。
「大将〜、俺らもう行くぞ?」
黒騎士が呆れながら、足をトントンと鳴らし、ガイアも楽しそうな声でユリーナを茶化す。
「あらー? あの色恋に鉄壁だったユリーナが凄い慌てようだね?
婚約者のことは……まあ、あのハバネロ相手より赤騎士の方がマシだろうけど?」
うん、婚約者本人だからどっちにしてもマシではないということで、いやいや。
「おう、黒騎士頼んだぞ。
ああ、そうだ。
変なものを見ても深追いとかせずに大型を頼んだぞ?」
「わぁってるよ」
黒騎士には村に入る前に、大型を操る邪教信徒との接触の可能性を伝えてある。
無理に追い討ちを掛けると何をするか分からないということもあるが、1番はそれにより邪教集団が本気でユリーナたちを狙いに来る可能性を防ぐためだ。
ゲーム設定でも邪教集団の全容は明らかになっていないので、敵が何処に潜んでいるか分からないという危険が付き纏う。
それを防ぐには、まだ足りないものが多過ぎるのだ。
邪教集団もまた、自分たちの組織にとって誰が1番の敵か気付いてはいないのだから、今ここで怪しい動きをこちらが取るべきではない。
悪意というのは、見つかった瞬間にいつでも人を陥れようとしているのだから。
2人はぴょんっと高台から飛び降り、颯爽と駆けていく。
「さ、俺たちも行くか」
「はい」
「分かった」
「はっ!」
ユリーナと主人公ラビット、それにコウが返事をして、騎士2人が無言でついて来る。
コウについては敬礼付きで返事をする。
それじゃあ、貴族のお付きじゃなくて軍人だってことバレバレになるよ?
幸い、チーム代表のユリーナが何も言わなかったからか誰もツッコミをしなかった。
ガイアなら更なる疑いの目を向けてきたことだろう。
どれほどあからさまになっても、バラさないけどな!
先行し接近して来ていたゴブリナ3体には、少し走っただけで接敵。
「ラビット! 左を頼む。
俺は右をやる!」
「分かった」
そう言ってラビットは左のゴブリナに向かい加速。
俺も右方向に向かいながら、左手でユリーナたちに指示を飛ばす。
「他は中央を牽制! パワーが強いからよく見てから動けよ!
無理して突っ込まず、相手の動きを見て対応だ!
腕を振り抜いた後などが狙い目だ。
大丈夫、ゴブリナはフェイントを使わない」
「はい!」
「了解!」
今度は聖騎士2人も頷く。
加速したラビットは躊躇うことなく、左のゴブリナの下に入り込みその足を切り裂き、倒れたと同時に首を薙ぎ裂く。
しかしまあ、能力的に一撃だとは思ったがまさに瞬殺。
「やるねぇ〜」
流石は主人公、才能の塊……というか
戦い慣れてない?
ゲームではそういう表現確かになかったけど、もう少し戸惑うもんじゃないの?
大型モンスターは初討伐じゃないの?
行かせたの俺だけどさ。
考える間にゴブリナに接近、すれ違いざまに足の健を切り裂く。
倒れたところを喉に剣を突き立てる。
サンザリオン2、流石、我がハバネロ家の宝剣。
切れ味抜群である。
……宝剣と知らなかったけど。
ラビットと同じ攻撃パターンだが、ゴブリナ相手には下に入り込む勇気さえ有れば、これが1番楽である。
どうしても、ゴブリナのような人型の大型は足を切り裂き倒して切るのが基本になる。
基本大事。
むしろ、ラビットがなんでこのパターンを知ってたんだ?
冒険者稼業でもやってたとでもいうのか?行商人設定どこ行った?
それともこれまた主人公補正?
ゴブリナが沈黙したので、すぐ振り返りユリーナの無事を確認。
あちらも問題なくゴブリナを男聖騎士とコウが牽制し、ユリーナと女聖騎士がゴブリナの両足に切り付け、バランスを崩したところを全員で畳み掛けていた。
ゴブリナが沈黙したところで、真っ先にユリーナに駆け寄り彼女の手を取り無事を確認する。
「ユリーナ様、ご無事ですか!?
擦り傷などありませんか!?」
何よりもユリーナの御身の無事を確認。
最優先事項である。
「え、ええ、大丈夫です」
「ご無理はいけませんぞ? 疲れましたら、是非お休み下さい。
そこのラビットめが荷馬車の如く働きますゆえ」
こちらにタラタラと戻って来るラビットを指差しそう言った。
ラビットめは呆れた顔をして。
「……もうほんとなんなんだよ、あんた。」
ユリーナLOVEの通りすがりの公爵だが?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます