第24話
命を狙われた危険性がある私に護衛が付けられる事になったのは理解出来る。
ただどうしてこの人物なのだろうか。ちらりと後ろに立っている男性に目を向ける。
「何か?」
仏頂面で尋ねてくる人物の名前はキーランド・フォン・ヴィルト。
年齢は二十五歳。黒髪黒目が特徴的な王宮騎士だ。
彼がただの騎士であったならば文句はない。しかし彼は…。
「よりにもよって護衛が攻略対象者ってどうなのよ」
キーランドは隠れ攻略対象者の一人とされている。ゲームでは王太子であるバルデマーを攻略しなければ攻略対象者として現れない人物だ。
そして彼のルートには悪役令嬢が存在しない。ただし彼を慕っている王宮騎士達が邪魔をしてくる仕様となっていた。
そしてゲームでクラウディアとは関わりはない。現実でも関わりはなかった。しかし先の一件によって関わりを持ってしまう結果となったのだ。何でもルードルフが「腕が立つし、一番信用出来る騎士だから」という理由で推薦したらしい。
「何か言いましたか?」
「いえ、何も言っていないわ」
「そうですか」
めちゃくちゃ気不味い。
学園が休みである今日はルードルフから城下町に出掛けようと誘われたのだ。しかし町に到着した時に聞かされたのはルードルフが用事があって遅れるというもの。
結果キーランドと二人で待つ事になってしまった。
変装をしているので私とバレないし、人目もある不貞を疑われるような事はないけど会話が続かないので気不味いのだ。
遅れるなら屋敷から出る前に言って欲しかったわ。
「キーランド様」
「呼び捨てで結構ですよ」
キーランドは伯爵の息子。私は公爵家の娘だ。
身分的には私の方が上だけど流石に年上を呼び捨てには出来ない。これは年功序列で生きてきた前世の性だ。
苦笑いで「キーランド様は年上ですので」と拒否すると怪訝な表情を向けられる。
「そうですか、分かりました」
この人、私の事を嫌っているのかしら。
再び訪れる沈黙が重い。後ろを見ると相変わらずの仏頂面だ。
もしかして私のような護衛をやりたくなかったのだろうか。
そりゃあ王城で働く名誉ある騎士としては護衛の仕事を請け負うのは嫌よね。
「クラウディア様、ルード様がいらっしゃいましたよ」
遠くを見つめながら言うキーランド。彼の見ている方を向くが遠くに黒い物体が見えるくらいだ。よくあれがルードルフの乗っている馬車だと分かるものだと感心する。
そういえば目が良い設定だっけ。
何にしても気不味い空気から逃れられそうで良かったと安堵の息を吐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。