応援コメント

問④【今日は何の記念日?】」への応援コメント


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    🌱

    「と、とりあえず……店行こっか」
    「はい!」

    予約は11時半、かなり早く着いてしまうが仕方ない。食事をしながら今日が何の日なのか思い出そう。そうじゃないと今日の計画がダメになりそうだ。

    僕はジャケットの右ポケットに入れたそれをそっと指で確認した。

    彼女と出会ってから約4年。取引先の受付に座る彼女に一目惚れして、3回目の訪問で食事に誘った。
    時計塔の下で待ち合わせた初めてのデートで、釣りが趣味だと伝えたら彼女も興味があるとのことで、2度目のデートは釣りになった。3度目は買い物に付き合ってもらい、4度目はそのお礼を口実にスニーカーをプレゼントした。
    5度目のデートで気持ちを伝えたら、その場でYESをもらい、6度目のデートから手を繋ぎ始めた。

    付き合い始めて3年半、ケンカすることもあったけれど、彼女以上に素敵な人に出会ったことがない。これから先も彼女以上の人に出会うことは無いだろう。

    だから、今日この日、何度目になるかはもう把握しきれていないけど、彼女にプロポーズしようと計画を立てた。
    丁度いいことに、友人の良辰もつい最近プロポーズを成し遂げたばかりだから、指輪のお店はどこがいいか相談できた。
    寝ている彼女の薬指に携帯の充電コードをこっそり巻いてサイズを調べた。後日、コードの赤い印を見た彼女が不思議そうにしていたけれど、きっとバレてない。

    初めてのデートを水族館で思い出してもらって、街を歩いて買い物もして、いい時間になったらディナーの店に向かう。
    こちらも準備は完璧。たくさん調べた中でも特に彼女が好みそうな夜景の見えるホテルの18階。ワインや料理はもちろんだけど、最後のデザートプレートは、彼女の好きなフルーツタルトと、レアチーズケーキ。苺とブルーベリーをこれでもかというくらい飾ってもらい、プレートの余白にチョコレートで『marry me』と書いてもらうことにした。

    僕と結婚してくれますか?

    何度も練習した言葉。紙にも書いてみた。
    指輪を取り出す練習も、ハンカチを取り出す練習も。

    頭の中がそれ一色になるくらい完璧に準備してきたのに、僕は肝心な何かを忘れているようだ。

    一体、今日は何の日だ!!!!!?

    「美味しい!」と喜ぶ向かいの彼女は、相変わらず超可愛い。

    許してくれるだろうか。
    特別な日を忘れてプロポーズしようとしていた僕を。
    ……もし、特別な日を覚えていない僕とは結婚なんか出来ないと、悪い引き金を引いてしまったらどうしよう。

    う……うわわああああ!!!!

    「関川サン?! どうしたんですか?」

    せっかくセットしてきた髪を乱してしまった僕は腹を括った。

    「ごめん、今日が何の日か思い出せなくて」

    彼女はくりっとした瞳をもっとクリクリさせたあと、ぶわっと大輪の花のように微笑んだ。

    「私、関川サンのことをよーく見てるんですよ」
    「……う、うん?」
    「ふふっ」

    彼女は一旦箸を置くと、ぐいっと僕を覗き込みニヤリと笑った。

    「今日をどんな特別な日にしてくれるか楽しみにしてますね!」

    🌱


  • 🍸🍸🍸🍸🍸

     今日は僕にとって久しぶりのデートの日だった。

     デートと言っても、それは偽物で。いつもは後輩シュチュエーションで呼んでいたイメクラデリバリーの彼女を、デートシュチュエーションに変更して呼んだのだ。

     ちなみに彼女には絶賛片想い中だ。いや、分かってる。望み薄だよな。いいんだ。

    🍸🍸🍸🍸🍸

    https://kakuyomu.jp/works/16816452219578079140

    遅くなりました。
    続きは自作品内にて、よろしくお願いします。
    m(_ _)m

  • お邪魔します!



     僕は彼女の性格はよく分かっている。
     下手に誤魔化せば、彼女を余計に怒らせてしまう。
     僕は正直に覚えていないことを謝った。

    「フフ。そう、覚えていないのね? あなたらしいといえば、あなたらしいのかしら?」

     彼女はいたずらっぽく笑い、もう一言付け加えた。

    「今日のデートが終わるまでに思い出してね?」

    ・・・・・・・・・

    続きはこちらです。

    https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220144105798

  • コメント欄の皆さま、はじめまして。霧野と申します。
    途中からの参加となりますが、どうぞよろしくお願い致します!


