冒険の書に"転生"しました。
松乃武司
第1話 奇想天外
[キラーン]
「くるか、くるか!?」
「頼む! イベントの水着キャラ出て!」
「アオイたん! アオイ様!」
「去年どれだけ溶かしたと思ってる!!」
「今年は出てよ! アオイちゃああああん!!!!」
[テレレッレッレー!!]
「きたああああ!!!!」
「愛佳ー、今何時だと思ってるの!!」
「うるさいわよ!!!!」
「だって、星4以上確定チケット使うのは0時じゃなきゃダメしょ…」
私は河野愛佳、ごくごく普通のゲーム好きの中学2年生、
『深夜に星4確定チケ(10枚)使ったらアオイ様出たおww』
つぶやきをして寝る。それが私の日常。
ある日のこと、
[押入れの掃除してたら過去作のピケモン出てきたw]
[ピケモンかー、最近やってねーな]
ゲーム仲間チャットを開くと、過去作ゲームで盛り上がっていた。
[いや、十数年前のピケモンバグだらけで面白いw]
[私も気になって物置部屋物色してたら過去のデラクエソフトたんまりw]
[昔のドット風のタッチいいよなぁ]
[それな]
「へえ、私も昔のソフトあとで探してみようかな」
[そうだ、どうせだからみんなで過去作ゲームソフト探そうぜw]
[いいね、神データだったらそれも載せて]
「面白そうだな、」
「それ、私も参加させて。っと」
[それ私も参加させて〜]
[よし2時間後にみんなで持ち寄ったやつ見せ合いっこしようぜ。]
「物置部屋〜物置部屋〜」
「あれ? 鍵かかってんじゃん。」
「母さーん、物置部屋の鍵どこー!」
「知らないわよ、あなた、何か知らない?」
「あ、俺の寝室かもな、ちょっと待ってろよ。」
親父からもらった鍵で物置の鍵を開ける。
「うっわ〜、ホコリだらけ、」
壊れた時計、ボロッボロのぬいぐるみ、弦がボロボロのギター、
いろんなガラクタが並んでいるものの、ゲーム機と思わしいものはなかった。
あ、ここかな?
クローゼットの中で散乱した物たちの中にソレはあった。
「お、ファミカンじゃん!」
「懐かし〜、やってたの4歳の時だっけ?」
私が4歳の頃は別のゲーム機が流行っていたが、当時最新ゲーム機は高かったので、父親が使い古した名作ゲームの数々をプレイしていた。
「ピカモンは、親父やってないって言ってたなぁ、デラックスクエストはあるかな〜? デラクエデラクエ〜」
ファミコンが入ってるダンボールに入っていた紙袋の中を漁る。
「おっ、ボンビーマン! 親父と一緒にやったな〜」
「あとは、魔王村に、ペックマンか〜」
「スーパーメリオはないなー、」
「チャットのみんなにウケるようなのは少ないな、ペックマンぐらいか。私はデラクエの最新版をよくやってたけど、こりゃファミカンデラクエはないなー」
「ん、なにこれ、」
私が手に取ったのは1つのソフト、
ソフトのカラーは真っ黒で中央には広い草原が広がっているイラストがあり、主張が激しい青い文字でこう書かれていた。
『転生物語』と
「転生物語〜? なにこれ。」
「こんなソフト、あったけ? あとで親父に聞いてみようかな。」
「あ、そうだ! 自分の部屋のテレビに繋いでちょっとだけプレイしてみよ!」
「転生物語、一体どんなものなんだろう、ワクワクが止まりませんな〜!」
私は自室に戻り、テレビからプレスタを取り外しファミカンを接続させようとした、だがしかし
「あ、そういえば、2011年以降のテレビでは対応してないんだっけ?」
「ちょっとググってみよう。『ファミカン 最新のテレビでプレイ』っと、おお、結構出るなぁ、なになに〜?」
調べたところ、ファミカンを最新のテレビでやりたすぎて改造できるキッドを販売しているサイトを発見した。お盆に親戚の家に行った時にもらったお小遣いからかなり引かれることになるが、私は買うことを即決した。
「明後日には届くんだ〜、楽しみだな。」
ゲーム仲間にも、このキッドを購入した人が多数いた。
でも、『転生物語』を知ってる人は誰もいないし、検索しても少し画像がでるだけでヒットするものは少ないらしい。ネットショッピングではたまにウイルス入りの改造ソフトが売られるとゲーム仲間に教えてもらったが、私は疑うよりもプレイしたくてしたくてたまらなかった。
2日後
「届いた〜!」
私は少しだけ機械の知識があったので説明書やサイトの動画を見ながら完成させることができた。
「よっしゃ、これでできる〜!!」
接続に苦労したものの、私の達成感は疲労をはるかに上回っていて、すぐに起動した。
「ボンビーマンとかペックマンをやりたいけど、やっぱりこの転生物語、気になるなぁ〜。」
私は大好きの懐かしいゲームと古い未知のゲームを天秤にかけて後者をプレイすることにした。
転生物語はずっと画面が暗いままゲームのOPと思われる音楽が流れている。
ここで1つの疑問
「あれ、制作会社のロゴとか表示されてないな、会社名も表示されないし…」
「あっ! もしかして本当に改造のウイルス入りソフト!?」
私は急いでカセットを抜き取ろうとした。その瞬間
タイトル画面がバッと表示された。
「"転生物語"……」
綺麗な草原の上には大きな入道雲が広がる綺麗な青空
そして、転生物語という文字が真ん中に堂々と鎮座している。
すると、先ほどまで明るいイメージだったOPの音がだんだん小さくなり、所々音程を外すようになり曲調がどんどん乱れていった。
私は不気味に思い、ボタンを押してスタートさせた。
「変なゲームだな……」
そう言いながらも、私はワクワクとドキドキに満ち溢れていた。
まだ誰も踏み入ったことない地に、1人で足を踏み入れるような感覚だ。
ボタンを押してからは画面が真っ黒になり、OPの乱れた曲調も少しずつ元の音程に戻っていった。
そして
『ぼうけんのしょにてんせいします』
「冒険の書が消えた? かなり古いデータだったんだ。」
「まあ、自分で1からやる方が楽しいもんね。」
「ん、あれ? これって、ぼうけんのしょに"てんせい"しますって書いてある?」
「平仮名だったし、ぼうけんのしょっていう書き出しだからデータが消えたんだと思ったけど、これ、転生ってどういうこと?」
次は
『ぼうけんのしょにてんせいしますか?』
という文章と共に『はい』『いいえ』と表示された。
「これは転生したほうがいいのかなぁ、でも、こういうとこで『いいえ』って押したくなっちゃうんだよね。気味悪いし、不快な気持ちにさせた仕返しってことで!」
私はいいえを押した。
すると
『ぼうけんのしょにてんせいしてください』
と表示され、再び『はい』『いいえ』が表示された。
「あー、これループか。よし、思い切って『はい』にしてみよう!」
私は『はい』のボタンを押した。
『ぼうけんのしょにてんせいしました』
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