ふたりかくれんぼ

「一緒にかくれんぼしようよ」


 小学生の頃、当時引っ込み思案だった私に君がそう声を掛けてくれたよね。あの時は嬉しかったな。あなたに褒められたくて草の茂みに這いつくばって隠れたのはいいけど、結局見つけられなくてあなたは先に帰っちゃったんだよね。怒ってないよ。嬉しさの方が大きかったの。本当だよ。初めての友達、初めての恋だったから。


 あなたといると毎日が楽しくて毎日が一瞬だった。1度も「好き」と言えないまま気付けばお互い大学生になってしまったね。今まで幼なじみってだけであなたは私の我がままを沢山聞いてくれたね。でもね、私の我がままには全部理由があったんだよ。


 英語のテストだけあなたより成績が悪かったのは、あなたの家で勉強を教えてもらいたかったから。


 雨の日に最寄りのバス停まで「傘を持って来て」って言ったのは、あなたと同じ傘に入りたかったから。


「車でしか行けない所があるの」と教習所を勧めたのはあなたが運転する車の助手席に座りたかったから。


でも、そんな事言わなきゃ良かったな。


「教習所で好きな人が出来た。これは運命だ」


なんて、とっても嬉しそうに私に話すんだもの。あれは流石に辛かったな。今更だけど「良かったね」なんて思ってもいない言葉を口にした自分を殴りたいよ。


もし、その子と付き合う事になったら……私はもう……あなたに我がまま言えないね。


結局1番最初に始まった我がままが1番最後に残ったよ。


私から「好き」と言わなかったのはあなたに見つけて欲しかったから。


私をかくれんぼに誘ったあの日から、あなたはまだ1度も私を見つけてないよ……。


早く私の本当の気持ち……見つけてよ……。


「もういいよ……」

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