第16話:その革命料理、受け入れる

 どんな調味料が使えるか、ステータスを見て確認する。


----------------------


 名前:タツヤ

 年齢:10歳

 性別:男性

 種族:ハイエルフ

 状態:普通


 Lv:1 (MAX)

 HP:100/100

 MP:0/0


 物理攻撃力:100

 魔法攻撃力:100


 腕力:50

 体力:50

 知力:90

 精神:320000

 敏捷:70

 運:100(MAX)


【スキル】

 アイテムボックス、異世界言語


【ユニークスキル】

 調味料作成:Lv.5 1up new!

(料理調味料:Lv.5 1up new!・お菓子調味料:Lv.5 1up new!)


【称号】

 悲しみの魔法使い、初心な心、パティシエ、クッキーの神様


----------------------


料理調味料:Lv.5

・醤油    ・ソース

・香辛料   ・卵

・塩     ・味噌

・昆布だし  ・鰹だし

・ケチャップ ・マヨネーズ


お菓子調味料:Lv.5

・砂糖

・チョコレート

・牛乳

・生クリーム

・インスタントコーヒー


----------------------


 おっ! 調味料作成のスキルが5に上がってる!

 マヨネーズまで作れるようになっているとは。

 これは使うしかないだろう。


 スズが極・癒しニンジンが食べたいって言ってたから、


 『金タマネギのみそ汁』

 『ポテトサラダ』

 『オーク肉のニンジン巻き』


 を、作っていこうと思う。

 もちろん【調味料作成】をフル活用していくよ。



 まずは『金タマネギのみそ汁』だ。


 1.金タマネギをスライスする

 2.鍋に鰹だしを取り出して沸騰させる

 3.沸騰させた鍋に金タマネギのスライスを入れて火を通す

 4.味噌を溶いて、ひと煮立ちしたら完成


 タマネギのみそ汁って、独特な甘みが出ておいしいよね。

 本当は『ワカメ・豆腐・ネギ』の組み合わせが食べたいけど。

 この世界にワカメと豆腐は見当たらないから、仕方ない。



 次に具材が少ないけど『ポテトサラダ』を作ろうと思うんだ。

 でもダイナマイトじゃがいもを茹でるのが怖い。

 爆発しそうじゃない? しないだろうけどさ。


「スズ、ダイナマイトじゃがいもって初めてなんだけど、茹でても爆発しない?」


「大丈夫、ダイナマイトじゃがいもは味がダイナマイトだから」


 ちょっと意味がわからないけど、危険はないみたいだ。

 早速『極・癒しニンジン』と『ダイナマイトじゃがいも』だけの、シンプルなポテトサラダを作ろう


 1.ダイナマイトじゃがいもを茹でる

 2.ダイナマイトじゃがいもを潰していく

 3.極・癒しニンジンを細かく刻む

 4.マヨネーズ混ぜたら完成


 マヨネーズを覚えた記念に作ったよ。

 具材が少なくて、少し寂しくなっちゃったな。


 一口味見をしてみると、ダイナマイトじゃがいものパンチの効いた濃厚な味に驚いてしまう。

 そんなダイナマイトなイモの味を、極・癒しニンジンが優しく包み込んでくれるんだ。

 具材がニンジンとじゃがいもだけなのに、今まで食べたポテトサラダの中で1番おいしい。

 異世界食材はすごいな。



 最後に『ニンジンのオーク肉巻き』を作る。


 1.ニンジンを適当な大きさに切る

 2.オーク肉を薄切りにして、ニンジンを巻いていく

 3.フライパンで火が通るまで焼く

 4.砂糖・醤油で甘辛く味付けして完成


 熱したフライパンの上に醤油を入れると、じゅわ~っと香りが広がっていく。

 香ばしい醤油の匂いって最高だよね。

 もちろん、盛り付けにランニングキャベツの千切りも添える。


 スズが買ってくれた魔石コンロも活用して、一気に大量作成した。

 少し焦げたやつもあるけど問題ない、それは僕が食べるからね。

 残ったらアイテムボックスに入れて、明日スズと食べよう。


 料理ができあがったので、待ってる2人のもとへ運んで行く。


 テーブルの真ん中には買ってきたパン。

 お椀に金タマネギのみそ汁。

 皿にランニングキャベツの千切り・ポテトサラダ・オーク肉のニンジン巻き。


 煮物も欲しいけど、これ以上2人を待たせるわけにはいかない。


 出された料理を見て、2人は驚いている。

 そうだよね、僕みたいな子供がちゃんとした料理作ったらビックリするよね。

 ギャップ萌えってポイント高いし、褒めてくれてもいいんだよ?


