『魔王』や『オークの帝王』と忌み嫌われる存在が、勇者との出会いをきっかけに世界や歴史の真実を語り、魔物と人類の種族関係が大きく動き出す物語です。
魔王視点かつ荘厳な語り口調で進む物語は、淡々としていながら重厚であり安定感がありました。人間側にとっては『常識』や『当然』とされていることでも、歴史や宗教や価値観は、外部から見ても納得できて正しいとは限らない。人類という存在は常に愚かさや矛盾を孕んでいるのだと突き付ける内容でした。
悠久の時を生きる魔王の半生とも言うべき内容なので、短~中編というボリュームでありながら歴史の大河を感じられる構成なのは非常に良かったと思います。
勇者との出会い、融和までの道、そして再び繰り返される歴史……。諸行無常を味わえる良作だと感じました。