クロネコギター2

山崎 モケラ

第1話 紺色の季節

『疲れた』

最近はこの言葉ばかり、何かの呪文のように呟いている。



俺は片道2時間、電車に揺られ仕事というものをしに行くサラリーマンだ。

職種は新人教育。

だが、そんなことはどーでもいい。



俺が今気になっているのはそんなことではないのだ。



帰り道に昔好きだったギターをなんとなく楽器屋に見に行った。




昔というか、今よりも若かった頃。

欲しくてたまらなかった黒いレスポール。



今なら買える。

そう、たしかに買えるのだ。



だが、俺は手に取りもせずに眺めるだけで帰ってきてしまった。

疲れてるのだ。

試しに弾くとか、店員とのやり取りも、ましてや買うと決めるとか疲れていてできない気がした。



その帰り道に、会った?見つけた?



クロネコ1匹。



俺は今このクロネコに夢中だ。




野良猫なんだろーか?

首輪もしないで家の前をうろついていた。



ウチの前は、車通りも多いので、車に跳ねられたりしたらイヤだなと思い、抱き上げて家の中に入れた。



子猫ではない。

もう大人ネコだ。



このクロネコに俺は今夢中なのだった。

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