Vergissmeinnicht


 もしこの手が動かなくなっても

 もし言葉が紡げなくなっても

 もし息が出来なくなっても


 私がここに居たことを

 どうか どうか



 この流れに身を投じたことに悔いは無かった

 それが誰かの為であるならば

 無意味に散る命でないのなら

 誰かの心に残るのなら


 出来ないことが増えていく度に

 もう戻れないと悟るしかなかった

 前にしか進まないのだと

 人生とはそういうものだと



 濁流の中でもがきながら叫んだ

 忘れないで

 私がここに居たことを

 どうか どうか


 恋人に手を伸ばす思いだった

 一緒に居たかった

 君の人生と共に

 ずっと ずっと


 幾つも幾つもえがいてきた

 勿忘草の絵と物語

 それは私の願いに他ならない



 また一つ

 言葉が消えていく


「Vergiss-mein-nicht」


 消えかかっていくけれど

 きっと最期まで繰り返す



 忘れないで

 私がここに居たことを

 どうか どうか

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