第50話 そして、夢は繋がる
ある程度体力が回復して補助の杖も不要となり、ファルナルークがシュレスの元へ向かったのはそれから三週間後だった。
ファルナルークの体調も考慮して、それだけの療養期間が必要とトリーネが判断したのだ。
両手の包帯を取ると手のひらに痣ができていた。
それは自然に消えるよとトリーネは言う。
しかし、下腹部の縫合痕は薄く目立たなくはなるが完全には消えない、と。
トリーネは、一番大切なのは心のケアだよ、と最後に付け加えた。
アールズの街からファルナルークとシュレスの故郷リグルまでは徒歩だと一ヶ月以上はかかる。
魔装列車と馬車を利用すれば五日程度で済む行程だ。
「お金の心配ならしなくていいよ。友人に会いに行くんだろ?私の事もよろしく言っといてよ」
トリーネはそうい言って旅費を工面してくれたのだった。
資金の出所が気になるが、今はトリーネの言葉に甘える事とした。
二ヶ月の昏睡状態と三週間の療養生活で髪の手入れがままならなまったファルナルークは、伸びた髪を器用に自分で切り、故郷へ向けての旅支度をする。
「なんで髪伸ばさないんだ?ツヤサラでキレイなのに」
「じゃあ、ファイスはなんで伸ばさないの?男だから?」
「面倒だから」
「でしょ?それと同じよ」
「えー?ショートカットの方が手入れが大変て言う人もいるけどなー」
「ちょっとクセのある人ならそうかもね。人は人。私はいいの、これで」
少し間をおいてファルナルークが静かに問う。
「……ファイスは、身体は大丈夫なの?どうして、私を助けてくれたの?」
「一緒に旅した仲間を助けるのに理由なんている?身体は全然平気。代わりになるものが入れてあってすぐに身体に馴染むってさ。
魔力吸引でスキル使えなくなったのは残念だけど、いずれは無くなるモンだからなー」
「……魔力吸引って、まさかファイスも、あのペラペラの衣装着たの?」
「いや。おでこに手を当てただけだったよ。やけに簡単だったなー」
「え、そうなの?メレディスさんのは何であんなだったんだろ……今は、痛みとか、違和感とかないの?」
「なんもないよ。魔女で医者ってスゴいよな。胸は控えめだけどスゲー色っぽいしな!」
「……あっそ」
「あれ、怒ってる?妬いてる?妬いてる?」
「殴られたいの?」
「顔色、良くなったじゃん」
「え?」
「キレイでかわいいファルに戻ってきてる」
「……おだてても何もでないわよ」
「知ってる」
「……よろしい」
悪い気はしないけど。とは口に出さないファルナルークであった。
『共に旅をした仲間だから』
それだけで内臓細胞と残り少なかったマジクスの力を提供したりするだろうか?
もっと他に理由があるのではないだろうか?
それを聞けない自分の心の変化に、ファルナルークは少しだけ戸惑うのだった。
「ファルは家に帰らないのか?シュレスと幼なじみってことは、家近いんじゃないのか?」
「中等部に進学する頃に引っ越したから、昔住んでた家はもうないの。ちょっと寂しいかな」
「そっか。俺は家ってもんに住んだ事ないからなー。家あるだけうらやましいよ」
「え?……どんな生活してたの?」
「親父と野山駆けずり回ってたよ。イノシシとか熊とかカモシカとかと戦ってた。親父は赤角化したクマにやられちゃったけどねー。母親の顔は分からない。親父に愛想尽きて別れたんだとさ」
「そんな軽く言うけど……ずいぶん野性的だったんだね」
「あ、一応、学校は行ってたよ。マジクスの力が覚醒し始めてからは行かなくなったけど」
なんて事のない会話を交わしながら、少しずつ元気になっていくファルナルークを見てファイスは嬉しく思う。
ほんの少しでも、共に旅をしたファルナルークの支えになってあげられたら、と。
本音を言えば。
『もっと親密になりたい』と願うファイスなのであった。
ファルナルークは、『一度も袖を通していない』という白いブラウスとノースリーブのワンピースをトリーネから譲り受け、それを着てシュレスのいる故郷へと向かった。
まるでファルナルークの為に作られたのではないかと思えるほどに、誰もが見惚れるファルナルークに似合う若草色のワンピース。
