第10話 別れ話の末の事

翌朝

俺は部屋からなかなか出れないでいた


もしも

さくらと会ったら

どんな顔したらいいか分からなかった


昼過ぎ


俺はやっと下に降りて

冷蔵庫のお茶を飲んだ


それを追うように

兄が下りて来た


バツの悪そうな顔で俺を見る


「昨日はごめんな」


兄は一言


それは何に対して?

まさか

俺とさくらの事ではないよな


「えっ?何?」


兄は微妙な笑みを浮かべながら


「・・・聞こえたろ?

俺、ちょっと酔ってたから・・・

お前もいるのに

やりすぎた」


なんだよ

その謝罪


「別に

俺だってもう子供じゃないし

気にしてないよ

でも

さくらさん・・・バツが悪いんじゃないの?

彼氏の弟にあんなセクシーボイス聞かれて・・・」


そう言うと

兄は少しため息をつき


「さくらはもう来ないだろうから

あの後、ちゃんと別れた」


”別れた”って

あんなに声出して

あんなに激しく抱いておいて

どういうことだよ!!

思い出作り?


「最後にって頼まれたからさ・・・」


”頼まれた”って

俺の好きな人は

兄に頼み込んで

セックスしてもらったって言うのか?

俺とした

すぐ後に…

っで、別れたの?

捨てられたの?


「ずっと別れ話しててさ

さくらとは長かったから

なかなかバッサリ切るには情とかもあって

すがられると

ナカナカね・・・

でもやっと綺麗に別れられた

最後に一回やったら

別れてくれるって言うから」


兄はしょうがなく

さくらとやったんだ

俺が望んで求めていた彼女を・・・


辛かった

どうすればこのモヤモヤした気持ちをなくせるのか

分からなかった


兄の二日酔いの顔と

満ち足りたモテ男の嘆きのようなものが

気色が悪く感じた



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る