第8話 留守番
大学2年の終わり
今日は両親が県外の親戚の通夜に出かけていて
泊ってくるらしい
兄は友達との飲み会だから
”適当に飯、食っといて”
とメールが来た
そんな一人きりの家に
さくらが来た
彼女と二人きりになるのは
大学へ入ってからは
初めてだった
あんなにキスしていたのに
何も無かったように
兄の彼女という顔でしか会えなくなっていた
俺の事・・・何だと思っていたのか?
そんな疑問だけ残して
廊下ですれ違う時
家族と食事するとき
いつでも笑顔でこちらを見ていた
俺はふて腐れて
だけど嬉しくて
家に上げ
リビングへ通した
さくらはソファーに腰かけて
こちらを見た
「久しぶりだね」
「一昨日、きてたじゃん」
そう言うと
困った顔をして
「二人きりで会うの
久しぶりだね」
小さな声でそう言って
俺を見つめる
そんな目で見るなよ
許してしまう
今日は親が帰らないから
兄さん
飲み会の後
さくらを泊めるために呼んだのかな?
「約束?」
「えっ?」
「兄貴と・・・約束なの?」
そう聞くと
さくらは首を横に振った
「・・・そうなの・・・今日は兄貴
飲み会だから遅くなるってよ」
そう言うと
さくらは涙目になって
「誰と?」
俺に聞かれても
相手なんか聞いてない
「・・・女の子かな?」
さくらは声を震わせる
「なんかあったの?」
そう聞くと
さくらは俺のシャツの裾をギュッと掴んで
しばらく固まっていて
下を向いているけど
泣いているように見えた
俺はさくらの横に座り
彼女の頬に両手をあてて顔を覗き込む
目一杯に溜まった涙が
ポロリとこぼれた
意味が分からなかった
約束ではなく
急にきて
兄さんの飲み会の相手を気にして
泣いているさくら
聞かずにはいられなかった
「どうしたの?」
そう聞くと
さくらはポロポロと涙をこぼしながら
「大丈夫」
と一言
そして俺から目を逸らした
「じゃ、無いよな
大丈夫な奴の顔してないよ」
するとさくらは
俺の背中に手をまわし
抱き着く
ゆっくりと唇を合わせる
俺は
簡単には受け入れたくなくて
それをよける
すると
子供のように息を切らし
ヒクヒク言いながら泣き始めた
俺にすがるように抱きついて
ヒクヒク
ヒクヒク
リビングにその声が響いて
俺は
こんなに近くで苦しそうに
さくらが泣いているのを見ていると
やはり
ほおっておけない
俺の拗ねた気持ちなんて
一瞬で吹っ飛んで
俺は彼女をソファーに押し倒し覆いかぶさり
それまでの悶々とした気持ちを
投げ捨てるように
がむしゃらにキスをした
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