    〜〜〜〜〜

    「ちょっとだけ、ここで待ってて。すぐ戻る」

     僕は彼女をベンチに座らせると、猛ダッシュした。目当ての店はすぐそこだ。

     飛び込むように花屋に入店すると、エプロン姿の店員に急いでオーダーする。ベテランらしき店員はテキパキと作業し、ものの5分もしないうちに素敵な花束を作り上げた。

     息を切らして戻った僕は、彼女の隣に座り背中に回した手を差し出した。
     手の中には、淡い水色の小さな紙袋。袋の中には、彼女の春色のワンピースによく似合う、小さなブーケ。

     彼女は驚いた様子でそれを見つめ、すぐに蕾がほころぶような笑顔を見せてくれた……かと思うと一転、吹き出した。

     呆気にとられて、僕は声を殺して笑う彼女を見つめていた。僕、そんな面白いことしただろうか……?

     彼女はなんとか笑いを鎮めると、涙を拭いて僕に向き直りブーケを受け取ってくれた。

    「いきなり笑っちゃって、ごめんなさい」

    ……いや、いいんだけど。

    「あのね、もし違ってたら、言ってください」

     僕は大人しく頷いた。ここは彼女の流れに乗るしかない。

    「さっき私が『関川さんとの特別な日』って言ったでしょ? それで関川さん、なんの特別な日なのか、わからなかったんでしょ」
     
    「うっ……はい」

     思わず項垂れた。「正直に言う」ことも「会話しつつ探る」ことも選べなかった僕は、「とりあえず機嫌を取る」ことにしたのだった。


    〜〜〜〜〜

    長くなってしまいましたので、続きはこちらに。
    https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16816452220247371080

    拙い作品ですが、もしお時間がありましたらお立ち寄りいただけると嬉しいです。

  • 💐涼月💐

     誕生日は来月だしな……僕は頭をフル回転させた。
     でも、わからない。

     こういうときは下手にしらばっくれると絶対ボロがでる。
     僕は早々に考えることをあきらめて、謝ることにした。
     
     続きはこちらへ↓

    https://kakuyomu.jp/works/16816452219634382982/episodes/16816452220194112797

     よろしくお願いいたします。

  • ♪♪♪ 一帆 ♪♪♪

     記憶というものは実体のない幽霊だ。いくら覚えていようと思っていてもそのうちあわふやになって泡のように消えてしまう。
     昔、忘れることも大切だ。もう戻らない過去をいつまでも思い出したところで、つらいだけだから、そういって悲しく笑った女性がいた。


     『人工知能は恋をするのか』
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219764931995

    今回は問題文が提示してある回から読んでくださるとうれしいです。問題文の回にかなりの情報をつっこんでいます。

  • ☆☆☆ 愛宕 ☆☆☆

     僕は、ひとまず探りを入れることにした。

     記念日らしきものは思いつかなかった。マリアの誕生日は、とりあえず七月の「海の日」にしてある。これは、彼女自身も産まれた日を知らなかったからだ。ついでに言えば、彼女の歳も具体的にはわからない――。

    『二択探偵フタヒロ』
    (https://kakuyomu.jp/works/16816452219638120621/episodes/16816452220076094436)


  • 編集済

    🍏🍏🍏
    「君と会える日は、僕にとって特別な日なんだけどな。いつも」
    「そう、いうことじゃ……」
     いいから、と僕はその手をとって歩き始めた。さっさと行動しないと折角立てたスケジュールが水の泡じゃないか。それはそうと……
    「気になってたんだけどさ、なんで今日はそんなコテコテの恰好なのかな? なんだかヒラヒラしているし、顔はキラキラしているし、どうも風変わりな香りがプンプンする」
     そもそもこの時計塔の下で、僕が来る日も来る日もジーンズ・ウォッチングを繰り返し、1000の検体の中からようやく見つけたミス・ジーンズだったのに。
    「ねえ関川サン、似合って……ないかな?」
    「ようやく気付いたようだね。やっぱり彼女を引き立てるには、シンプルが一番」
    「だって今日は、初めて……」
    「初めて、は一年前の5月9日であって、それは今日ではない」
     ダメだ。どうも興ざめしてしまった。僕はおもむろに彼女を引き寄せ、腕の中に丸め込んだ。今日こそ水族館で彼女にウミヘビを見せてあげたかったのに。
    「関川サン、私、もう一度……」
    「もういいよ、君は用済みだ」
     丸まっていた彼女をほどき、来た時同様、自分の首に掛けた。ジーンズに白いTシャツ。肩の位置は地上1.5m。それがちょうど一年前、僕が見出した彼女の為の最高の止り木だった。まあいいさ、また1000検体くらいウォッチングすれば見つかるだろ。何度でもやり直せばいいんだ。

    タイトル『僕の彼女はボールパイソン』
    🍏🍏🍏

    この話の全貌は『無二の朝飯前』にて
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219567055907

  • 🌰🌰🌰🌰🌰

    「今日は関川くんとの特別な日だからね、気合い入れちゃった!」
    「そうだね。特別な日だもんね」

     返答まで約一秒。
     うわあ、言っちゃった言っちゃったよ! わかってないくせに知ったかぶりッ!

