二通目 ドタバタレター返し
家に手紙を持ち帰りお母さんに相談した。少し手紙の内容は恥ずかしくて見せたくたかったが相談する以上仕方ない。お母さんは読んでニヤニヤと笑いながら私を見た。お父さんが帰ってきたら家族会議が始まった。
ゲーム好きの弟はゲームをしながら冷やかしつてきた。お父さんは「なんだこの破廉恥な!」と勘違いをしているよう。やめて、恥ずかしい…。お母さんはお父さんに違うと言ってくれた。
「桜薇にモテ期かぁ〜。」
お母さんはうっとりと笑った。弟は意地悪に笑って私を見た。
「今までモテなかったおねぇちゃんが?」
ボコッと頭を殴ってやった。私はふと考えた。確かに、手紙の内容が衝撃的過ぎて告白文に意識が回らなかったが、イタズラじゃかった場合、手紙主は私のことを好きだって言ってくれてる。それって、なんか嬉しいな…。顔が熱くなるのを感じた。お母さんはニヤニヤ笑いながら「あらあら」と言った。お父さんは「手紙くれた子を家に連れてこい!」と。弟はやはり冷やかしてくる。なんか、嬉しいような、恥ずかしいような少し、幸せなような。
お母さんは提案した。
「明日、いつもより早く登校して手紙くれた子を待ち伏せしてみたら?また来てくれるかもでしょ?」
確かに…。早めに登校してみるか。
お母さんが言った通り早めに登校した。下駄箱には手紙は入っていなかった。来てくれると信じて私は手紙主を待った。
暫くすると足音がしてきた。そっちを見ると、身長の高い前髪長めな男が俯いて、私の方へ来た。すると大きな瞳で私を見た。男は目を丸くして次第に顔を紅潮させた。私をまっすぐ見ることができないのかさらに俯いて早足に私に近寄った。なんか、怖いな。すると、女の子みたいに顔を真っ赤にして涙目に視線を落として私にあの可愛い手紙を渡して走り去ってしまった。
あの子が私を好きで手紙を書いてくれた子か。なんか、情けなかったなぁ。可愛らしいとも言えるけどなんか男らしい体なのにもじもじして乙女みたいで少しかっこ悪い…。でも、なんか嬉しいな。手紙でも、返してあげようかな。
「おはよー!桜薇。」
後ろから、元気はつらつな男子の声。
「おはよ、智也。」
そう、同じクラスの奥寺 智也(おくでら ともや)の声だ。野球部でよく響く声の持ち主でわかりやすい。智也は私の手に持ってる手紙を覗き込んで来た。そしてニヤニヤ笑った。
「何?ラブレターじゃん。誰から?」
「勝手に見ないでよ。」
「う〜んなになに?“K”…。へぇ、Kねぇ?」
無視した上になんか覗かれて勝手に話を進まされた。私は智也を見た。
「何?知ってるの。」
「いやぁ?あいつ、案外可愛いことしてんだなぁ…。」
絶対知ってるじゃん。まぁ、顔は見たしいっか。
智也と教室に着いた。私は智也に言った。
「レター返しとかって、私の下駄箱に入れておけば気づいてくれるかな?」
「お?何?惚れた?」
何故智也はいつもこういうふうに煽るのだろう。話的に違うだろ。
「違うから。」
「てか二枚目読めよ。」
「あっ…。」
『さくらさんへ
僕は、貴方が好きな“K”です。最近牛丼食べました。肉が柔らかくてジューシーで最高でした。口に、入れた瞬間肉がほろほろ崩れて口いっぱいに広がって、ご飯も甘くて幸せです。
美味しい。
さくらさんは牛丼好きですか?好きなら一緒に食べません?
K 』
智也は一緒に読んで吹き出した。
「何なんこれ。ハハハ、ちょっヤバ、面白すぎ。」
「K君って個性的だよね。」
「なんて手紙返すの?」
「うー…ん。私はカツ丼が好きです?」
「なんで疑問型。」
だって話すことないんだもん。と、言うのはやめておいた。一時限目の準備をしてとにかく席に着いた。
「K君って可愛らしいね。」
「ぅんむ…可愛いか?」
可愛いよ、何なら私より女子力ある。あんな、初心で先輩に恋してる女の子みたいにぽっぽっしながら恋文を綴った手紙を渡してくるなんて。
じゃあ、手紙でも書いてあげようかな。
『 K君へ
はいどうも、桜薇です。手紙ありがとうね。嬉しかったよ。私は、甘党です。パンケーキ羨ましいです。牛丼よりもカツ丼が好きです。今度一緒にご飯行きませんか?