「見たことないものばかりなんだけど。なにこれ、料理なの? 芸術なの? セレブの遊びなの?」


 そっか。【調味料作成】で、この世界に存在しない料理と味付けを提供しているのか。

 肉で野菜を巻いただけなんだけど……。


「さっきから香ばしい匂いがしてた。肉から匂いがする」


 スズは料理に鼻を近付け、クンクンと匂いを嗅いでいる。


 そんな警戒しなくてもいいのに、ただの家庭料理だよ。

 でも、この世界の人にとっては『革命料理』みたいに感じるのかな?


 ……カッコよく言ってみただけです、すいません。

 適当にごり押して誤魔化してみよう。


「そうですか? 僕の地域では一般的でしたよ」


「「「 ……… 」」」


 まったく誤魔化せなかった。

 2人が不審な目で見てくる。

 こうなったら扱いやすそうなスズに勧める作戦でいこう。


「スズ。この白いのはポテトサラダといって、ダイナマイトじゃがいもの革命料理だよ。ダイナマイトの爆発力を、極・癒しニンジンが包み込んで全てを癒してくれる。心が木端微塵になりそうなほどダイナマイトな料理だよ」


「そ、そんなにダイナマイト?」


「超ダイナマイト」


 自分でも何を言ってるのかわからない。だが、ごり推せそうだ。


「わかった。その革命料理、受け入れる」


 ポテトサラダを手に取り、パクッと一口食べ始める。

 無表情だったスズの目がギンッと大きく開き、すごい勢いで食べ始めた。


 リーンベルさんと僕はその光景に圧倒される。


「おかわりを! 私にもっとダイナマイトを!」


 ヤバイ、スズが狂乱してしまった。

 でもポテトサラダのおかわりをあげちゃうよ。もっとお食べ。

 僕は良い付き人でしょ? だから見捨てないでね。


 それを見たリーンベルさんは眉唾を飲み、ポテトサラダを食べ始める。


「なにこれ!? すっごいダイナマイト!」


 あっ、リーンベルさんもまともな食レポしてくれないんですね。

 2人とも食べ始めてくれて安心しましたけど。


 ここでスズが新境地を開拓する。

 匂いで気になっていた『オーク肉のニンジン巻き』を箸で掴み、食べ始めていく。


「むほっ……むほっ……」


 よくわからない言葉を発した。

 君みたいな可愛い子が「むほっ」とかいう奇声を出しちゃダメ。


 リーンベルさんはほっぺたに手を当てて「甘辛くておいしい♪」と言ってくれた。

 おいしいよね、野菜を肉で巻いただけなのに見た目も綺麗に見えるし。


 こんなにおいしそうにパクパク食べてくれると作った方としては嬉しい。

 あの無表情だったスズが必死なんだもん。


 カンカンカン


 はいはい。おかわりはあげるから、箸で皿を叩くのはやめてね。

 お行儀が悪いのはダメだよ。

 付き人としてしつけしちゃうからね。


 皿におかわりをのせてる間に、スズはみそ汁を飲み始めた。


「金タマの甘みがスゴイ!」


「ぶほぉ」


 いきなり金タマはやめて、むせるから。

 マジ? と言わんばかりに飲み始めるリーンベルさん。


「本当だ。すっごい金タマの甘みがにじみ出てる」


「金タマスープヤバイ」


「独特な味付けと金タマの甘みがマッチしてるね」


「金タマが覚醒した」


「「金タマ革命だ!」」


 2人で金タマと略すんじゃない!

 特にリーンベルさんは言わないでほしい。

 完璧なお姉ちゃんキャラでいてほしいんだ。


 この後も2人は、ひたすら金タマを褒めちぎってくる。


「タツヤの金タマはスゴイ」


「タツヤくんの金タマは凄まじいね」


 言葉足らず過ぎますよ!

 どう答えたらいいですか!

 何を求めてるんですか!


 美人姉妹に金タマ(みそ汁)を褒められて大混乱した。

 恥ずかしくて股間を押さえてしまうのも無理はないだろう。


 一応フォローしておくけど、タマネギのみそ汁のことだからね?



- 30分後 -



 かなり多めに作ったのに、2人は残さず食べてくれた。

 お腹いっぱいになって、ボケーッとして食事の余韻に浸っている。

 僕はその間に洗い物を済ませた。


「あっ、ごめんね。洗い物までしてもらって」


「大丈夫ですよ。おいしそうに食べてもらえましたし、よかったです」


「その、えっと。少し食べすぎちゃったかな」


 恥ずかしそうにするリーンベルさん。


「いっぱい食べる女性の方が素敵だと思いますよ」


「みんなには隠してきたことだから、内緒にしておいてね」


「わかりました」


 墓場までもっていきます。

 リーンベルさんに嫌われたくないので、一生言いません。


 無事に食事会が終わったし、もうそろそろ宿へ帰ろうかな。

 2年ぶりに姉妹が再会してるんだから、積もる話しもあるだろう。


「じゃあ食事も食べ終わったので、僕はそろそろ宿に帰りますね」


「待って。大事な話がある」


 どうしたんだろう。スズが急に真剣になった。


「求む! デザートにクッキーを!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る