    「それでいつもとちょっと雰囲気違うんだ? いつも可愛いけど、今日もすっごく可愛いよ」

     この男なに言っちゃってんの!? 可愛いのは事実だけど普段んなこと言わねーじゃん! キャラ崩壊はなはだしいわ! ほら彼女だって不審がって……

    「わかってくれたんだ、嬉しい……」

    🌰🌰🌰🌰🌰

    続きはこちら〜♬
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219874986703


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    🌸

    なぜなら帝国軍の奇襲部隊が目前に迫っていたからだ。

    https://kakuyomu.jp/works/16816452219170939051

  • 🍬🍬🍬


    「……ごめん。とりちゃんが可愛すぎて、言葉が失くなった」
    それだけ言うと、ぼくはとりちゃんをじっと見つめた。
    ここから先はだんまり比べ。買っても負けても「生もちチョコアイス」は買わなくっちゃね?


    「言葉のない世界 ~帰途」田村隆一/今来た風を装う関川くん
    「だんまりくらべ」日本昔話

    🍬🍬🍬

    性懲りもなくまたちょい長版との二本立てです♪
    よろしくお願いします♡
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219850544840



  • 編集済

    🐻🐻🐻

     僕はカッと目を見開いた。

    「ああ……そうか」
     左手の腕時計をもう一度見る。十時四十五分を指したまま動かない針。中央改札の時計塔はすでに十一時を過ぎているというのに。行き交うたくさんの人たちは、まるで無関心に通り過ぎていく。
     でも、可愛いらしい彼女だけ、視線を奪っている。いや――可愛いからではなく、時計塔に向かって話しかけているから。

    「僕は今年も出てしまったんだね」

     あの日、僕は急いで駅に向かっていた。身体に痛みを感じながら、それでも最後に彼女に会いたかったから。早めにランチして、近場の水族館に行ってって、完璧なデートプランがあったから。
     ジーンズ姿のラフな格好の君が僕を時計塔の下で見つけた時には、もう救急隊員に運ばれるところで。

     僕は意識を手放したんだ。

     それから毎年、僕はこの時計塔の下に現れる。彼女との待ち合わせのために。
    「関川サンが助けた子、元気に学校に通ってるみたいですよ」
    「うん」
    「そんな彼氏がいたことが、私の誇りです」

     彼女は瞳を潤ませて伏し目がちに言う。それがとても――

    「とてもきれいだね」
    「……ありがとうございます」
     春色のワンピースで、メイクをしている君はいつもより大人びていて。何回、僕のいない春を過ごしたのだろうか。彼女はさらに俯く。光の筋を頬が伝う。
    「……今日は関川サンとの特別な日ですから」

     おそらく、彼女にだけ見えている僕は、彼女をぎゅっと抱きしめる。温もりは届かないけれど彼女を思う気持ちだけは届いて欲しくて。

    「もう行かないといけない……さようなら。ありがとう」

     今日は彼女との久しぶりのデートの日だった。

    🐻🐻🐻

  • 大体ヤバ女の話を書いています。

    🐟


    https://kakuyomu.jp/works/1177354054934722897/episodes/16816452220164338305


  • 編集済

    このお題は難敵で、これから投稿するお話も難産でした。
    ダラダラと長くなってしまいスミマセン。
    しかも穴だらけなので軽く読み飛ばしてくれると助かります。

    🍜🍜🍜

    「まずは腹ごしらえをしようか。この近くでとても良さげなパスタ屋を見つけたんだ」
    「わあ! とても楽しみです」
    喜ぶ彼女。
    なんとか誤魔化した。
    さあ、今のうちに思い出せ。
    しかし、本っ当にわからん。

    手をつないで桜並木を歩くと花びらが降り注いでくる。
    「素敵! 桜吹雪も特別な日を祝福してくれるみたい!」
    「あ、ああ。そうだね」
    相槌を打つが、まだわからない。
    少し探りをいれるとしよう。

