幕間8※ルードルフ視点
「ディア、どこに行きたい?」
城下町で出掛けるのは初めてだ。出来るだけクラウディアの望む場所に連れて行ってあげたいと思って尋ねると彼女は困ったような表情になる。
行きたいところがあり過ぎて困っているようには感じられない。
そういえばクラウディアはあまり城下町に来た事が無かったはず。どこに行けば良いのか分からないのか。
もうお昼も近いと「とりあえず昼食にしましょうか」と提案すると安心したように頷かれた。
彼女に案内したのは行き慣れたレストラン。通して貰ったのは普段使っている広めの個室。
護衛達には外で待機して貰い、中に入るのは私とクラウディアだけだ。
「あの、二人きりは不味いかと…」
おどおどした様子で言ってくるクラウディア。
普通なら婚約者であろうと男女が二人きりになるのは不味い。それがよく分かっているからこその台詞なのだろうが私としては二人きりが良いのだ。
誰にも邪魔をされたくない。
扉の前で待機しているキーランドを呼びに行こうとするクラウディアの手を掴み「大丈夫、誰にもバレないよ」と笑いかける。
「そういう問題では…」
「折角のデートなんだ。少しでも長く二人で居させてくれ」
狡いと思うがお願いするように言ってみた。
折れてくれたクラウディアは離れたところに行こうとするが逃すつもりはない。隣に腰掛けると彼女から激しい動揺を感じた。
照れているのかクラウディアは頰を赤く染めて「ルード様、ち、近いですから」と離れようとする。
可愛いな。もっと見たい。
「駄目?」
「て、店員の方に見られたら困りますから」
「気にしなくて良いから」
ここの店員は口が堅いと分かっている。
ただクラウディアはそれを知らない。だからこそ不安になっているのだろう。
諦めた様子で「店員が来たら離れてくださいね」と言ってくる。
「仕方ないな」
それはこっちの台詞だと言ってきそうな表情を向けてくる。
偉そうにするなと言ってきても良いくらいなのに。
「ディアは何を食べますか?」
「ルード様のお勧めの物で良いです」
尋ねるとクラウディアはやや適当に返事をしてくる。
私を信用しているからこその返事なのだろうけど、ちょっとした悪戯をしたくなるのは彼女が可愛いせいだ。
「じゃあ、ディアの苦手な物を選ぼうかな」
クラウディアが魚料理が苦手だと知っている。わざと言ってみると嫌そうな表情で「魚介類以外にしてください」と返してきた。
悪戯が成功して嬉しい。子供のような笑顔を見せると溜め息を吐かれてしまう。
「適当に返事をする方が悪いよ」
「ここに来るのは初めてなので任せたかっただけです」
明らかに適当に返事をしていたのに。誤魔化すように言うクラウディアは拗ねた表情を浮かべていた。
やっぱり彼女と過ごす時間は楽しくて堪らないな。
「それなら仕方ないね」
次に適当な返事をしたらどんな悪戯をしてあげようか。
そんな馬鹿みたいな事を考えた。
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