第28話 私は彼にまだまだ信用されていないらしいです
「おっ邪魔っしまーす!」
「いらっしゃいませ、綾奈さん。お待ちしていました」
信春君が相馬さんとご一緒に晩ご飯との事でしたので、今日の夜は綾奈さんと一緒に過ごします。
「やぁ~相変わらず広いね。この部屋」
「以前にもいらしたことがあるんですか?」
「そ~。ノブ君が急に引っ越したからね。様子見に秀ちゃんと来たことがあるんだよ」
綾奈さんの手を見ると、学校の鞄が握られていました。そういえば今日は部活があると言われていた気がします。
綾奈さんはもしかすると1人になる私を気にして来てくれたのかもしれません。
「先にお風呂に入られますか?」
「いやいや流石にそこまでは悪いよ~それに着替え持ってきてないし」
「着替えは私のをお貸しします。幸いにも私達そこまで体格も違いませんし、私の服でも問題はありません」
綾奈さんはジッと私の体を見てから、小さく頷かれました。
「それじゃぁ入らせてもらおうかな?あ、一緒に入る?」
「いえ、それはまだ恥ずかしいです!」
「え~いいじゃん。裸のお付き合いだよぉ」
私、人に肌を見せるのはとても苦手です。最近ようやくお風呂上がりの姿を信春君に見られても顔を赤くしなくなった段階だというのに、一緒にお風呂だなんて・・・。
「私は晩ご飯の用意をするので、おかまいなく!」
バスタオルを渡して綾奈さんを脱衣所に押し込みました。「え~」という声も聞こえましたが、無理なものは無理です。
「あとから着替えも持っていくので、ちゃんと入ってくださいね!」
「わかったよ~」
扉越しに少しガッカリしたような声が聞こえてきます。
ふぅっと一息はいてキッチンに向かい晩ご飯用意を始めるのですが、今日作る料理はすでに決まっています。
料理部のお友達に教えて貰った料理第二弾です。ちなみにまだ信春君には作っていません。
冷蔵庫から挽肉と野菜を取り出して、料理を開始します。すでに何度も学校で作っていますからレシピは完璧。さぁ綾奈さんはどんな反応をしてくれるでしょうか?
楽しみです。
「ふわぁ~良いお湯だったよぉ」
私の服を着た綾奈さんは満足そうなお顔でリビングに出てこられました。
「ちなみに明日のご予定は?」
「明日はねぇ、休み!」
手でVの字を作り満面の笑みをしています。
「では今日は泊まられますか?」
「えっ!?でもそれって迷惑じゃない?急すぎるっていうか」
「実は私お友達とお泊まりってしたことなくて・・・。駄目でしょうか」
「うっ!?駄目だなんてそんなわけ無いよ!優里ちゃんがオッケーなら喜んでお泊まりするから」
「本当ですか!?嬉しいです」
と言うわけで綾奈さんは今日お泊まりされるそうです。初めてのお泊まり会、これは楽しみです。
「あっノブ君に相談してないけど大丈夫かな?」
「きっと大丈夫だと思います。信春君とっても優しいですから」
しかし綾奈さんにはあまり響いていない様子。どうしてでしょう。
「優里ちゃん、これから大事なことをいうからよく聞いてね」
「はい」
あまりに真剣な様子に私も顔を綾奈さんに近づけて聞き入ってしまいます。
「ノブ君があれだけ優しいのは優里ちゃんにだけだよ?優里ちゃんされたことあるかな?乙女の大事な髪の毛をぐしゃぐしゃにする蛮行とか」
「えーっと、誰の話ですか?」
「鷹司信春の話」
私は思わず絶句してしました。信春君は私にそんなことをしたことが無い。私から見れば綾奈さんの方が信春君と良い関係が築けているような気がします。そこまでされるにはやはり信用が必要なのでしょう。
「綾奈さん、私もう少し頑張ります!」
「えっ、何を?」
綾奈さんは困惑されていますが、私としてはまた進むべき道が見えた気がしました。
私としてはもう少し信春君と仲良くなりたいです。そしてあわよくば・・・。
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