    「早いものだね。僕たちが付き合いだしてもう3ヶ月になるね」
    「ええ、クリスマス・イブに私が関川くんに告白して。って恥ずかしい。うふふ」
    今日は4月2日。
    高校の時はそんなに話したこともない存在。
    3年になって一緒に図書委員をやった程度。
    役目上、連絡先は交換していたけど。
    去年の今ごろ、東京を案内してほしいなんて連絡が来てGWにおしゃれスポットを二人であちこち巡った。
    その後もなんやかんや連絡を取り続けていたらとうとうイブに告白されて交際が始まった次第。
    ちなみに彼女とは未だ結ばれず、キスさえもまだしていない。
    今日こそ関係を進めるチャンスではある。

    しかし高校時代はむしろ他の女子とよく遊んでいた。
    付き合うまでには至らなかったがクラスのマドンナのK井K子とは特に三年通して親しかった。
    よくみんなから冷やかされたが、満更でもなかったのは確かだ。
    卒業し上京してから正式に会って告白するつもりだったが電話をかけても無視されメッセージには既読すらつかなかった。
    美人だったし、新しく彼氏でもできたのだろう。
    他のみんなはどうしているのかな。
    疎遠になってしまったが今の生活が充実しているのでそんな気にはならない。

    「あ、見えてきた。あのお店だよ」
    「わあ、洒落ているのね」
    いかにもな外見のお店はカップルで賑わっている。
    窓際の席に案内されてオーダーを済ませた。

    高校での思い出やクラスメイトのその後の様子。
    大学での近況。
    パスタが出来るまで会話を楽しんだ。

    「今度、私が同窓会の幹事をやることになりました。エヘヘ。関川サンは?」
    「もちろん出席。みんなの返事はどうなの?」
    「一人を除いて全員出席」
    「その一人って?」
    「K井K子さん」
    彼女は不機嫌そうに吐き捨てた。
    詳細を聞こうとしたら、ちょうどウエイトレスがパスタを持ってきた。

    僕はカルボナーラ。
    彼女はトマトスープパスタ。
    なんと美味しそう。

    「で、さっきの続きだけど。なんでK井K子は来れないの?」
    「知らないんですか? 去年の春から消息不明になっているのを」
    「えっ!?」
    思わずフォークが止まる。
    対する彼女は無表情でパスタを口に運んでいる。

    「警察も未だに手がかりは掴んでないっていうからマヌケですよね。ご両親は懸賞金を出したり探偵を雇ったりしているようですけど。無駄なのに」
    「……。」
    彼女の口ぶり、何かがおかしい。
    こんなキャラだったっけ!?

    「私はてっきり関川さんとK井さんが付き合うものだと思っていました」
    「いや実は今だから言うけど、上京して落ち着いたら直接会って告白しようと思っていたけど僕からの着信やメッセージが無視されて……。そうか、あの時から」
    「ふう、やっぱり。間に合ってよかったです。やっぱりタイミングって大事ですよね」
    彼女はニコニコ笑っている。
    喋っている内容もイマイチずれているし、そもそも笑うような場面ではない。

    「それより関川サンのカルボナーラ、美味しそうですね。もしよかったら私のと交換してもらえますか? 私のトマトスープパスタはあまりにも赤が強すぎて……血のようで……アノ情景を思い出しちゃいました」
    最後の一言は聞かないふりをした。
    K井K子の事が気になるが今はデートに集中せねば。

    おかしな雰囲気になったがなんとか盛り返したい。
    やはり特別な日に気付いてないことがばれたのだろうか。
    ここは潔く謝ろう。
    店を出て水族館に行くまでが勝負。

    「ねえ、せっかく君がオシャレしてきたのに僕はジーンズとロスインゴベルナブレスデハポンのパーカーなんかでゴメン。僕との特別な日っていうのを忘れていたんだ。正直何の日だっけ?」
    「クスッ」
    彼女は突然吹き出した。
    さっきまでの変な雰囲気を吹き飛ばすような可愛さに僕は安心した。

    「ああ、あれはより正確に言うと『私と関川サンとの仲が確定した日』なんですよ。2人だけの世界への第一歩。邪魔する者は誰もいない。でもこれは私しか知らないことだし、関川サンは知らなくって当たり前。なんだか私だけ浮かれてバカみたいですね」
    彼女は相変わらず天使のように微笑んでいる。
    何がなんだかわからないけど、山を一つ越えたようで安心した。

    いい雰囲気で水族館に到着。
    真っ先にイルカを見たいという彼女。
    イルカショーをたっぷり堪能。
    水族館の展示コーナーではサメの歯やイルカとクジラの脳みそや心臓など珍しい物に心を奪われた。

