60歳のヴァレンタイン

佐伯達男

60歳のヴァレンタイン

時は2月5日の深夜3時頃のことであった。


場所は、いよてつ余戸(ようご)駅の近くにあるサークルKにて…


アタシ・りさこ(60歳)は、サークルKで深夜のバイトをしていた。


この時は、脚立を使って劣化した蛍光灯を交換する作業をしていた。


脚立が足もとですべったことが原因で、アタシは脚立からまっ逆さまに落下した。


その時、近くにいたゆうすけさん(25歳)がアタシをお姫さま抱っこでキャッチして助けてくださった。


「あぶねーあぶねー」

「えっ?アタシ…助かったの?」

「危なかったよ…下はつやつやとしたタイルだから、あぶないよ。」

「ゆうすけさん、ありがとう…ああ…生きててよかった…アタシまだ…初体験していないのよ…初体験しないまま死ぬなんてイヤ…」

「えっ?初体験って?」


ゆうすけさんは、アタシの言葉を聞いてビックリした。


アタシは、奥の部屋へかけて行った。


恥ずかしい…


アタシ…


60歳なのに…


結婚していない…


ダンナも子供いなければ孫もいない…


その上に…


60歳なのに…


ヴァージン…


憧れのゆうすけさんは、アタシが60歳でヴァージンだと言うことを聞いたので、動揺しているみたい…


どうしよう…


やだやだ…


恥ずかしいわ…


どうすればいいのよ…


朝6時過ぎのことであった。


深夜のバイトを終えたアタシは、ロッカールームで着替えをしていた。


制服を脱いだあと、制服の下に着ていた青色のワイシャツを脱いだ。


ワイシャツの中から、ラベンダーでカップケーキ模様のババシャツがあらわになった。


その時、ゆうすけさんが突然ロッカールームにやって来た。


アタシは、ビックリした。


「りさこさーん。」

「キャッ!!…女の子がお着替えをしているところをみちゃダメ!!」

「何だよぉ…危ないところを助けたのに…そんな言い方はねーだろ…」

「ゆうすけさん…」


ゆうすけさんは、ニヤニヤした表情でアタシに言うた。


「今日は…ラベンダー色のカップケーキ模様のババシャツだね…」

「イヤ…恥ずかしい…」


ゆうすけさんは、ニヤニヤした表情でアタシにきわどい言葉を言うた。


「りさこさん…りさこさんは結婚しているの?」

「結婚…していないわよ…ダンナおらん…ダンナがいなけりゃ、子供もいないし孫もいないわよ…」

「やっぱりね…」

「何よ!!やっぱりねって、それどういう意味なのよ!?」

「だって…りさこさん…初体験を済ませていないのでしょ?」

「悪かったわね!!60歳でヴァージンの女がそんなにめずらしいのかしら!!」

「そう怒るなよ…」


ゆうすけさんは、アタシが着ているババシャツのUの字の部分から見える乳房(むね)の谷間をチラッと見たあと、アタシにきわどい言葉をいうた。


「オレ…りさこさんのことが…気になるのだよ…りさこさんのことを考えていたら…胸がドキドキして来るのだよ…とても苦しい…」


えっ?


どういうことよ…


ゆうすけさんは、アタシにこう言うた。


「オレ…りさこさんのことを…愛している…」


ちょっと…


困るわよ…


ますますコンワクしているアタシに対して、ゆうすけさんはこう言った。


「りさこさん…ぼくは本気だよ…りさこさんのことが大好きなのだよ…」


アタシはあきれた声で『あのねぇ…』と言ってからゆうすけさんにこう言うた。


「ゆうすけさん…ゆうすけさんとアタシは…35も歳が離れているのよ…それに…ゆうすけさんはアタシのどういうところが好きなの?…ゆうすけさんの恋人候補の女のコなんてまだ近くにもたくさんいるでしょ…60過ぎのアタシよりもカワイイ女のコを選んだ方がいいわよ。」


