万能スキル『調味料作成』で異世界を生き抜きます!【Web版】

あろえ

第1章 冒険者生活の始まり

第1話:異世界転移

【書籍版から来られた方へ】


Web版と書籍版は、登場人物の感情・描写・設定が大きく異なり、ほぼ別作品となっております。

また、Web版の方が紳士的な表現がとても多くなっておりますので、苦手な方はお控えください。


【コミカライズから来られた方へ】


書籍版を元にコミカライズされておりますので、まったく違う作品だと思ってください。

※WEB版は完全に男性向けの作品です、お気を付けください。




―――――――――――――


「ま、まぶしい……カーテン閉めなかったっけ?」


 太陽のまぶしい光に目を覚ました。

 布団で光を誤魔化して、もう少し眠っていたい……。

 そう思ったのに、布団を手に取ることができなかった。

 仕方なく起きようと思って目を開けると、僕の知らない世界が拡がっていた。


「あれ、なんで外?」


 人間驚きすぎると、1周まわって妙に落ち着くものだ。

 右手には草原が広がっていて、左手には小さな車が2台通れるほどの街道がある。

 アスファルトのような近代的な道ではなく、乾いた土が固められたような道だ。


「夢……にしてはリアル過ぎる。……まさか、異世界転移パターン?!」


 胸が高鳴った。なぜなら、異世界転移に憧れていたからだ。

 ファンタジー小説が大好きな僕は『異世界転移したらどうなるんだろう』と、毎日寝る前に考え続けていた。

 だから、草原にいたことには驚いたけど、異世界だと受け入れることにしたんだ。


 まずはできるかわからないけど、自分のステータスを確認してみよう。


「ステータス」


 ブーンと透明のウィンドウが現れた。

 よかった、ちゃんと出てくれた。

 ステータス画面が出るんだから、ここは間違いなく異世界だろう。


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 名前:タツヤ

 年齢:10歳

 性別:男性

 種族:ハイエルフ

 状態:普通


 Lv:1 (MAX)

 HP:100/100

 MP:0/0


 物理攻撃力:100

 魔法攻撃力:100


 腕力:50

 体力:50

 知力:90

 精神:320000

 敏捷:70

 運:100(MAX)


【スキル】

 アイテムボックス、異世界言語


【ユニークスキル】

 調味料作成:Lv.1

(料理調味料:Lv.1・お菓子調味料:Lv.1)


【称号】

 悲しみの魔法使い、初心な心


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「待って! ツッコミどころがありすぎるよ!」


 名前は苗字がなくなり、下の名前だけになっている。

 年齢も32歳なのに、10歳まで若返っている。

 種族も人間ではなく、ハイエルフ。

 精神32万という強靭なメンタルを持ちながら、基本すごいザコ。

 MPも0では魔法を使えないだろう。

 運が100でMAXなのは地味に嬉しい。


 問題は、レベルが1なのにMAXでカンストしていることだ。


 異世界転移して強くなれないやつって僕ぐらいじゃない?

 レベルという概念がありながら、レベルを上げて強くなることができない。

 この絶望感は半端ない、なぜか心は穏やかだけどさ。


 ……あっ、32万の強靭なメンタル持ちだった。

 これだけメンタル強かったら、意外に何とかなるのかもしれないと思えてきたよ。

 ひとまず冷静に現状を確認しよう。


 まずは若返りによる体の変化だ。


 手足が小さく、細いことがわかる。

 着ている服も布のような服だ。

 年齢も種族も変わってるぐらいだから、服が変わっててもおかしくない。


 顔を触れば、子供の様に顔が小さい。

 ……やった、コンプレックスだったアゴのシャクレが治ってる!


 思わずガッツポーズをした!


 10歳だと小学4年生くらいだから、シャクレる前に戻ったのかな。嬉しい。

 スキル【シャクレ攻撃】とか覚えてなくて本当によかったよ。


 「アーアー」と出した声も子供のように幼い声だ。

 きっと声変わり前に戻ったんだろう。

 男でも若返ると嬉しいね。


 気になっていたハイエルフはよくわからない。

 『エルフ=尖った耳』のイメージだけど、触ってみても普通で尖った様子はない。

 ハイエルフって希少な気がするから、バレないようなら普通の人間として過ごすことにしよう。


 スキルも気になるけど【称号】はなんだろうか。

 【悲しみの魔法使い】って、魔法の才能はあるけどMPが0で使えないってことかな?

 じっと見ながら考えていると、詳細が下に表示された。


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◇ 悲しみの魔法使い

・30歳を過ぎても女性と肉体関係がない人に与えられる称号

 精神値大幅UP


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「ブーーーーーーー!」


 30歳を過ぎても童貞のままだと魔法使いになれる、という話を聞いたことがある。

 僕は彼女いない歴32年、いやらしいお店にも行ったことがない。


 つまり……そういうことだ。察してほしい。


 普段は気にしないようにしてるんだけど、称号として刻まれると傷付くよ。

 精神が32万なのは、32歳×10,000の数値だよね。

 大幅UPは嬉しいよ、でも不思議だね。


 目から汗が流れてきたよ。


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初心うぶな心

・恋愛感情のコントロールができない人の称号

 運100(MAX)固定、恋愛虚弱体質+


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 運がカンストするのは嬉しいけど、恋愛虚弱体質+か。

 どんな影響が出るんだろう。

 手を繋ぐだけで手汗が出まくったら嫌だな。

 デートしたことないから、僕が女の子と手を繋ぐイメージがわかないけど。


 きっとこの称号は僕の心の在り方で変化していくんだろう。

 32歳で手繋ぎデートに憧れている僕は相当痛いやつだからね。

 せっかく10歳に若返ったし、女の子にいっぱい振り向いてもらいたい。


 運が100でMAX、つまり恋愛運も100に違いない。

 君には期待しているよ?


 次にスキルを確認する。


 僕は普通のサラリーマンだったけど、食べることが好きで料理もお菓子作りもやっていた。

 それが反映されたんだろう。

 調味料を作ったことはないけど。


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【調味料作成Lv.1】

 思い描くように【料理調味料】【お菓子調味料】を作成することができる。

 生成した調味料で料理をすると、素材の味を引き出しあらゆる効果が得られる。


【料理調味料Lv.1】

・醤油 ・ソース


【お菓子調味料Lv.1】

・砂糖


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 これは嬉しい。異世界で調味料は貴重なことが多いからね。

 それにしても、『思い描くように』ってどこまで通用するんだ?

 手から滝のように醤油を出してみるか。


 ドバーーーーーーッ!


 「うわあーーー、ストップストップ!」


 イメージ通りに大量の醤油が出た。

 マジかよ、無駄遣いしすぎて醤油作ってる人に怒られそうだ。


 今度はチョロチョロ醤油が出てくるイメージをする。チョロチョロと醤油がでた。

 ホースの先をギュッとつまんで出すようにイメージする。ブシューーと醤油が出る。


 本当に思い通りに調味料をコントロールできるなんて便利だ。

 ……便利か? 醤油を滝のように出すシチュエーションってないよね。


 しかし、やってしまったな。

 異世界に来てまだ10分も経ってないのに、草原を醤油まみれにしてしまった。

 やったものは仕方がない、雨で流れてくれることを祈ろう。


 それまで誰もここを通りませんように……と思いながら、街道を歩き始めた。

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