    「サメの歯は便利だなあ。虫歯になってもベルトコンベアのように次の歯に入れ替わるなら歯医者に行かなくっていいのはうらやましい」
    知識としては知っていたが実際に見ると迫力が違う。
    「クジラの心臓って大きい! 胸から取り出すのはさぞかし大変だったでしょうね。経験上、人間のですら結構な手間がかかったのだから」
    子どもに戻ったかのように彼女は無邪気だ。
    「ん? 経験上?」
    「あっ!? ほっ、ほら、私は法学部でしょ。法医学の実習教室で、ね」
    何気ない質問に彼女は不自然なほど動揺した。
    なるほど、と思いそれからは話題を変えクラゲの動きを堪能した。

    水族館の中はあらかた回ったので、駅前にてディナーにふさわしいお店を探すことに。
    駅前に出るためさっきの桜並木をもう一度歩くと、おや!?
    さっきは気づかなかったけど捜索願いのポスターが桜の木に巻かれている。
    『探しています K井K子 18歳 令和2年4月2日 午後8時 駅の時計塔でクラスメイトと待ち合わせをすると言って家を出てから消息を断つ。心当たりのある方は……』
    見覚えのあるK井K子の写真がポスターに。

    もっとよく確認しようと近づいたら彼女が強引に僕の顔を両手でつかんで首が強制的に半回転。
    「今は私だけを見て、お願い」
    と言うやいなや突然のキッス。

    道行く人たちも僕らを指差して笑っている。
    しかし構うもんか。
    舞い散る桜吹雪も僕たちを祝福してくれている。
    これから4月2日は“はじめてのチュウ”記念日だ!

    🍜🍜🍜

    お知らせ。
    現在、新作を完成させるためハーフ&ハーフへの
    投稿はしばらくお休みします。
    拙作に目を通してくださりありがとうございました。


  • 編集済

    🐰🐰いすみ 静江🐰🐰

    『Iカップひなぎくの育児にぱにっと』
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219720071974

    「I05 特別な日のかわし方とは」
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219720071974/episodes/16816452220065098757

     ――プロフェッサー黒樹とひなぎくさんが出会ったパリでのこと。

     憧れのあのピチピチギャルとは、三か月振りのデートになる日だ。
     昨日は、わくわくして寝不足になってしまった。
     待ち合わせは、パリのリヨン駅にある時計塔にした。
     だって、ここは大きな駅だからいつも人出が多いけれども、ここなら間違うことはないから。
     彼女との約束の時間は午前十一時。
     懐中時計とその時計塔の時刻はぴったりだ。
     今はその十五分前なので俺も一安心する。 
     これから一緒に早めのランチにして、それから、ふにゃふにゃ。
     アクアリウム・ド・パリ・シネアクアに行くデートプランがある。
     何と言ってもエッフェル塔の裾野にあるから、盛り上がること間違いなしだろう。

    「リヨンまで待ち合わせて、どうなさったのかしら。プロフェッサー黒樹」

     ほどなくして彼女がやってきた。
     いつもはジーンズが基本のラフな格好なのだが、今日はお熱があるようだ。
     明度の高い桜色に花びらの刺繍が綺麗な春ワンピとは!
     どきんこ、どきんこ。
     ワンピなどと、ギャル語を使ってしまうぞ。
     普段はほんのりリップクリームしかまとわないのに、何てこったい、マドモアゼル。
     薄化粧も似合っているのじゃもん。

    「か、かわいい……」

     俺は、ぶほっと吹いてしまった。
     あまり見つめ過ぎてしまったのだろう。
     ひなぎくちゃんは、頬にチークをあしらったようだ。

    「あ、やはり気付かれました?」

     え!
     何に?
     ワンピと薄化粧のことかな。
     その他は、何も気が付かなかったけれども。

    「今日はプロフェッサー黒樹との特別な日ですわ。気合いも入りましたの」

     今日って何か特別な日だっけ?
     何だろう。
     さっぱり分からない。
     男、黒樹、はっきりしないとならないな。
     正直に分からないと言うべだろうか。
     それとも会話しつつ探るべきか。
     俺にゆっくりと考える時間はなかった――。

     ◇◇◇

    「エッフェル塔の方に用がある。一緒に来てくれ」

     さっと、駐車場へひなぎくちゃんをさらって、助手席のドアを閉めた。
     何故かトヨタのカローラ1100だ。
     中古じゃないのが自慢じゃもん。
     シートベルトをひなぎくちゃんがする。
     これで、セーヌに沈まなければ、大丈夫だろう。

    「はい、プロフェッサー黒樹。いつも大学院でお世話になっております。ご用事への付き添いは、私のキュレーターとしての勉学にもなりますわ」

     真面目、真摯な彼女の素の顔だ。
     そこが、可愛いとも言える。
     Eカップはあるであろう、ふっさふさにも興味がない訳ではないが。
     先程は、身にまとうもので判断してしまい、俺も軽率だったか。
     いや、でもEカップが気になるのは嘘ではないし。