アタシの言葉に対して、ゆうすけさんはアタシにこう言い返した。


「オレ…女のコは…りさこさんだけ…しかいない…」


(ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン…ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン…)


この時、アタシの乳房(むね)の奥でドキドキした気持ちが高まった。


ゆうすけさんからの告白を聞いたアタシは、ひどくとまどった。


しかし、乳房(むね)の奥でドキドキした気持ちが高まった。


どうしよう…


ドキドキしているわ…


ゆうすけさんから告白されたので…


乳房(むね)のドキドキが…


さらに高まったみたい…


ゆうすけさんは『話は変わるけれど…』と言ってからアタシにこう言うた。


「りさこさん…もうすぐヴァレンタインだね…」

「そうよ。」

「チョコレートをプレゼントするカレはいないの?」

「いるわけないでしょ。」

「それじゃ…本命のヴァレンタインチョコレート…オレにちょうだい…」

「ゆうすけさん…」

「オレ…りさこさんからの本命チョコレートがほしい…」

「ゆうすけさん…」

「じゃあ…オレは持ち場へ戻るから…りさこさん…今度の休みはいつかな?」

「いつって…9日よ…」

「オレも9日休みだよ…道後温泉街のアーケードにオシャレなカフェレストランがオープンをしたので…予約を取っといたから…9日の10時に…道後温泉駅で待っていてね…それじゃ…お疲れ…」


ゆうすけさんは、アタシにこう言った後にロッカールームを出た。


ロッカールームに取り残されたアタシは、何も言うことができないままポツンとたたずんでいた。


困るわ…


困るわよ…


急にデートの日取りを決めるなんて…


(ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン…ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン…)


この時、アタシの乳房(むね)の奥で再びドキドキした気持ちが高まった。


ヤダ…


どうしよう…


ドキドキしているわ…


アタシ…


…って、ダメよダメダメ!!


ダメよ…


完全にゆうすけさんのペースに乗せられてしまった…


アタシとゆうすけさんは35も歳が離れているのに…


好きになったら…


アタシ…


ダメになっちゃう…


2月9日のことであった。


アタシは、路面電車の道後温泉駅の広場でゆうすけさんが来る時を待っていた…


待ち合わせの時刻は朝10時であった。


アタシは、白のブラウスの上からクリーム色のセーターを着て、下は黒でイチゴ模様のスカートを着て、白のトートバッグを持って、待ち合わせ時刻の20分前にやって来た。


それから数分後に、カジュアル服姿のゆうすけさんが待ち合わせ場所に到着した。


「お待たせ…行こうか…」


ゆうすけさんは、強引にアタシの腕をぐいとつかんでうでぐみをした。


「ちょっとぉ~強引すぎるわよぉ~」

「いいからいいから…」


ゆうすけさんは、アタシをしっかりとつなぎ止めた状態でうで組みをした。


11時30分頃のことであった。


温泉街のアーケードにあるオシャレなカフェレストランにて…


ふたりは、テーブルの上に置かれているヒレステーキを食べながらこんな話をした。


「りさこさん…」

「なあに?」

「りさこさんは、どうして結婚しなかったの?」

「どうしてって…28の時にお見合いしたけど…アタシの身丈に合わない人だったから…断った…それから…アタシは…あれこれと仲人さんに注文ばかりをつけていた…気がついたら、知らないうちに結婚適齢期を逃したのよ…」

「そうだったんだ…」


ゆうすけさんは、アタシに今の気持ちを打ち明けた。


「りさこさん…オレ…りさこさんをお嫁さんにしたい。」


ええ…


アタシと…


結婚したいって…


(ドクンドクンドクンドクンドクンドクン…ドクンドクンドクンドクンドクンドクン…)


この時、アタシの乳房(むね)の奥で再びドキドキした気持ちが高まった。


同時に、アタシの右手が震えた。


右手に持っていた赤ワインが入っているグラスを床に滑り落とした。


(ガシャッ!!)


