微笑みの季節

クロネコには『ブラッくん』と名付けて、あたしは水をあげてお近づきになろう

とした。

すぐには、部屋にははいってこないかな?と、思った。

ノラ猫のようだし、警戒心が強そうなので。

Black Black CATを弾き終わり、急いでベランダを見るとすでにもう、ブラッくんは居 なかった。

だけど、不思議なのだ。

ブラッくんに会うと、体が軽くなる気がする。

気持ちが軽くなってるだけかもしれないけど。

その日の夕食は、いつも笑顔で取りかかれるのだ。

ブラッくんに会うにつれて、あの子を家で飼いたいと思うようになってきた。

いつのまにか、胸を焦がしていたミュージャンへの不思議なのだけれど薄くなっ ていった。

ギターを弾くのはもう、ブラッくんに会うためだけになり、自作の歌は歌わなく

なった。

一生懸命、Black Black CATを弾くとやってくる。

あたしは『今日こそ!家の中に入れる!』と、決めてたので、急いでベランダに 向かった。


ブラッくんは、ビックリしたようなまん丸の金色の目であたしを見つめてきた。

あたしは、用意しておいたネコのご飯をそっと差し出し、小さな声で『おいで』

と、だけ呟いた。

ブラッくんはネコのご飯を見てそっと笑うような表情を浮かべて、優雅に食べ始

めた。

食べてるところを捕まえるのは、なんか悪い気がしたが、そんなことは言ってら

れない気がしたので、ネコのご飯を食べてるところをハシッと捕まえ、部屋に入

れた。

部屋に入れたブラッくんは慌てる様子もなく。

怒ってる様子もなく。

嬉しそうに、座るのにいいクッションの上に横になり、笑ってるような顔をして いた。

あたしは、言い訳みたいに『ごめんね。ここに住まない?』と、聞いてみた。

ブラッくんはウチの子になった。

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