君と過ごす日常

みかんを剥く男

第1話

 夕暮れ時、放課後の教室、グラウンドからは部活に励む生徒の声が聞こえていた。だが、そんなのは子守唄だ。俺を睡眠の沼へと沈めていく。底なしの沼へと……zzZ。


 足音が近づいてくる。その足音の主は、教室の扉を開けひょこっと顔を覗かす。その主、彼女は、教室の中に足を踏み入れると自分の机へと向かう。


「わすれもの♪わすれもの♪」


 謎の歌を歌いながら。


 机の中を除き


「あれ、ここじゃなかったかな」


 次はロッカーへと向かう。


「あったー!」


 忘れ物を見つけ天井へと1人Vサインをする。その後、教室から出ていくかと思いきや、こちらに、近付いてくる。


「もしも〜し。相馬くん起きて、そろそろ部活も終わって学校閉まっちゃうよ」


 俺は彼女、戸森に起こされ、目を擦りながら背を起こす。


「わぁかったー」


 顔を上げ戸森の方を見るとにこって笑って


「おはよう♪相馬くん」


 と天使スマイルを見せて俺に最高の目覚めをもたらしてくれた。


「おはようございます。戸森さん」


 天使スマイルなどと言ってるが別に戸森とは、喋ったことも特になく、更に向こうは顔よし、スタイルよし、成績よし、運動神経よし、おまけにコミュ力も高いクラスの人気者。俺には、タメ口で話すのも恐れ多い。先程は寝起きでタメ口で喋ってしまったが次は気をつけねば。


「相馬くん、敬語じゃなくていいよ、クラスメイトだしね。じゃあ、私は帰るからまた明日、相馬くん」

「ま、また明日」


 戸森さんは、教室の外まで歩いていくとこちらに振り返り手を振りそして、今度こそ帰って行った。


「俺も帰るか」


 俺は嵐の去った静かな教室でポツリと呟くと鞄を持ち帰宅した。

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