裾の部分は若草色から淡い緑へとグラデーションが彩られ、そこはかとない上品ささえ漂っている。
胸の辺りがちょっと窮屈だったが、ファルナルークは何も言わなかったし、トリーネも見て見ぬフリをしていた。
「スゲー似合ってる!今までのだっさい旅服がウソみたいだな!」
「私の旅服はダサくないっ」
ファイスは一言余計なのだ。
魔装列車や馬車を乗り継いでファルナルークとシュレスの故郷、リグルに到着する頃、季節は晩秋、紅葉は終わりに近く枯れ枝が目立つようになってきた。
朝晩の冷え込みはさほどではないが、冬が近い。遠くに見える山脈の頂きには雪も見える。
閑静な田舎の町、どこにでもあるような風景だ。
「おー、山頂が白くてキレイだなー。この辺て雪降るの?」
「毎年、膝の高さくらいまでは積もるかな」
「へー、同じ島でも北と南でずいぶん違うんだな。標高差もあるからかな?」
シュレスの家に向かい歩いていると、ファルナルークが子供の頃にシュレスと一緒に遊んだ思い出が甦る。
「シュレスって、子供の頃すごいやんちゃだったのよ。髪もボサボサで男の子みたいだった」
「そうなの?なんか想像つかないなー」
「木登りなんて当たり前だったし、カエルとかヘビとかトカゲとか素手で捕まえて私の所に持ってくるし、セミとかバッタとか食べちゃうんだよ?怖がる私を見て面白がってた」
「絵に描いたようなわんぱくっ娘(こ)だな。変わってんのは子供の頃からかー」
「シュレスに誘われて一緒に木登りして、私が木から落ちた事があって……落ちた場所が柔らかい草地だったから大丈夫だったんだけどね。私が悪かったのに、シュレスがすごく泣いちゃって……ごめんなさい、ごめんなさいって」
「ファルの事が大事だったんだな、きっと」
「……うん」
「いいヤツなのも子供の頃からなんだなー」
「……うん」
「二人で旅してたって?」
「別々のマジクス部隊に配属されてしばらく会ってなかったんだけど……部隊が解散して、町で偶然再会して、それから一緒に旅をして……エルフの呪いを受けたのはその頃のハナシだよ」
明るくて、優しくて。
愉快で、面白くて。
ちょっとヘンタイで。
一緒にいて楽しい。
幼馴染みの親友。
――シュレス……早く会いたいよ……
シュレスの家は町から少しだけ離れた場所にある。周囲に点在する家々と変わりのない、ごくありふれた佇まいの一軒家だ。
隣接する小屋は、シュレスの勉強部屋として父親が建ててくれたものだ。
勉強小屋とは名ばかりで、近隣の友人達との溜まり場と化してしまったのは父親の誤算だったであろうことは容易に想像がつく。
家の扉の前でファルナルークは立ち止まり、想いを巡らせる。
何て言おうかな……
元気だった?
久し振り?
私……ちゃんと笑顔で言えるかな……
「……ファル?どうした?オレが代わろうか?」
ファルナルークの様子を気遣いファイスが聞くがファルナルークは首を横に振り、一瞬だけためらってから、焦げ茶色の扉をノックした。
『はいはーい』と明るい返事の後、とたとたと足音がして扉が開く。
そこに立っていたのはシュレスではなかった。
「あら……ファルちゃん!?久しぶり!キレイになって、まあ!そちらさんは?」
「お久しぶりです、テーラさん。テーラさんもお元気そうで何よりです。これは……召し使いです」
「召し使い……ああ!なるほど!そんなカンジね!」
「え!?納得すんの!?」
「じゃあ、カレシなの?」
「違います」ファルナルークは真顔で即答。
「来てくれてありがとうねー。シュレスね、あのコ、最近急に体調崩しちゃってねえ……裏に、子供の頃木登りしてた大きな樹があるでしょ?そこにいるから、会ってあげてね」
神妙な顔つきのテーラに、ファルナルークは小さな胸騒ぎを覚えた。
早く会いたい。
会って話をしたい。
笑顔を見たい。
声を聞きたい。
大きな樹だ。
その樹の根元まで行き、ファルナルークは、膝から崩れ落ちた。
「……シュレ……ス……?」
ファルナルークが眼にしたものは、小さな、あまりに小さな墓だった。
石板の前に新しい手作りの花束が供えられていた。
「う……そ……」
何故?どうして?
