第33話 なんだか陣取りゲームみたいな大統領選、ピリピリする家庭内

 連日のように〇〇州はトランプ氏が勝利、✕✕州はバイデン氏が勝利と報道されていた。一見、拮抗しているように見えたが、僅かにバイデン氏が有利だったらしい。


 夫のバイデン氏への不満が高まっていった。ついでに現総理への悪口も増えた。「緊急事態宣言なんてクソだ」「あの時(安倍総理辞任)の時に解散総選挙すれば良かった。あいつはダメだ」しか言わなくなった。


 口を開けばどれかの悪口。話題の八割がそれ。ニュース付けると「新規感染者は何人なんて意味無いよ、クソが」と毒づくようになったので、ご飯時くらいはその話題は避けたかった私は見たい番組がない時は、オンデマンド配信のアニメやDAZNにするようにした。

 前は熱心に見ていた「はたらく細胞」アニメの二期が始まったのに、つまらなそうにしてTwitterを熱心に見ていた夫の顔が印象的だった。


 もはや彼の関心は大統領選という名の陰謀論と政治家の悪口、コロナで騒ぎすぎと毒づくこと。見ているTwitterも動画もそればかり。

 正直、DVで別れた前夫と似たような兆候でビクビクしていた。


 非常時に人間の本質が現れるというなら、長引く禍は人間性を歪める。だからロックダウン中の世界中各地でDVが多発したのだろう。


 私は飲食店で感染した人が家庭に持ち込む家庭内感染にシフトし始めたという記事を見てからは、感染とDVになるのではないかという二重の恐怖に苛まれていた。この期に及んでも夫はマスクは付けないからだ。

 看護師のハマダさんなら精神科勤務経験もあるからと相談したが、その件は無視された。


 恐らく、コロナ患者対応で疲弊していたのだろう。返事の中に「現場で毎日のように看取る人がいるから、そうやってマスクを付けないなど予防をしない人の話を聞くとイライラするの」とあった。

 これは今思えば「これ以上言うな」というサインだった。しかし、空気の読めないADHDの私には通じなかった。


 彼女は得意分野は感染病理学であって、精神科ではない。知識は一応あるが入院クラスの発達障害者にも苛立つことがあるとこぼしていたから、私の特性も理解しきれていなかったのかもしれないから、これは私が悪かったと思っている。

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