問⑨【苦い思い出の話】
公園で僕たちは並んでブランコに揺られていた。
夕暮れが迫り、蝉が鳴いている。
今日はずっと彼女の様子が変だった。
だから人けのない静かな公園に彼女を誘ってみたのだ。
「関川君って、どんな子供だったの?」
「どんなって、まぁ、よく覚えてないかな。リア充ではなかったけど」
ハハハ、と笑う。まぁそれだけは断言できる。
明るくてかわいい彼女とは真逆の子供時代だったと思う。
「わたしはね、昔の自分が好きじゃないんだよね、今も思い出すとつらくなる」
「僕も昔にはいい思い出はないけどね」
「今でも関川君に話せないコト、話したくないコトあるんだよね」
なんか思い詰めた様子でそんなことを話してくる。
でも彼女、けっこう小さいことでも悩む癖がある。
なんだそんなことか、というようなことでも。
「僕は今のキミが好きだよ。キミといられて幸せだと思ってる」
「でも、本当のわたしは関川君が思ってるような人じゃないかも」
そう言って彼女はそっとため息をついた。
「ねぇ、関川君はわたしの昔の話を聞きたい? 聞きたくない?」
僕には彼女が抱えていたキズが見えていなかった。
いや、今が幸せすぎて、見ようとしなかったのかもしれない。
でもそれでいいと思う自分がいる。
過去はもう流れ過ぎたものだから。
僕は迷っていた……それでもどちらかを選ばなければならなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます