恋する食レポラブレター

桐崎 春太郎

一通目 純情ラブレター?

 いつも通り登校してきた時のこと。日差しが優しく照りつける夏の日の朝。特に変わらない朝顔の横を通り過ぎ、下駄箱へ向かう。まだ、誰も登校してきていない早い時間。いつも通りでそして心地よい。私は、靴をぬぎ上履きの下に置いた。そして上履きを取り出そうとしたとき、慣れない何かが手を掠めた。私は薄い、紙のようなものを取り出した。そしてはっきりと見えたものは____


 _____手紙だった。



 戸惑いはすぐに襲いかかる。本当にここは私の靴箱で合ってるのか見返してしまう程。そして、その手紙が私への物だと理解した。だって、私の名前『青柳 桜薇』と書いてあったから。ゆっくりと手紙を封筒から取り出した。可愛らしい黒い猫と四つ葉のクローバーのデザインが施された少しお洒落な手紙。そこには、綺麗な字で言葉が綴られていた。一瞬、女子から手紙を頂いたのかと思ってしまう程。手紙の内容はこうだ。


『さくらさんへ


僕が手紙を書かせて頂いたのには理由があります。僕は、貴方に恋をしてしまったからです。入学式のとき、友達と笑っている貴方は一段と輝いており、目を見張りました。それから、ずっと貴方を目で追ってしまうんです。一目惚れだったんです。もう、惚れてから一年経ちました。こう、手紙を綴らせて頂いているのは少々気持ち悪いかと思われますが、ホントに僕は貴方が好きなんす。

 貴方を食べてしまいたいと思う程…。

 そういえば、好きな料理は何でしょう?甘党、辛党どっちですか?僕は甘党で最近駅前にできたパンケーキ屋さんに行ったんです。もう、すごく美味しかったです!フワッフワなパンケーキにたっぷりのメープルシロップ。口に入れた瞬間溶け出して、メープルシロップもジュワ~と溢れ出して、とても幸せでした!!僕だけじゃ言葉不足ですが、そのよかったら、一緒にパンケーキ屋さんに行きませんか?

                    

                    K  』


 …?ラブレターというか、食レポをしただけな気がする。しかし、初めは純情なラブレター。この『K』君が誰なのか知らないが悪い人では無さそう。パンケーキも好きらしいし。パンケーキ好きに悪い人はいない!私は早速、友達の千花にこの事を知らせた。



 「いや〜青春だねぇ!!あんたが、非リアのあんたがラブレターをもらう日が来るなんて。」

 千花はがさつに笑った。私は、そう冷やかしてくる千花に怒りながら言った。

「問題はそこじゃない!なんか、凄く趣味が合いそうな人からだけどちょっと怖くない?だって“貴方を食べてしまいたいと思う程…。”なんて!!」

「どういう意味で食べたいんだろうねぇ〜。エッt」

 私は千花の口を手で塞いだ。そして「それ以上言うな。」といった。千花は面白いと言わんばかりに大笑いした。千花はそして笑いながら言った。

「いいじゃん、後はイケメンにかける他ないねぇ〜。」

「ほんっとそれな!」 

 私は大のイケメン好き。だから今まで彼氏が出来なかったと言っても過言ではない。

 やっぱり、イケメンは正義。

 ホームルームが始まってしまったので私達は一時切り上げた。 




 授業中もあの手紙、『K』君が誰なのか気になった。考え過ぎなのもわかっているがやはり慣れていないことで、考えてしまう。もしかしたらストーカーかもしれない、イタズラかもしれない、殺されるかもしれないと。 イタズラ説は大いにあると思った。男子は王様ゲームとか好きだから罰ゲームとか王様の命令でラブレターを書くように指示されたのかもしれない。その可能性は全然ある。というかそうなんだと思う。…多分。

 てか一緒にパンケーキを食べに行こうと誘う割には何故本名を書かない。誰かわからないし、会いにもいけない。そもそも、この手紙主はどうして手紙を渡してきたのだろうか。普通に会って告白なり、友達に紹介してもらうなり、メール交換するなりあったはずだ。なのにわざわざ可愛い便箋にお手紙。どういうこだわりなのだろうか。まぁ、いいか。この手紙主は一体誰なんだろう…。

 パンケーキ食べたいなぁ…。食レポ上手だった。会ってみたいなぁ、イタズラだったとしても。

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