プロローグ3
「さぁてさてぇ、気を取り直してぇ殺しまぁしょうぅか! 」
ムラサキは恐ろしい独り言を呟き、魔法の詠唱を始めた。
「暗闇より出でて形作れ【
すると暗い洞窟の中にあって、更に暗い片手剣が創造される。
「ホハッ!」
そんな間抜けな掛け声で振り抜かれた一閃は、ヤツの目の前に未だ漂う雷を消し去った。
そして僕の方へ剣を振りかぶりながらツカツカと歩きだし
「うーん、やぁはり一番近い貴方かぁら!」
僕の首目掛けて、一直線に振り下ろした。
キィィィィィィンン!
目覚め死を覚悟した僕は、これで起きられるとほっとしてすらいた。だからこそ、周囲に響いたこの音が何か気付くのに一拍遅れた。遅れてしまった。
「う、うわぁっぁぁ! ライトは私が守るんだぁぁぁ!!【桜吹雪】! 死んじゃえぇぇぇ!」
「うぅん? 何故効かぁない? 神話系統ぅの違いぃでしょぉかぁ……? ま、良いでぇしょう。【魔黒閃撃】」
僕が気付いたのは全てが終わった後だった。
薄紅色の花びらのように数多の剣撃が光り、ムラサキを傷つけて行く。サムライ系統職の最終奥義である乱撃は止まる事を知らない。
花びらは滑らかな血液でどんどん紅味を増していき……
一連のスキルに刻まれた動作が終結し、ユミが納刀する。
歓声は上げられない。でも僕は歓喜する。流石は僕の、僕らのユミだ。夢の中でもこんなに頼もしくって……
「ぶぅぅぅぅ!」
奇妙な音が鳴る。
……え?
……え?
視界が、今度は真っ赤に染まる。
いんく? どこから?
出所はすぐに見つかった。
いや、今も見ていた。
それはユミの口や…… 首から溢れた紅で……
ポトリ、と。
愛しき顔が
地に墜ちた。
「ほははぁぁ? 油断しまぁしたねぇ? 危ない危ない。こぉいつ神の転生者か! ま、今は只の屍ですが。ほはぁぁぁあ!」
みじかいゆめがさめる。
「うぅん、後は雑魚ぉ二人でぇすか。貴方がぁたも彼女ぉの後を追ってぇくださぁい! 」
剣が振り下ろされる。
「がああああっ! 」
ライアンも硬い全身鎧ごと真っ二つにされてしまったたたたたたたたたたたたたたたたたたた
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
「うぅん、次ぃは貴方! 」
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
「【
体が動く。口が勝手に詠唱を始める。
いつの間にか握っていた見覚えのない透・明・な弓を構え
魔法をつがえる。
弓術のスキルを乗せ
放つ
「今さぁら抵抗でぇすか? 私ぃに勝てるとぉでも?」
「サーラッド家流魔法弓術奥義【
魔法の矢を、弓術と一体にする。それが我が家に伝わる魔法弓術。
一本の神炎は、千本に分裂する。
こんな狭い洞窟だ。千本もの火を放てば当然…
どごぉぉぉぉぉん!!!!
爆発
時が止まるなら、空間全てを灰塵に変えてしまえばいい。
「じ、自爆ぅ!? あ、熱い熱いあつぅぅううううびゃああああ! 」
ユミ、ライアンごめんね。頼りないリーダーで……守れなくて……。
そう考えると同時に、産み出した炎の波は僕と奴を等しく嘗めとり……
―――――ライト・フォン・サーラッドは死んだ。悪魔を道連れにして。
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