    「大丈夫でしょうか。ハンドルと会話していらっしゃいますわよ」

    「確かにぶつぶつ言ったかも知れないな。だがしかし、俺への気配りは要らないぜよ」

     俺の白い歯キラーン。
     ひなぎくちゃんは、虫歯が痛むポーズで考え込んでしまった。

    「ひなぎくちゃん、やわらかーく行こう」

     か、かわいいので、見たらいかんな。

    「あのですね――。今日は、何の日でしょう? 勿論、覚えておいでですわね」

    「ああ、あたたかい春の日だな」

     これでいいのか。
     ああ、ひなぎくちゃんは、にっこりとしている。
     大丈夫だ、男、黒樹よ。

    「春と言えば、湿布ではないわよね」

    「おお、そうそう。桜じゃ。日本にいたら、東京のソメイヨシノを思い出すよな」

     こ、これでいいのか。
     ソメイヨシノは限定的過ぎたか。
     花筏とか、もっと情緒を膨らませるべきだな。
     うん。

    「私、サクランボが好きなんです」

    「おお、そうだ。国民性からして、見て愛でるか食べて親しむかあるよな。俺は佐藤錦が大好物じゃもん。帰国したら送っておくれ」

     こ、こ、これでいいのか。

    「プロフェッサー黒樹、私が帰国するとでも? この間のお話、聞いていただけましたか?」

     この間?
     危険な香りのする方向へ向いたか。

    「あれだったな、確か――」

    「先程、お話ししましたわ。アトリエのことですわ」

    「ああ、アトリエな」

     こ、こ、こ、これでいい訳ないよな。
     俺が何かの記念日を忘れていることが、そろそろバレそうだ。

    「私達が日本へ行って作り上げるプランですよ」

     車を路肩に寄せた。

    「ほら、あそこに、エッフェル塔があるだろう。ライトアップの頃にも見るといいよ。芸術的センスが上がるかも、よ」

     ひなぎくちゃんの肩に手を回そうとする。
     すると、シートベルトが邪魔をする上、ひなぎく堤防が決壊した。
     俺の手を叩かれてしまった。
     ゴリラ並みに怖いんですけれども。

    「何てついてないんだ――」

     心で叫ぶ筈の言葉をその場で声にしてしまった。

    「もう! お餅は何枚焼きますか! プロフェッサー黒樹」

    「え? 八つ? 焼きお餅だから。ヤキモチ。ぶぶぶ……」

     アラフォーの口髭が揺れる。

    「冗句が真綿で首を締めることってあるらしいですよ。ひゅーどろどろ」

    「あそこの水族館へ行こうか」

     ひなぎくの紅潮していた頬が元の明るいオークルに戻った。

    「わあ、アクアリウム・ド・パリ・シネアクアでしょうか! 一度しか行かなかったので、もっと詳しく観賞したいと思っておりましたのよ」

    「おお、キュレーターに萌えとるな」

     よっし、これでいいようだ。
     水族館の後、無茶苦茶、カフェの梯子を楽しんだ。
     ひなぎくの英名をデイジーと言う。
     彼女の為に日本で俺もアトリエを開く手伝いをしよう。
     そんな風に俺達は、結び付いて行った。
     アトリエデイジー誕生秘話だな。
     このときの話し合いで、アトリエデイジーの骨格が決まったのだから、世の中分からない。

  • 💕💕💕💕💕

    すでに彼女と手をつないで歩き出したため、こっそりスマホが取り出せないのが歯がゆい。少なくとも一年前のことなら予定表にメモが残っているはずだ。

    なんだ? 昨年の今日、いったい何があった?

    というか今日の予定はどこまで彼女に話したんだっけ? 早めにランチして、近場の水族館に行くつもりだったけど、もっと大事なことが無かったか?

    まさか「特別な日」とか言いつつ「毎日がスペシャル」なんてオチじゃないよね? いや、真面目な彼女に限ってそんなことを言うはずがない……。


    ※ ※ ※


    「トリ子博士、被験者の夢の中の思考の文字化に成功しました」
    「ありがとうゆうけん。どれどれ? なるほど、どうやらあの一年前の記憶はしっかり消せてるようね」

    白衣を羽織ったトリ子はプリンターから吐き出される関川の心の内を読みつつ、ニヤリと笑った。

    研究室のベッドの上には意識を失った関川が横たわっている。脳波測定用のチューブが頭に複数取り付けられている他は全裸に白靴下という、普段の彼のスタイルだ。酷く汗ばむ様子が夢の中での心境を表しているように見えた。

