第7話 あの日のことを覚えているか? 2223年10月

テリスと別れた俺はそのまま走って台所を目指した。台所に入って調理台を漁り、先の尖った包丁を見つけ出す。そのまま夜風の元へ駆けつけたい気持ちを抑えて懐中電灯を探す。


「あった!」


点灯する事を確認し、すぐさま飛び出す。


(っ!どの部屋だったっけ?)


広い屋敷で部屋が沢山ある。悲鳴が聞こえた部屋をが分からなくなってしまった。しかしとある部屋の前に折れた箒が落ちているのを見つけた。そこへ向かって足音を立てないように走る。途中で懐中電灯を一瞬点灯させるとテリスの叫び声が聞こえてきた。その声を合図に足音を気にせず全力疾走。俺は部屋に飛び込み、亜人の背後から首へ目掛けて思いっきり逆手に持った包丁を突き刺した。


「ガッ!?……」


鈍い感触。喉を潰され悲鳴をあげる事なく5秒後には亜人は動かなくなった。


「ふぅ……」


奥を見るとうずくまる夜風とへたり込んだテリスがいた。


「遅いよ」


「すまん。夜風?大丈夫か?」


「こ、怖かったよぉ……」


俺が聞くと夜風は消え入りそうな声でなんとか応えてくれた。その後、俺たちはこれ以上の捜索は危険と判断し、シェルターへ向かうことにした。




3人で再びシェルターを目指す。行く先々で怪物を見つけるたびに進路を変ていく。近づいたり遠のいたりを繰り返すうちに後もう少しと言う所にたどり着いた。


「あと一キロくらいだ!」


二人にシェルターまでの距離を伝えると丁度シェルターへ直通の通りに出た。遠くの方で軍用車両のようなものでできたバリケードが見える。周辺はさっきから散々見てきた怪物たちの死体でいっぱいになっており、鳴り響く銃声が交戦中であることを知らせている。


「やっとか!」


「はあ〜つかれたよぉ〜」


テリスが安堵したように言う。夜風も体力の限界なようだ。


「近くに見張りをしている人がいるかもしれない、俺たちの存在に気づいてもらおう」




俺たちはタイミング見計らい、通りの真ん中や近くの建物の屋上などで気づいてもらえるよう上着を振り回したり、飛び跳ねたりしてアピールをした。数分後、5人の兵士が俺たちを向かいに来てくれた。俺たちは無事シェルターに辿り着き、お互いの生存を喜び合った。




外はやはり大ごとになっていた。今回の事態について「世界の終わり」だとか「神からの天罰だ」などと言われているらしい。日本には「超自然災害対策基本法」などという耳を疑うよな法律と「防衛省超自然災害対策課」という同じく正気を疑うような部署が以前に作られていた為、他国と比べればスムーズな対応がなされていた。しかし、地下シェルターに避難した後も俺たちは幾度となく怪物たちの攻撃を受け、2年後には人類の生存拠点は仙台へ移されていた。人類は地上で生活することができているが日々怪物たちの脅威に晒されている。




そして6年後の2229年、俺たち3人は軍に入隊した。




俺の両親は依然として見つかっていない。


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