Your Life online ~異世界からの"逆"転生者、前世からの固有技能でVR世界を無双する~

譚織 蚕

プロローグ1

光球ライト】で辛うじて確保した視界の中、目の前には金色に輝く扉がそびえ立ち…… 辺りにはほんのりと青く光る岩肌と、うっすらパーティーメンバーの姿が。


 


僕たちの所属する冒険者パーティー《妖精の里》は、現在洞窟型ダンジョンの一つ〔蒼壁洞窟〕を攻略中だ。


道中何匹もの魔物を打ち倒して進んできた僕たちは、ようやくラスト1部屋…… ボス部屋の前に辿り着いた。


 


ダンジョンってものは、『神が作った人類へのご褒美』とかなんとか教会では教えられているもので、中には狂暴な邪神の眷属であるモンスターが潜んでいるんだけど……




その代わりに、人間はそれらを倒すことによってレベルという力、ドロップする素材、そして神からの宝物を手に入れられる。


 


 まぁそう旨い話だけじゃ無くって、強力な肉体や【スキル】を持つモンスターと戦う以上、ダンジョンを攻略する冒険者には常に危険が付き纏うんだけどね。




だから冒険者はパーティーを組み、数の力で怪物に挑むんだ。


 


 あ、冒険者っていうのは探索、討伐のスペシャリスト。基本ダンジョンに潜って生計をたててる。


後は…… 未発見や放置されたダンジョンから溢れる魔物から街を守ったりとか。




社会からはみ出した犯罪者予備軍って言われることもあるし、そういった面があることは否定しないけど……


少なくとも僕らは真っ当にやってるつもりだ。




「ようやく、ボス部屋に辿り着いたな。」


「そうね。ずっとジメジメしてたから頭から黴でも生えちゃった気分。あー、早く帰って水浴びがしたいわぁ~ 」


「そうだね! ゴールまであと少し! 」




 あぁ、自己紹介がまだだったね。僕はライト。まぁ本名はライト・フォン・サーラッドで実家は貴族なんだけど……


冒険者のときはただのライトで通してる。


【魔法弓師】って職業に就いてて、パーティーの後衛を務めてるんだ。




筋肉達磨だけど、スキルも豊富な頼れるタンク! 【盾騎士】のライアンと、


テンセイシャ? で極東の出身の美人【サムライ】ユミとパーティーを組んで、日々ダンジョンに潜っている。


かれこれ七年くらい一緒にやってるのかな?




「ここの完全踏破が終わったら、遂に僕たちもゴールド級に昇格だね! 」


「富、名声、力!やっぱ冒険者たるものいいランクになることが大事よね! 始めたばっかの頃は、昇格にこんなに時間がかかるとは思ってなかったけど…… 」


 


  ゴールド級は極々一部、全体の3%ほどの冒険者しかなれない狭き門。


だけどその分とても強くてみんなの憧れ。もちろん僕ら三人も強い憧れを持っている。




住んでいるリンダの街では頼りにされてる僕たちだけど、ゴールドになるには三年間シルバー級で実績をつくらなきゃならなかった。




でも、やっと努力が認められて、今日の仕事が終われば昇級できる。


ダンジョンも今の僕らの実力からしたら楽な等級だったとあって、僕たちは少し浮かかれていた。




と、その時。




「うおっ! 【挑発】!」




突如ライアンが敵の注意を自分に向けることのできるスキルを放った。




「ライアンッ、どうした!?」


「ライト! 魔物の襲撃だっ! 【エネミーフィルター】」




次に使われた敵を発光させ、位置を特定するスキルによって敵の輪郭が顕在する。




「ジャイアントリーチじゃない!? 気持ち悪ぅぅぅ!」




見えたのは巨大なヒル。ユミを始めとした女性陣には大不評な魔物、ジャイアントリーチだった。




でも、見た目の気持ち悪さに比べて耐久力は低いので倒し易い魔物ではある。




でも……




「ここに来るまでの道中、コイツいたっけ!? それかコイツがいるって情報、聞いた?」




ここに来るまで、このダンジョンでの見覚えがない。




普通ダンジョンに存在する魔物が一種類につき一匹だけなんてのはあり得ない。


例外はボスや、一部の良いドロップを落とす神からのプレゼントボックス、レア魔物だけだ。




万が一、運良く出会わなかった可能性もあるから、手元に魔法で木の矢を発生させつつ情報収集担当のユミに聞いてみる。




「居たり聞いたりしたら覚えてるわよっ! 本当さいっあく! 一番最後にこんな奴にであっちゃうなんて……」




とのこと。




「ちょっ、今はいいから早くコイツ倒してくれ! ライト、お前こういうの得意だろっ!」




ライアンからヘルプが上がったことによって僕は思考の海から上昇する。




「ごめんね、準備できたよ」


「おうっ、今固定するな! 【金縛り】!」




ライアンの手に持たれた大きな盾から、スキルの先制と共に赤い光が迸る。


そしてヒルに命中。少しの間動きが止まった。




「ユミは参加しなくていいよ。一発で仕留めるからね。【ショット】」




ちょっと弓の威力が上がるだけのスキルを発動しつつ、木の矢を目一杯引き搾り…… 放つ。




いつも通り真っ直ぐ進んだ矢はライアンの横をすり抜け、ヒルの土手っ腹に刺さった。




「よしっ! これでいいかな? 」


「お疲れ様だな! 」


「はー、戦わなくって良かったわ…… ありがとね、ライト」




巨大なヒルからすれば、高々爪楊枝が一本刺さっただけ。


にも関わらず弛緩する空気。




「でもほんっと意味わかんねえよなぁ。魔法が弓を経由することで、とんでもねぇ威力上昇するなんてな。」


「いやいやライアン、当たり前でしょ? 僕は一人でバッファー・弓師・魔法使いの三種類を兼ねてるんだから威力は三乗になるに決まってるじゃん!」


「ほんっと、聞いたら逆に意味わかんないわねぇ…… チートよチートっ! ま、仲間だから頼もしいことこの上無いんだけどね。」




談笑しつつ、ヒルの姿を横目に見るが……




そこにはもう、彼or彼女の姿は無く……




一本の木が生えているのみであった。




「やっぱおかしいよなぁ。どうして只の軽いドレイン攻撃が、こんな超強力な水分特効攻撃になんのか……」


「三乗だからね。仕方ないね。」


「ふふっ、まぁいいわ。ボスでも活躍してね。リーダー!」










予期せぬ戦闘が終わり、少しの休憩を取った後……




「武器のメンテナンスは済んだ? 」


「あぁ」


「努力・友情・勝利! 負けることなんか万に一つもないわ!」


「いや、それフラグだって!」




みんなから笑い声があがる。コンディションは上々だ。


僕は一つ大きな深呼吸をして、頼れる仲間を振り返る。




「準備はいいかい? それじゃあ行くよ…… 扉の先へ!」




そう言って僕は黄金の扉を開いた。














それが死に繋がっているとは知らずに……

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