    「しかしなぜこの男にそんなにこだわるのですか? まさかこれがあなたの『厳しい条件をクリアした稀有な存在』だとでも?」
    「やめてよ、そんなこと言われたら結果を読む前に笑っちゃうじゃない。私がワガママなだけよ」

    トリ子はニヤけながら印字されたばかりのレポートを読み上げる。

    ――どうしよう、困ったな。うーん、困った。うーんこまった

    そこまで読み、彼女は眉をひそめた。

    「濁点の有無や漢字の統一性が安定しないわね。解析プログラムに問題があるのかしら?」
    「聞いてるだけではわかりませんがね」

    ゆうけんはあくまでクールに答える。こちらも身に一糸纏わぬ普段のスタイル(よーするに全裸)だ。

    だがトリ子はメッセージに表現された僅かな違和感を見逃さなかった。

    「ちょっと代わって」

    そう言うやいなや、彼女はゆうけんが管理していたモニターの前に座り、情報を丹念に読み解いていく。

    「あー、ここね。変な妄想が挿入されてる」

    彼女が見つけたのは関川が女子生徒のロッカー室に忍び込み、好きな子のブラウスの匂いを堪能するという『想定外』の妄想シーンだった。その『好きな子』も『トリ子』に置き換えられてはいたが、徹底的に管理したい派の彼女としては気に入らなかったようだ。

    「舞台は高校時代、でしょうか?」
    「よくあることよ。夢では現実の時間軸は意味をなさない。整合性が無視され、現在進行形の合間に過去に戻ったりするの。あなただって今でも少年時代の夢を見ることがあるでしょう?」

    「それは、まあ」
    「何かのキーワードからこの妄想に遷移したのだと思う……けど、いずれにせよ悪夢ね。バッドエンドでブラックアウトしちゃったようだけど、どうつなげるのが良いかしら」

    関川の妄想を削除しようとした手を止め、トリ子はしばし考え込む。彼が目覚める心配は無いようだ。

    「よくよく考えたら、元のテーマが重すぎたのかも知れない。記憶が消されてるのに『特別な日』って設定をかませて気の利いたことを言え、というのはさすがに無理があるわ。この妄想を消さず、この中で私の好イメージを構築して植え付ける方が良いかも」

    そう考えたトリ子は、いくつかのパターンを試すことにした。

    ベンチマーク役のゆうけんは、関川のベッドで同じように仰向けになると、「塔」の高さと角度を比較検証する準備を整え、OKサインを出す。

    「まずはこのブラックアウト直前の状況から。倒れた女子ロッカーの中に閉じ込められた関川さんが24時間後に私と警察官に救出される場面。ゆうけんはこのシチュエーション、どう感じる?」
    「ご覧の通り、勃ってます」

    「そうね。でも関川さんはしょぼくれて滝汗流してる。だからここで私が『優しく抱きしめる』と」
    「やけに寛容ですね」

    「実際はそんな甘くは無いけどね。で、どうかしら?」
    「僕は変化無いですね」

    「あなたは常に勃ってるもんね」
    「彼はまだです。反応無しです」

    「きっと汚物にまみれているのが恥ずかしいのよ」
    「彼にとっては興奮ポイントじゃないのですかね?」

    理解できない、とでも言わんばかりにゆうけんが首をかしげる。

    「世の男がみんな、あなたと同じだと思わない方がいいわ。周りの目を気にして自我を抑える人だっているの」
    「結果的には大して差がない気がしますが?」

    「めんどくさいだけよね。で、とりあえず次の私のセリフだけど『無事で良かった、ごめんね』ってところかしら?」
    「無難ですね。僕ならもっとなじってほしいですが」

    そのゆうけんの言葉に、すでにエンターキーを押したトリ子が答えを返す。

    「そんなことしたらまたブラックアウトじゃない。この際汚れ役でもなんでもやらなくちゃ」
    「確かに今はかろうじて意識がつながっています。でもまだ思考停止してますよ、彼」

    ゆうけんの言う通り、プリンターは何も吐き出さない。

    「じゃあ次も私のターンってことね。ここで私から『優しくキス』」
    「おや? 少しむくむくしてきました」

    ゆうけんは、自分と関川の塔を目視しながらメモを取り、的確に報告を返す。当初はこの検証の重要性に疑問を抱いていた彼も、今では責任を担う一員として立派に役目を果たしている。

    「ディープに舌を入れてみましょうか」
    「やった! 完全に直立しました。ピンコ立ちです。もちろんまだ僕の方が高いですし、彼の思考は停止したままですが」

    「他に障害になってるものがあるのかしら? お巡りさんが邪魔かな?」
    「僕は他人に見られている方が興奮しますが?」

    「『コホン、大丈夫なようだね。私は失礼するよ』って言って退場させる、と」
    「お、ようやく思考が戻って来たようです」

    トリ子の読み筋通り、プリンターが再び起動し始めた。

    「これでしばらくは意識が途切れる心配はないわ。さあ、私のことしか目に入らなくなっているかしら?」

    ――ど、どういうつもりだ? この女、何を考えている??

