23:メスガキはレアアイテム狩りをする
「お命頂戴する!」
影から迫る刃。【アンシーン・ダガー】と呼ばれる見えない攻撃。
でも物理攻撃なら反射できる。おねーさんのミラースカーフは常時物理反射状態。それを【まねっこ】すれば物理系アビリティはほぼ無効化できる。
「ならば火遁の術!」
「そして毒霧!」
続いて放たれた炎と毒の攻撃アビリティ。しかしそれも炎や毒や即死を無効化する着物『沙羅双樹曼殊沙華』で意味をなさない。忍者系の攻撃はこれを着て物理攻撃対策するだけで全部カットできるわ。
「これも効かぬだと!?」
「む・だ・ぼ・ね」
「う、美しい微笑……ぐふぅ!」
ごちゃごちゃ言う忍者を【笑裏蔵刀】のクリティカル攻撃で沈める。忍者系は回避率が高いけど、クリティカルは絶対命中。加えてHPは高くない。悪魔のカードの武器補正もあって、倒すのは難しくないわ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
名前:ニンジャ
種族:人間
Lv:54
HP:64
解説:極東の暗殺者。様々な術を使い、敵を追い詰める闇の集団。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ここはアズマアイランド。ヤーシャより東に行った島国。平安とか戦国とか江戸とかそんな時代がごちゃまぜのジャパンなエリア。天騎士おにーさんが天雷剣を鍛えてもらった場所ね。アタシはおにーさんとおねーさんを伴ってここにきていた。
目的は対魔王戦に必要なレアアイテム狩り。魔王<ケイオス>戦に必要なアイテムは、全部アズマアイランドで手に入れることができる。ニンジャを黙々と倒し、ドロップ率の低さに舌打ちする。
「まだ出なーい。もう、早く次行きたいのにー」
求めるレアアイテムの一つ『フーマの吹矢』が出る確率は64分の1。確率自体はレアアイテムの中では出やすい方なんだけど、何故か出ない。逆に128分の1である『フーマブレイド』が二本も出たわ。アタシ装備できないからいらないってーの!
「なかなか出ませんねぇ」
『隠れ蓑』を使って姿を隠していたおねーさんが、隠密を解いてしゃべってくる。『隠れ蓑』は移動を含めて行動しなければモンスターの対象にならなくなる消費アイテム。戦闘力のないおねーさんはずっとこれを使ってもらっているわ。
「【笑う門には福来る】があれば確率2倍になるんだけど……スキルポイント足りないのよね、もう!」
【笑う】のレベル8アビリティである【笑う門には福来る】があればレアアイテム狩りはもう少し楽になる。レベルアップと赤悪魔を倒したトロフィーでスキルポイントはあるんだけど……魔王戦の為にスキルポイントは温存しないといけないわ。
「とりあえずおねーさんよろしくね」
「はい。レプラコーンさんお願いします」
これまで倒したニンジャのドロップアイテムであるシノビスカーフをおねーさんに渡す。それを材料におねーさんには魔王専用の服を作ってもらう。回避率アップのシノビスーツ。バステ付与率アップもつくわ。【レプラコーンの弟子】を使って、狩りをしながら服を作ってもらう。
「やはりクノイチ衣裳ですね。動きやすさ重視の名目で太ももと二の腕まで露出。加えて胸元は限界まで。色はトーカさんの名前に合わせて桃色で。ふへふへへへへへ……滾ってきましたよぉ!」
……いろいろ心配なダメロリコン発言だけど、仕事はきちんとしてくれるって信じてる。多分。
ちなみに天騎士おにーさんはここにはいない。魔王VS聖女ちゃんインかみちゃま状態になって空が変な事になってから、アズマアイランドに『鬼』の集団が現われて街を襲っている状態になっていた。
『おのれ鬼ども許すまじ! 無辜の民を守るためにこそ我が剣はある! 遊び人トーカ! 俺はアズマアイランドの民を守るためにこの天雷剣を振るう! キミの手助けはできないが、許してくれ!』