言葉が出てこない。
「あれ、ファルじゃーん?良かったー!回復したんだー!ファイスも久しぶり!ファルの事、しっかり看ててくれたんだねー!」
いつもの高い声で突然に現れたシュレスが二人の元へ駆け寄ってきた。
「シュレス!って、その墓は……?」と、ファイス。
「ウチで飼ってた犬のお墓。ファルも知ってるよね?って、わあ!」
いきなりファルナルークに抱きつかれ、シュレスは耐えきれず、二人共に柔らかな草の上に倒れ込んでしまった。
「元気になったんだねー。よかったよー!この服、いいね!若草色のワンピース、スゴく似合ってるよ!」
シュレスは、子供をあやすように、ぽんぽんとファルナルークの頭を撫でた。
「シュレスぅううう……っ……ううっ……うっ……」
「なんだよ、泣かないでよ……あれ?……怒ってる?」
溢れ出す幾つもの想い。
それがそのまま大粒の涙となって、ファルナルークの頬を濡らした。
「泣くよ……っ……怒るよっ……どうして、相談もしないで……子宮移植なんて……勝手な事……っ」
「ファル……」
剣を知らない細い指で、肩を震わせて涙を流すファルナルークの金色の髪を撫でる。
「……こればっかりは……アタシのワガママだよ。あの時はそれしか思いつかなかった。必死だった。ファルを、ファルの未来を死なせたくなかったんだよ……」
ファルナルークの空色の瞳に映るのは、シュレスの翠色の瞳。
シュレスの翠色の瞳に映るのは、ファルナルークの空色の瞳。
見えない糸で繋がっているかのように、二人の視線は離れる事を知らない。
でも、とシュレスが小さく言う。
「……でも……いくらなんでも……気持ち悪い……よね……」
「違うよ!なんでそんな事言うの!?……私は、シュレスになんて言えばいいの?ありがとうって言えばいいの?ごめんなさいって言えばいいの?わかんないよ……っ」
「ファルから感謝されたいんじゃないよ……ただ、ファルに生きてて欲しかった。夢を失わせたくなかった。ホントに、本当に……それだけだよ。だから……生きててくれてありがとう!ファル!」
「………っ」
「……ねえ、ファル。魔力吸引した事、後悔してる?」
シュレスの問いに首を左右に振ると金色の髪が緩やかに揺れ、空色の瞳からは大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「ね、それと同じだよ。アタシも後悔なんてしてないし、これからもしない。だからさ、泣かないで。ね?」
小さな子供に語りかけるようなシュレスの口調に、ファルナルークは言葉が出なかった。
涙だけが溢れて止まらなかった。
「バンバンやりまくってさー、パカスカ子供産んでよ!楽しみにしてるから!ね!」
「言い方が下品だよ……シュレス……っ」
泣き笑いのファルナルーク。
シュレスはもう一度、ぽんぽんと優しく頭を撫でた。
「今晩泊まっていくでしょ?おいしい料理、ご馳走するよ。母さんが!ファルの好きな紅茶のクッキーもあるからさ!」
シュレスの、子供の頃から変わらない、太陽のような満面の笑みを見たのは久し振りだ。
「大好き……!」
「大好きってー、アタシの事?クッキー?」
シュレスが覗き込むようにして、いたずらっぽく聞く。
「両方!」
ファルナルークは涙声で、もう一度、シュレスを抱き締めたその両腕に力を込めた。
その晩、ファルナルークとシュレスは子供の頃にそうしたように、一つのベッドに入ってお喋りで夜更かしをした。
他愛もない昔話。シルス達との旅の想い出。
楽しかった事。辛かった事。
好きだった人の事。これから先の事。
シュレスが帰って来るのを待つようにして天に召された
様々な話を、笑いながら、時には涙を溢しながら、いつの間にか眠りに落ちるまで語り合った。
ファルナルークとファイスは、シュレスの母テーラの勧めもあり、もう一晩シュレスの家にお世話になる事になった。
ファルナルークとシュレスが思い出の場所を巡ると二人の話は尽きる事を知らない。
懐かしくて楽しい時間は、あっという間に過ぎていった。
夕食後、シュレスの母テーラが再び紅茶のクッキーを焼いてくれた。香ばしくサクサクと食感の良いクッキーは、食後にも関わらず手を止められないほどに食べやすくて美味だ。
最後の一枚になって三人がジャンケンする事になり。
ファルナルークが勝利した。
いたずらっぽく笑むファルナルークだったが、その一枚を器用に三つに割り、三人で分けた。
「ファルちゃんは気立てがいいねえ!ところで、あんた!いい身体してるねえ。ウチのシュレスどうだい?もらってくれないかい?」
テーラがファイスをまじまじと見て言う。
「だってさっ!どーよファイス?」
「オレにはファルがいるからなー。ごめん!」
「えっ!?何を言い出すのよっ!?」
一瞬、ファルナルークの時が止まる。
「え、アタシ、今フラれたのっ?」
「そっかー、残念!ファルちゃん相手じゃしょーがないねっ!あっはははー!」
シュレスとよく似た笑い方でテーラが場を和ませるが、ファルナルークだけは……
少し俯いて、眉間にシワを寄せていた。
翌日。
風が吹いていた。
秋の終わり、冬の始まりのひんやりとした風だ。
「もっとゆっくりしていけばいいのに……アタシに迷惑かけるから、とか考えてないよね?」
「ううん、そんなんじゃないよ」
「ん、わかってる。ちょい意地悪したくなっただけ。え?なになに?早くファイスと二人きりになりたいとか?」
「ないない!ありえない!」
「だよねー。全然ファルの好みじゃないし、おバカだし、えっちな事しか考えてないし」
「……それなりに、いいところもあると思うんだけど……」
「ん?なになに?なんか言ったぁ?」
「イジワルだなあ、もう」
あっははー!と大きな口でシュレスが笑う。
――またね。
――また会いに来るからね。
――ここにいないかもよ?
――どこに居ても会えるよ、私達なら。
ファルナルークとシュレス、二人は固く抱き合う。
約束はしない。
二人の間には、そんな言葉はいらないのだ。
◇
隣町の馬車乗り場へと向かう途中、小高い丘の上で休憩する二人。
爽やかな風を前髪に感じながらファルナルークがファイスに問う。
「あのね、ファイス……私……ダークエルフの娘におかしな術をかけられて、意識無くなった、でしょ?」
「ああ、危なかったな、アレ」
「あの時……あの瞬間に……誰かに抱き締められて……なんとか戻ってこれた、と思うの」
「あー、あれね、オレオレ。どしたん?感謝する気になった?」
「あの時……」
薄れ行く意識の中、ある感情が流れ込んできた。
ファイスのものだったか、自分自身のものだったかもわからない。
「うん?」
「あの時……ね」
気のせいかも知れない。脳がパニックを起こして、訳のわからない状態になっただけなのかも知れない。
「うん」
「……なんでもない」
聞けないし、言いたくない。
なぜなら……
「えー!気になるじゃん!途中でやめんなよー!」
「……知らない。何も言ってない」
ファルナルークの頬が赤くなっている事に、鈍感なファイスは気付かない。
「よし!当ててみせよう!」
「え!?」
どきん!と、ファルナルークの胸が高鳴る。
「俺に抱き締められて……」
ぐい、と顔を近づけるファイス。
「……なによ」
「あとで絶対殴る!って思ってた!どう?正解!?」
「……正解……もう殴ったからいい」
「いやあ、必死だったとは言え、どさくさまぎれで抱きついてファルの身体触りまくったからなー!」
「やっぱり殴る」
「ですよねー!」
結局、ファイスは殴られた。が、いつもよりは力を加減されていた事に、鈍感なファイスは気付かない。
「ファルは、これからどうすんの?」
「わからない……何も決めてない……ファイスは?」
「俺は街に戻って働くよ。目先の生活費いるからなー。俺みたいなバカでも、住み込みで雇ってくれるところ見つけたんだよ。
「そうなんだ……」
「でさ、ファル。一緒に働いてみないか?リハビリがてらに。イヤならしょーがないけどさ」
「……イヤとは、言わない……けど。あのね、ファイス……その『俺みたいなバカ』って、あまり言って欲しくない……かな」
「へ?なんで?」
「自分を卑下するような言い方だから……」
「ヒゲ?俺、うすい方だと思うけど?」
「そのヒゲじゃないっ。とにかく!私がイヤなの!」
「そっか。わかった。ファルがイヤがる事はしない!」
「ずいぶん素直なんだね……いやらしいヨコシマな下心が見え見えなんですけど」
「そんなの当然じゃん!」
「……ニヤニヤしないでよっ」
「あのさ、親父がよく言ってたよ。『人生ってのは生きてる限り冒険だ。そんで、オレ達は生きてる。まだ、冒険は終わってないぞ、ファイス!』って。親父の冒険は終わっちゃったけど、オレ達はそうじゃない。だからさ」
ファルナルークの空色の瞳を真っ直ぐに見つめて、ファイスは満面の笑顔で言う。
「楽しく生きようぜ、ファル!」
「……そっか……ファイスの、そういうところが……」
「ん?……?」
「すっぱい」
「……なんだそれ?ぶはっ!あははははっ!」
ファイスが腹を抱えて笑う。
「そうだね。楽しく生きなきゃ、ね。なんとかなるなるー♪だね」
ファルナルークの金色の髪と若草色のワンピースの裾が風に揺れる。
くすくすと笑うファルナルークの柔らかな春の陽射しのような笑顔を、ファイスは初めて見たような気がした。
キミと一緒に、笑っていられたら。
その笑顔を、ずっと守っていけたなら。
「 」
そして、二人の人生は続いていく。
二人が結ばれるかどうかは………
◇
シルスは忘れない。
41年の時を超えて、若かりし頃のおばあちゃんと、出会った仲間達と過ごした13歳の夏休みの事を。
シルスは忘れない。
右手にファルナルークの手の温もりを。
左手にシュレスの手の温もりを感じながら見た花火の事を。
シルスは忘れない。
三人で毛布にくるまって過ごした、彗星と、星と、満月が輝く夜の事を。
シルスは知っている。
ファルナルークが生涯に産んだ子供は一人だという事を。
シルスは知っている。
ファルナルークが若くして亡くなってしまうという事を。
シルスは知らない。
初めて出会ったその日に『耳を舐めさせて』とせまってきたシュレスが。
泣きじゃくる小柄な身体を抱き締めて、優しく髪を撫でてくれたシュレスが。
芝生の上に寝転がり、手をつないで一緒に花火を見たシュレスが。
もう一人のおばあちゃんであるという事を……
シルスは、知らない。
◇
◇
◇
~とある少女の過去の日記より~
アタシには好きなひとがいる。
でも、告白なんてできない。
そんなコトしたら、今の関係がこわれちゃう。
もし、一つだけ願いが叶うなら。
あの子の子供を産みたい。でも、できない。
アタシの子供を産んで欲しい。それも無理。
アタシ達は、女同士だから。
天と地がひっくり返ったら、かみさまが寝ぼけてなにかを間違えたら……そんなコト、起きるハズもない。
あの子がショートカットにしてる理由は、二人だけのひみつ。
アタシが三つ編みにしてるのも、二人だけのひみつ。
アタシは、あの子が好き。
大好き!大好き!
大好きなんだよ……
あの子に、大好きって言われたら……
アタシは、何も望まない。
ねえ……ファ……
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