第3話 にゃにゃタロで全身コーデ

 私は思った。

 もうあんな間違いは侵さないと。





 私ことクリフトス・アーガラーはハイエルフだ。本来長い耳は魔法で人間と同じような耳になっている。日本には異世界から門を通ってやってきて、現在都内在住だ。

 大学二年生になった私は、少々浮かれていた。

 にゃにゃタロの景品プライズも徐々に集められてきて、クレーンゲームの腕も上がったと思っていたからだ。


「あ、」


 部屋で、ベッドの上ににゃにゃタロの景品の一部を並べて、ニヤリ。

 にゃにゃタロのヘアバンド、パーカー、Tシャツ、靴下、スニーカー、手提げバッグ。


「にゃにゃタロで全身コーデができるではないかっ」


 と思ったのもつかの間、スカートがない。

 不幸のどん底に落とされる。


「な、なんと。こんな落とし穴が。スカートじゃなくてもボトムでも良いのだが」


 スマホでぽちぽち。

 にゃにゃタロのグッズは普通に販売されている。にゃにゃタロのサイズの合うスカートは存在しているのだが。


「ここまできたら、クレーンゲームでひとそろえしたい」


 今、検索した限りだと、私がアプリで入れているオンラインクレーンゲーム、略してオンクレのサイトにはそれらの景品は存在しない。そもそも、と言ってもクレーンゲームを始めて半年だが、実店舗でも景品でスカートやボトムがあっただろうか。

 それらの品は記憶にないぞ。

 私の場合は魔法でサイズは何とかなる。だが、普通の人間は自分に合ったサイズの洋服でないといけないのだ。スニーカーなどサイズが異なる景品は手間がかかるし、サイズをある程度揃えなければならない。オンクレはサイズを選んでから、もしくはそこに表示されているサイズのものに挑戦することができるが、実店舗で違ったサイズがマシンに並んでいた場合には店員に話しかけなければならない。

 もう一度言おう、が話しかけるのではなく、が話しかけなければならないのだ。見知らぬ他人に何かを頼むというのはハードルが高い、高過ぎるよね。

 そういうときはオンクレ最高。何かあってもお問い合わせに文字を入力すれば良いってところが。電話で問い合わせろ、だったら詰んでいる。対面でなくとも、嫌なものは嫌なのだ。

 大学では話しかけられることが多いので、何ら問題がなく過ごしている。異世界からの留学生ということで物珍しさもあるのだろう、話しかけられるというのはありがたい。顔見知りになれば、私自ら挨拶することもワケがないのだが、見知らぬ他人に話しかけるのは超難しい。


 さて、問題はにゃにゃタロ全身コーデ。


 ふと、他にも取った景品を見る。ぬいぐるみ、お菓子や雑貨もある。小物を入れている箱を覗く。


「お、」


 にゃにゃタロのワッペンがあった。

 これを手持ちのスカートにつければ。

 完成。

 本来ならアイロンでつけるものだったが、魔法でアイロンは省略した。



 これにて、全身コーデ完了!



 翌日、私はこの格好で大学に行った。


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