そんな状態なんでおにーさんはそういきり立ってアズマアイランド各地で大暴れしているわ。現状おにーさんの手助けは必要ないし、止めなかった。それはまあ、どうでもいいんだけど。
「64分の1の『吹矢』ぐらいサクッと出しなさいよね。この後には256分の1の『遁甲符』と『辰砂』が待ってるんだから」
『フーマブレイド』の運はできればそっちで使いたかったけど、出ちゃったものはしょうがないわ。どんどん狩っていきましょう。
「くっくっく。我らが同胞を倒して調子に乗っているようだな」
「しかし奴らはニンジャの中でも最弱。真なるシノビを教えてやろう!」
声がしたほうを見ると、高い所からこっちを見下ろすニンジャ達。なんでそんなところにいるの? わざわざ登ったの? そんなことしなくても普通に襲い掛かってきたらいいじゃない? なんてツッコミはもうやり飽きたわ。こいつらいつもこうだもん。
「あ、湧いた。おねーさん隠れてて」
「闇をかける幼き暗殺者。しかしてその正体は!? あるいは闇に生きる心に差し込まれる光が幼女の心を溶かしてデレてくる。……アリですね!」
「かくれろ。ドクズ♡」
「はうわあああああああ!? 笑顔の罵りぃぃぃぃぃ! すみませんすみませんすみませんでもごほうびでしゅううううううう!」
数体湧いたニンジャを前に、そんなやり取りをして隠れるおねーさん。一応おねーさんの方がニンジャよりもレベルが高くて、そう簡単にやられることはないんだろうけど念のためだ。
「一撃必殺の奥義を今ここに――ぐはぁああああ!」
「我らの誇りをかけてその命もらった――にぎゃあああああ!」
「ち、しけてるわねー。早く『吹矢』落としなさいよ」
サクッと倒してドロップをあさるアタシ。回避率が高くてHPが低い相手なんか、確定クリティカルが出せるアタシにとってはざこ同然なのよ。
「子供と侮っていたが、その実悪鬼であったか。笑顔でこちらを惑わすとは……」
「しかしその程度ではこの先にいる頭領の『フーマ』様には勝てはせぬ。シノビの神髄を味わいながら死ぬが――」
「あ。別にアタシ『フーマ』に挑むつもりないから」
倒れたニンジャがなんか勘違いしてるんで、アタシはそう言ってやる。
「…………は? 貴殿は荒れ狂うアズマアイランドを正すべく戦う武士ではないのか?」
「知んないわよそんなの。アタシは『フーマの吹矢』が欲しいだけなんだから。それ手に入れたら次は『オンミョウシティ・キョウ』に行って『遁甲符』手に入れて、その後『フジヤマボルケイノ』で『
「………………えー。我らの頭領を無駄扱い……」
「しかも『吹矢』なんてあまり使わない武器……。あの、シノビの技術で鍛え上げた刀ならあげれますがどうです? 死に近づくことで相手をの首を刈りやすくなる呪いが欠けられてますが」
「要らないわよ。っていうかまた『フーマブレイド』!? 三本目とかないわー!」
自分の即死耐性をがっつり下げるけど、稀に通常攻撃で即死させる『フーマブレイド』。呪いの武器なんで鬼ドクロとかが持つとそれなりに強いし、斧戦士ちゃんに二刀流させれば攻撃の度に即死判定が入って結構面白いことになるわ。
まあ鬼ドクロは『承った。家宝にいたす(訳:もらって嬉しいけど、ワシ即死アビリティあるからなあ。コレクションだね)』とか言って使わなそうだし、斧戦士ちゃんは斧以外使わなそうだし。うん、ゴミゴミ。
「シノビを倒す童がいると聞いてやってきたが、女だったとは」
「刀を持たぬ町娘などに負けるとはシノビの恥さらしよ」
「あーもう、いいからとっとと来なさい。いくらでも相手してあげるから」
相変わらず高い所で腕を組んでから現れるニンジャ達。あー、喋ってる時間も惜しいんだから早くかかってきなさいってーの。
――『フーマの吹矢』を手に入れたのは、それから4時間後。物欲センサーって怖いって改めて感じたわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます