第65話 僕っ娘になったカナタ 【おっとりver】

「これで……どうかな?」


 黒髪三つ編みサイドテールをつけてジーパンを履いており、なんともボーイッシュな格好である。


「似合っているよ」


「そう……似合うんだ……んぅ」


 いつもとは違って女の子らしさ全開というわけではなく落ち着いた雰囲気である。


 三つ編みを指でいじいじしているカナタ。


 胸は控えめであり(おそらくさらしで押さえつけている)すらっとした脚。


「嬉しいなぁ、僕もソウタの恰好かっこいいと思うな」


「…………っ」


 男性とも女性ともとれる爽やかなにおいがカナタの体から発せられ俺の鼻腔をくすぐる。


 今はデートしている。


 なんでも設定としては、素直になり切れないおっとりしている僕っ娘という設定らしい。


 すっかりその人物になりきっているカナタは俺の傍で自分の両手を背中で組んではこちらをちらちらとみている。


 歩いて数分後に絶妙なアルトボイスでカナタはいう。


「ソウタ、バイトもいいけれど僕のこともちゃんとかまってよね……」


「おう」


 またある時。


「もう、だめだよソウタ、他の子に目移りしちゃだめだよ。僕だけ……いや、やっぱりいい」


 俺は思わず、カナタの頭を撫でる。


「もう、子供じゃないよ、僕は」


 そして公園のベンチに座っては、ぼうっとするカナタの頬に冷たい飲み物を渡しては、びっくりするカナタを見て俺は笑う。


 ゆったりとした喋り方でたまに天然な様子を見せつける彼女とのひとときを俺は演技とかそういうのを気にせず、楽しんだ。


 何とも言えない幸福感に包まれて「好き」という普段なら冗談交じりに言ってしまう言葉もなんだかいうのをためらってしまうような居心地の良さに飲まれていったのだった。


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