「ヤダ…」

「りさこさん…」


この時、ゆうすけさんへの思いがさらに高また。


ゆうすけさんのお嫁さんになりたい…


でも…


やっぱりダメ…


ゆうすけさんは、アタシよりも若いコを選んでほしい…


だけど…


やっぱりゆうすけさんが好きなの…


アタシは、どうしようもない気持ちに襲われた。


そうこうしているうちに、ヴァレンタインデーがやって来た。


アタシは、ゆうすけさんに本命チョコレートを贈ると言うたのに、買うのを忘れた。


それを聞いたゆうすけさんは、アタシに思い切り怒った。


この時、バイト先のサークルKのロッカールームにいて深夜のバイトを始める時間帯であった。


「ひどい、あんまりだよ!!オレ、りさこさんの本命のチョコレートを楽しみに待っていたのに…あんまりだよ!!」


アタシは、ゆうすけさんに怒鳴られたので、心が大きく傷ついた。


あ~あ…


きらわれたわ…


ゆうすけさんを傷つけてしまった…


どうすればいいのよ…


ゆうすけさんにどのように説明すればいいのか…


分からない…


この時、アタシの今の気持ちをゆうすけさんに伝えないと後悔すると思った。


バイトが終わったら、ゆうすけさんにアタシの今の気持ちを伝えよう…


早朝6時に、交代の女性従業員さんふたりがやって来た。


交代の女性従業員さんの着替えが終わった後、ゆうすけさんがロッカールームに入った。


ロッカールームに入ったアタシは、ドアのカギをかけた。


そして、ゆうすけさんに抱きついた。


「りさこ…りさこ…」


ゆうすけさんに抱きついたアタシは、今の気持ちをストレートに伝えた。


「ゆうすけ…アタシ…アタシ…ゆうすけのことが…好き…好きなの…大好き…だーいすき…」

「りさこ…りさこ…愛してる…」


ゆうすけさん…いえ、ゆうすけはアタシの身体をより激しく押さえつけた。


「りさこ…オレだけのりさこ…」

「ゆうすけ…りさこ…りさこ…」

「りさこ…」

「りさこ…知らないうちにゆうすけのことが好きになったの…男の子はゆうすけだけしかいないの…ゆうすけ…愛してる…愛してる…」


ゆうすけは、アタシの身体をより激しく押さえつけながらを今の気持ちをアタシに伝えた。


「オレ…ここでバイトを始めた時から…りさこのことが気になっていた…気がついたら…りさこのことが…好きになった…愛している…りさこ…結婚しよう…」


ゆうすけは、アタシにプロポーズした。


アタシは、うれしくてうれしくてたまらなくなったので、涙をぽろぽろこぼして泣いた。


「ゆうすけ…うれしい…りさこ…りさこ…」


そして…


「りさこ…」


ゆうすけは、アタシをギュッと抱きしめて激しいキスをした。


ゆうすけは、キスをしながらアタシが着ている制服と制服の下に着ていた青のワイシャツを脱がした。


ワイシャツの中から、クリーム色のババシャツとビキニショーツがあらわになった。


ゆうすけは、制服を脱いでブリーフ1枚の姿になった。


その後、アタシを床の上に寝かせた。


「りさこ…」

「ああ…」


ゆうすけがアタシの身体に乗っかった。


そして…


「りさこ…りさこのチョコレートを食べたい…」

「ゆうすけ…あっ…恥ずかしい…」

「オレ…おさえきれない…」

「ゆうすけ…」

「りさこ…」


あっ…


ダメェ…


恥ずかしい…


ゆうすけは、アタシが着ていたババシャツを脱がしたあと力任せにアタシを苦しめた。


そして…


「ああああ…」


奪われた…


ゆうすけに…


ヴァージンを…


奪われた…


同時に、女の願望が目ざめた。

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