第4話
両親と朝の挨拶を交わし、朝食の席に着くとお母様に笑われてしまう。寝不足になった原因の話をすれば二人に笑われてしまった。
「僕が買ってあげた小説を楽しむは良い事だけど寝不足は良くないよ?」
「すみません…」
でも面白かったから仕方ない。
そう思いながらテーブルに出された朝食用のパンを口に頬張った。
「そういえば今度お姉様主催のお茶会が開かれるそうね」
お母様の言うお姉様とは王妃様の事だ。
実の姉妹だと知った時は驚愕するしかなかった。
「目的は第二王子であるルードルフ殿下の婚約者探しらしいわ」
もぐもぐと口の中でパンの美味しさを感じていると両親の会話にぴたりと動きが止まる。
ルードルフ?
その名前どこかで聞いた事があるような。
クラウディアとルードルフって…。
「あぁぁ!」
ガタンと席を立ち上がる。
両親と周りに居た使用人達が驚いた表情をこちらに向けてきた。
「ディア?どうしたの?」
お母様が尋ねてくるのでぎこちない笑顔を見せて「何でもありません」と答える。
「すみません。寝不足が酷くて、もう少しだけ眠りますね」
戸惑う両親を置いて自室に逃げ帰る。着替えを手伝ってくれたヒルマ。心配そうな表情を向けられたけど生憎と今は一人で確認したい事があるのだ。
寝不足だからもう少し寝るの一点張りで部屋から出て行って貰った。
クラウディア、ルードルフという名前を聞いて自分の顔に見覚えがある理由がようやく分かったのだ。
ベッドに腰掛けチェストに乗せた手鏡を持ち上げて自分の顔をじっと見つめる。
「間違いない。悪役令嬢クラウディアの顔だわ」
そのままベッドに寝転ぶ。
私には前世の頃ハマっていた乙女ゲームがある。
タイトルは『恋する魔法学園~愛してくれる王子様は誰?~』で通称『恋ガク』と呼ばれていた。
その中に悪役令嬢と呼ばれるヒロインと攻略対象者の仲を邪魔したり、ヒロインを苛めたりする引き立て役がいるのだ。
そして悪役令嬢の末路は決まって碌な物ではない。
何を隠そう私が転生してきたクラウディアは『恋ガク』の悪役令嬢なのだ。
我儘で自分勝手で家の権力を使って好き放題。
キャラの人気投票でも最下位だったくらい嫌われ者だった。
「どうして今まで気が付かなかったのよ…」
クラウディアが悪役令嬢として登場するのは彼女の婚約者である第二王子ルードルフのルートと逆ハーレムルートの二つだ。
婚約者と仲良くするヒロインに嫉妬し苛めるという王道展開。
ヒロインを階段から突き落とそうとしたり、取り巻きに頼んでヒロインに水をかけたり、教科書を破いたり、ドレスを破いたりと他にも色々と頭が悪そうな苛めをするのだ。
そして最後は婚約者によって国外追放にされて森の中で物取りに襲われ破滅するという末路が待っている。
「破滅はお断りです…」
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