自己透映

言葉が透けて見えていた

きっと僕は透明だったんだ

光も音も触れた指先の感覚も全部知らない


他人ひとの視線を 罵倒を聞き流していた

透明だからさ 全部透過していくんだ


でも忘れられたくはないから言葉を書いた

僕が書いたうたはどうやら他人に見えるようだ

その裏には僕がいる

言葉を書いた透明な僕がいる


言葉が透けて見えていた

きっと裏の感情を見ていたんだ

怒りの底も揺れた不安感も全部知れた


他人の行いに 発言に目を瞑った

透明だからさ 全部映してしまうんだ


でも誰かに気付いてほしいから言葉を書いた

僕の書いた詩にどうやら他人は触れられるようだ

でも裏にいる僕は、

言葉を書いた透明な僕は


仮面でいいと思った

取り繕っていれば上手くいく

裏の僕は見せなくていい

詩を書く僕で、透明な僕に蓋をする


落ちていく感覚だけがあった


他人の視線を 罵倒を聞き流していた

透明だからさ 

なんて言い訳で取り繕っていた


そうだ、透明な僕だから言葉を書いた

僕の書いた詩をどうにか他人に見てほしかった

だから裏にいる僕を


言葉の裏を透かして。見て。

そこにきっと誰か居る


仮面の奥の表情を 取り繕った内側を

透かして書く僕がいる

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