    「あらあら、まだ猜疑心がぬぐえていないようね。ここでの最適解は――」
    「『フフフ、貴方を私の虜にしてあげる』と言いつつアゴをくいっ、ですかね?」

    「いいわね。それでいきましょう」

    ――いやだ……やめて……怖い……

    「やや傾きました。右手三時の方向。高さは僕の三分の二くらいです」
    「あらら、まだ心のケアが必要なようね。一コマ戻ってセリフを挿入。『大丈夫……ほらね、怖くない。おびえていただけなんだね』」

    「そこは島本ヴォイスなんですね」
    「いいのよ。私も女子高生設定なんだから。『ナウシカが嫌いな男はいない理論』よ」

    ―― ………………

    「完全に倒れました。先程までの力強さが感じられません」
    「けど精神的には落ち着きを取り戻したみたいよ?」

    「なかなか難しいですね。これからどうします? 私の経験ではこの状況から短期間に立ち直らせるのは容易ではないと思いますが?」
    「じゃあどうすれば?」

    ゆうけんは悩んだ。スネたチンアナゴの飼育員になった気分だが、それでも彼の気持ちを汲み取ろうと全集中する。

    「果たして彼が再起できるのかどうかわかりません。が、トリ子博士が安心できる存在だと伝えるために、まずは博士が脱ぐ、というのはどうでしょうか?」
    「上手くいくかしら?」

    「やってみる価値はあると思います。今は僕たちができる手を打つしかない段階かと!」
    「わかった。じゃあいくわよ〜」

    ――!!!!!!!!

    「すごいです! すごい勢いで塔が再構築されていきます!」
    「さすがJKの肌はパンチ力あるわ!」

    いつもはクールなゆうけんの盛り上がりに、現場の雰囲気は最高潮だ!

    「次はどうします?」
    「せっかくだから彼も脱がしちゃいましょう」

    ――えっ? マジ? なにすんの? どうなんの?

    「塔は空を向いたままですが、戸惑いが隠せないようです」
    「ようやく文字化が機能し始めたわね。ここは私がリードしなきゃ。『優しく抱きしめる』と」

    ――オオオオオオオオオッ!!!

    「やった! あんなに小さかった子が僕の倍くらいになりました!」
    「胸当ててるから当然よ! だけど彼自身はまだアクション起こさないわね。典型的な据え膳食わぬタイプみたい。ここでアイテムを使いますか。まずはメス」

    ――違う違う違う違うそうじゃない!!

    「明らかな拒否反応です。首振ってます」
    「……じゃあこれかしら? ムチ?」

    ――YES! YES! YES! YES! YES! YES!

    「おっ、僕の三倍まで伸びました」
    「おまけでロウソクとか付けてみようか?」

    ――YES! YES! YES! YES! YES! YES!

    「凄い! 10倍です! 10シーエムです!!」
    「……じゃあここでもう一度メスを見せてみましょう」

    ――NO! NO! NO! NO! NO! NO! NO!

    「ダメですね。1倍まで下がりました」
    「やっぱダメかー。一つ戻って私がボンテージ着てみる?」

    ――GREAT‼︎ GREAT‼︎ GREAT‼︎

    「さすが博士! あっという間に復活しましたよ」
    「裸よりこっちが好きなんだ。ちょっと腹立ったからパンプスで背中を踏んでみましょうか」

    ――ノォーッ!!!

    「でも嬉しいみたいです。塔が脈動しています」
    「変態ね。せっかくだからパンプスの臭いを嗅いでもらいましょう」

    ――ぐはっ!!! うへっ!!!

    「よろこんでる! 絶対よろこんでる! 僕にはわかります。あと一押しです」
    「じゃあ背中にロウソクを垂らしてみましょうか」

    ――アッーーーーっ!

    「大変です! 彼の塔が噴火しました!!」
    「よしキターッ!! ……って、あれ?」


    ――ピー


    「ブラックアウトしました……」
    「え? なんで???」

    「どうやら刺激が強すぎたようです」
    「あちゃーっ! この人まだ童貞だったのかー!!」


    作品タイトル:『無双恋愛(夢想恋愛)――我が生涯に一片の悔い無し』

    主人公:関川 二尋
    ヒロイン:ゆうけん