【倉木さとし 序文】「観なくていい映画っていうのは一本たりともない」

 郷倉くんが丁寧に語ってくれたので、倉木が最初にいうことは僕個人的なことだけで完結しそうです。


 先に語ってくれてもいますが、対談のテーマに「漫画原作の実写映画」を選んだのは、手に取りやすいという考えからでした。


 小学生の頃の僕は、洋画の二時間を休憩がなければ視聴できないような男でした。それがいまでは、月に四〇本程度は映画を視聴しています。

 幼い頃からアニメや特撮に触れていた下地があったので「漫画原作の実写映画」というのが、映画という巨大な沼への入口として、ちょうど良かったのでしょうね。

 映画の沼で溺死寸前の倉木の現状としまして、洋画が好きで邦画が嫌いという特徴を持っています。


 経緯を簡単に説明すると、漫画原作の実写映画やそれに近いものから映画を視聴していく。

 やがて、同じ監督や出演者の作品を視聴する。この頃から、洋画の名作といわれる映画を漁りはじめる。

 いつしか、洋画の名作視聴がメインとなり、邦画との視聴割合が逆転する。

 洋画の無名なタイトルにまで手を伸ばすようになった頃には、邦画作品を視聴前に期待することが、ほとんどなくなっていた。色んな作品に触れたことで、邦画っていうほど面白いかって疑問を持った訳ですね。


 現在の視聴割合は、月に四〇本観た場合、三〇本が洋画で一〇本が邦画って感じです。そんな男が邦画の一ジャンルに絞って対談して、実のあることが語れるのか不安ではあります。


 けどまぁ、僕らの対談を読んだ誰かが、我々の話題にあがった映画を観て、同じように、面白い、面白くないという感想を持ったり、全く別の感想を持ったりできるのは素晴らしいことじゃないかと想像します。


 なんにせよ、対談内で語る映画が、全部の映画の中で一番好きっていう人がいる作品でも、僕は遠慮なくボロクソに言っていくと思います。その逆も然りです。世間の評価的にはボロクソでも、面白いということもあります。


 きちんと映画を視聴したんだから、個人の感想は言わせてもらいます。が、その正直さで不愉快になる人もいるんだろうなぁ。


 序文の締めとしまして「観なくていい映画っていうのは一本たりともない」と、語っておきたいと思います。


 期待通りの面白い映画を観たときはいうまでもなく、期待していない作品を観て面白かったときは素直に誰かと感想を共有したいですし、仮に面白くないと感じたときだって、得るものはあります。

 それに、メイキング映像とかを見るのも好きだから、制作の苦労を考えると、僕の中で色々と渦巻くものがある。

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