第二章 魔法のモットー

環境構築が終わって、いよいよ魔法を勉強しようというところですが、ここで一つ精神論をさせてください。ごめんなさい。でも重要なことなのです。


魔法言語にはいくつかのモットーがあります。その中でも最も重要なものは以下です:


「この世は不条理だ。」

"This world is absurd."


一貫性、合理性は一見いいことのように思えます。しかしよく考えてみると、世界というものは実に不合理です。明日眠くなるとわかっているのに、ついつい夜中までYouTubeを見すぎてしまいます。一時の興味で金をつぎ込んだ趣味も、いつの日か全て無駄だったことに気づきます。数々の批判にも関わらず、古いシステムは使われ続けます。そんな不合理な世界の中にいて、それでも合理的であろうとすることは、それ自体が時に不合理となり得るのです。


全てが合理的な世界というのは妄想です。もちろん妄想は有用であることもあります。有用な妄想の際たる例が数学です。数学はとても合理的であり、完全に妄想です。数字も関数も図形も抽象化された妄想の産物です。しかし物理や経済学などで、数学は実世界を考えるのに道具として使えます。それでも、実世界に数学を適用するのは簡単ではありません。


ともかく世界は不条理なので、合理的であることにこだわるのは愚かなことです。魔法は不合理な世界に適応するように作られています。それを使いこなすには、あなた自身も不合理になることが重要です。これからあなたたちは数々の魔法の不合理さに出会うことになりますが、それでも驚かないでください。目の前にメロンジュースを出そうとして青汁が出てきても、ゲーミングPCを出そうとしてゲーミングノートが出てきてもです。世界はもともと不合理なのですから。

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魔法の使い方入門 ウゾガムゾル @icchy1128Novelman

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