桜薇 』
こんなもん? 手紙なんて書かないからわからない。しかも私の手紙用紙、K君よりも可愛くない。茶色い封筒に白紙。仕方ないだろ。普段書かないんだから。字も汚いし。なんか、悲しいなぁ。
早速私の下駄箱に自分で書いた手紙を置いた。なんか、虚しいんだけど。さぁ、本当にこの手紙に気づいてくれるのか。
“K”
恥ずかしい…。顔バレが早すぎたか。なんか、もうやだ。今日の手紙、置いとくのやめようかなぁ。そろそろ引かれそうなんだよな。あぁ、もう恥ずかしい…。
と考えながらも手紙を持って桜薇さんの下駄箱に向った。彼女は、もう来てる!?い、一歩遅れたぁ…最悪ぅ……。
手紙を片手に脱力した。一応手紙を置いておこうと下駄箱を見た。そして、何かあるのに気づいた。
そっと薄い紙を取り出す。手紙だった。がっかりしてさらに脱力した。まぁ、桜薇さん可愛いもんなぁ。そら、俺以外にもモテるよなぁ。
手紙を戻そうかと思ったけど誘惑に負け少し見てみようと思った。そして驚いた。
これ…俺宛!?
すぐに手紙を開けた。
『 K君ヘ
はいどうも、桜薇です。手紙ありがとうね。嬉しかったよ。私は、甘党です。パンケーキ羨ましいです。牛丼よりもカツ丼が好きです。今度一緒にご飯行きませんか?
桜薇 』
さ、桜薇さん本人に手紙を頂いてしまった。どうしよう、嬉しい。あぁ、俺幸せだ。俺はその手紙を大事に握って自分が書いた手紙を置いてクラスに向った。
あぁ、もう俺死んでもいいかも!
桜薇
トイレを済ませて教室に戻ると智也が私の方に来た。そして笑って言った。
「さーくら!手紙渡せた?」
「智也、渡した、というかおいてきた?」
智也はなぜかびっくりしていた。
「どこに?」
「?私の下駄箱。」
「はぁ?手渡ししてあげれば良かったのに。」
私は少し恥ずかしくて俯いた。
「だって、恥ずかしかったんだもん…。」
私の声は徐々に小さくなって半ば智也に聞こえたかわからない。智也は少し嬉しそうに笑って言った。
「ほ〜ん、可愛いとこあんじゃん。桜薇の癖に。告白されちゃって意識しちゃった?」
なんで智也って空気読めないんだろう。私は顔を紅潮させた。そして智也を睨んで言った。
「煩いな!!」
智也は「おー怖い怖い」と笑った。すると教室の外で呼ばれて教室を出ていった。千花がそばにやって来て「仲良しだね、本当。」と笑って来た。私は「仲良くなんてない。」と言って暫く愚痴を聞いてもらった。すると智也が教室の扉元でちょいちょいと私を手招きしていた。私は千花に言ってそっちに行った。
そこには智也の他なんか眼鏡をかけていて前髪が長い男子と朝のK君が居た。
「あれ、K君?」
K君は私を見ると顔を紅潮させて両手で頬を包んだ。どこまで乙女何だ…。
「あれれ~?蛍くぅん?照れちゃってどぉしたの?」
智也はどこまでうざい奴何だ。K君が可哀想でしょ。
ん?蛍君?
するとK君は肘で智也の横腹を殴った。智也は痛みのあまり、声を出してしゃがみ込んでしまった。お、おぉ怖いなぁ。
眼鏡君は綺麗に笑いながら言った。
「君が桜薇ちゃん?可愛いね。僕は、翔。で、そっちのヤクザは蛍永(けいと)まぁ、蛍君って呼んであげて。」
蛍永君……。
「よろしくね、蛍君。」
すると蛍君は動かなくなった。どうしたんだろう。すると見る見る顔が真っ赤になって倒れそうだった。翔君は焦って「蛍!?」と叫んでいた。そしてすぐ私の方を見て「すまん、もうすぐホームルームだからじゃあまた。」と言って蛍君を連れて行ってしまった。智也は笑って言った。
「なんか蛍の奴、お前の前だと乙女みたいだな。」
本当に。私はいつも驚かされるよ。
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