第3話 兄の恋人
さくらは、俺より4才年上の兄さんの友達だった
いや、恋人だった
兄さんとは大学入学前
予備校で知り合い
大学合格と共に付き合いはじめ
俺が高校1年の夏
家に遊びに来た
清楚を絵にかいたような人だから
両親もいたく気に入っていた
夏休み前のテストの結果が悪かった俺は
予備校へ行くように言われていたけど
拒否していた
兄のように勉強が好きではないから
大学へ進学したいなんて
思いもしていなかったから
だけど、親は
「せめて、大学へ行ってほしい
兄さんほど
良い大学でなくてもいいから」
と頼み込まれ
渋々、机に向かうことにした
兄の薦めで
さくらが家庭教師として
週に二度
家に来てくれることになった
兄としては
弟の勉強をみてもらうという口実で
家に呼び
家族と食事をさせたかったのだと思う
自慢の彼女だったから
すぐに心を開くほど
俺は大人ではなかったから
兄の彼女も
俺からしたら
分厚いアクリルバンの向こう側の
違う世界の人に思えて
はじめは
敬語だったし
物理的には椅子を並べ
肩がぶつかる距離にいるのだけど
心の中では
大きく距離をとっていた
さくらが家庭教師になって
はじめての期末テストでは
少しだけ
成績が良くなった
ほんの少しだけなのに
さくらは大喜びしてた
俺は、大袈裟な人だな…
と思いながらも
他人の事に
こんなに喜ぶ人を見たのは
はじめてだったから
妙に面白かった
俺は結構
単純で
さくらがあんまり喜ぶから
頑張りに欲なんかが出てきて
次の中間テスト
期末テスト
と順調に学年の順位を伸ばし
志望大学を決める頃には
上位10名に入っていたから
行こうと思う大学へは
担任からもお墨付きをもらうほどで
母親は大喜びして
また、さくらの事を気に入っていた
正月は
一応、受験生の俺にとって
あって無いようなもの
だけど、兄は元旦に
さくらを家に招待した
正月から他人の家に来るなんて
嫁かよ…
俺はどこか拗ねていた
「俺、勉強してくる」
そう言って
部屋に戻ると
さくらが追うように来た
か
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