第2話 お化け屋敷

 番外編第二弾です。今回は本編の22話の直前の話を書きました。時系列が変になってしまうかもしれませんが広い目で読んでいただければ幸いです。


 ――――――――――――――――――――


 長野旅行3日目。遊園地にきていた。そこで、


「お化け屋敷に入ろうよ!」


 りずはがそう言い出した。りずはが言ったように俺たちの前にはお化け屋敷がある。先程この中に入っていた人たちを見ていると何やら動画を見た後にお化け屋敷の中に入る流れのようだ。よくあるやつだな。ディズニーランドなんかにもこんな感じのがあったはずだ。あれは俺が思うにお化け屋敷ではなく、ただの絶叫系だ。一度騙されて絶叫マシンに乗せられたから思う。見た目はなんとなくお化け屋敷っぽく見えるは見えるのだが、あれは絶叫マシンだ。騙されないように注意しような。俺の二の舞いにならないことを願うばかりだ。


「お化け屋敷か。久々だな」


 俺はそう言ってりずはの意見に賛成した。お化け屋敷に入るのは小学4年ごろ以来のことで俺としては懐かしさを覚える。


 お化け屋敷を苦手とする人もいるだろうが、お化け屋敷はすごい。何がと言うと無表情を保つのがなかなかに難しいからだ。お化け屋敷では急に人が現れる、あるいは音がする、光るなどと多種多様な脅かし方をしてくる。それらは俺にとってもそうだし、俺以外にお化け屋敷に入る客にとっても新鮮味を感じるのだ。使い回しの脅かし方であっても場所によっては恐怖を覚えたりするしな。俺は結構、お化け屋敷は好きな方だ。


「おおっ、お兄ちゃんが珍しくも積極的!」


「まあな。お化け屋敷は小学4年以来だし」


 俺は感慨深く思いに浸っていると、


「やっぱりお兄ちゃんはあの子とお化け屋敷、来たかった?」


 りずはが俺をからかうようにそう言ってきた。俺は少しげんなりした。りずはは何が何でもあの子と繋げようとするのだ。あの子はそういう存在ではないというのに、だ。


「はぁ、またその話か。何回も言ってるけどな、あの子はそういうあれじゃないんだよ。言っても理解されないとは思うけどさ」


 俺はそう言って日下部の方を見た。日下部はお化け屋敷を見ては顔を下に向けていた。


「日下部?どうかしたか?」


「な、なんでもないよ!」


 ···········またこの流れか。なにもないってそんなことはないだろう。まぁ、日下部が言いたがらないのであればそれはそれでいいが。


 俺はそう思いお化け屋敷の方へと足を進めた。


 お化け屋敷はりずはがまだ小学生であることもあり、グループを二つに分けることとなった。


 親父と母さん、りずは

 俺と日下部


 この二つのグループだ。


「それじゃあ、先に行くね!」


 りずははそう言ってお化け屋敷の中に入っていった。


 俺は日下部を見て


「俺らもそろそろ行くぞ。さっき見た動画の話でもしながら行くか」


 俺はそう言って日下部とともにお化け屋敷の中に入った。入ってすぐに辺りは暗くなった。動画と似たような感じだ。

 動画では何かの実験をしていた研究者が実験に失敗し、死んでしまったということから始まっていた。そしてその死んだ研究者が亡霊となり、俺たちを脅かしてくるということだ。まぁ、よくありそうな話だな。


 俺と日下部はその動画の話をしながら歩いていたのだが、途中、日下部が立ち止まりだした。


「日下部、なんで止まっているんだ?」


「そ、そこに何かいる、よ?」


「そこ?」


 俺は日下部が指差す方を見ると確かに何かいそうな気がしてくる。そこは何やら証明が当てられ、そこに影ができていた。今までくらい空間であったのに光が突如、現れる。確かにホラーチックな感じがする。


「そんなこと気にしていたって進まないだろ?行くぞ、日下部」


 俺は日下部の手を引っ張り前へと進む。そして、


「うろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 良く分からない声が響いた。俺は冷たい目でそれを見た。これはレベルが低いな。脅かし方がなってない。


「な、日下部、驚くほどでもなかっ


 俺が言い切る前に日下部は俺に抱きついてきた。


「ちょ、ちょちょ日下部!お前、急に何だよ!」


 俺は日下部を抑え込むようにするが効をなさない。


「さっきっからどうしたんだよって·······ええ!!!」


 俺は日下部の顔を見た瞬間に驚きの声を上げた。それもそのはずだ。なんたって日下部は声もあげずにポロポロ涙をこぼしていたからだ。そして俺は気づいた。日下部はお化け屋敷が駄目なやつだ、ということに。


「なんで言わなかったんだよ···········。言ってたらお化け屋敷なんて入らなかっただろ?」


「グスン、グスン。だって········」


 ダメだ、これは。少しヤバいやつかもしれない。


「リタイアするか?今なら多分できるぞ?」


「ううん。頑張る」


「無理はするなよ。今年の長野旅行はよく分からないがハプニング満載だからな」


 俺は日下部の手を引きながらお化け屋敷を歩く羽目になった。


 ◇


「日下部さん、ごめんなさい!」


 りずははそう言って日下部に謝っていた。まぁ、非は日下部にあるのだが、りずはにもまぁ悪い点はあったかもな。日下部にはお化け屋敷に入ることに関して何も聞いていなかったし。


 俺と日下部がお化け屋敷を出るのにはかなりの時間がかかった。脅かすおばけが意外にも多く、日下部がその都度止まってしまったからだ。それでも日下部はリタイアせず、ゴールした。そのときの日下部はやばかった。また、俺に抱きついてきたからだ。ほんとにやめてほしい。女子に抱きつかれるのはほんとに辛いんで。そのせいでりずはに誤解されるは親父と母さんに生暖かい目で見られるはで。


 りずはと日下部が互いに謝り合っていると母さんにそろそろ昼時だと声がかかった。りずはは母さんの方へと走り出した。俺は日下部に近づき、


「日下部、大丈夫か?」


「うん、心配かけてごめんね。もう大丈夫だよ」


「そうか、それはよかった」


 俺はそう言うとりずはたちの後をついて行くのだった。

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