6.ゴブリンと遊んだのだが

「俺達も勇者と同じようにその手助けする人間と仲良くなればいいんですよ」

「何? 人間とだと?」


 ゴブリンの言っている意味がわからないのだが。魔物と人間が仲良くなんてできるわけがないだろう。

 ゴブリンは吾輩の心の中を読んだように続きを口にする。


「人間どもも一枚岩ではないのです。中には勇者を疎んじている者さえいる。そこが人間の不思議なところですがね」

「まさか、理解できぬな」


 勇者は人間どもの希望ではなかったのか。人間とは理解に苦しむ生き物よな。


「そこでこれです」


 そう言ってゴブリンが掲げたのは手に持っていたカードだ。


「これはトランプというカードになります。今はポーカーというゲームをしていますが、遊び方は様々です」

「いやいや、遊んでどうするのだ」

「魔王様、その遊びこそが重要なのです」


 ゴブリンはここからが重要ですよ、と言いつつ指を立てる。


「人間は娯楽がないと生きてはいけないのです。それは階級が上の者ほどそういう傾向があります」

「そうなのか」

「つまり、このトランプでの遊びを極めた時こそ、そういった人間どもをこちら側へ引き込むチャンスとなるのです」

「そ、そうなのか!」


 なるほど。遊びとはいえバカにはできないものなのだな。


「人間どもを仲間にできれば勇者はアイテムを獲得できず、情報もないまま魔王城にも辿り着くことなく彷徨い続けましょう」

「ふむ、貴様も考えているのだな」

「そうなのです。……ところで魔王様。少し遊んでみませんか?」

「吾輩がか?」

「こういう作戦を実行する上で魔王様にも体験していただきたいのです」

「よかろう。遊び方を説明するのだ」


 ゴブリンからポーカーのやり方を教わった。思ったよりも簡単そうではないか。

 吾輩が参加するために座ると、ゴブリンどもが笑った気がした。きっと気のせいであろう。



「吾輩はフラッシュだ」

「俺はフルハウスです」

「……」


 まあ、いきなり勝つというのも虫のいい話か。



「うむ、ストレートだ」

「あ、俺は4カードです」

「……」


 ゴブリンに強い手がきている。運が向いているのだろうか? これは考えねばなるまい。



「2ペアか……。ここは勝負を降りることにしよう」

「やったぜ! ブタなのに勝っちまいました」

「……」


 ……。


 …………。


 ……ポーカーとは、奥が深いのだな。


「ふー、勝った勝った。魔王様、負け分はまた今度お願いしますよ」

「わかっておるわ!」


 まさかこの吾輩が敗北を味わわせられるとはな。

 ポーカーか。研究する必要がありそうだ。そして今度はゴブリンどもから負け分を取り戻してやるのだ!


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