第12話 マイホーム
「そろそろ昼の魔物じゃ物足りなくなってきたなー」
週末、朝食後にカヌレ町へ転移し、幽霊屋敷でアンデッドを倒して魔石に変えていく。もはや作業ゲーである。
ここはいつも貸し切り状態だ。
聖属性持ちには楽な狩場だが、聖属性持ちは元々少ない上に教会に所属する者が多いため、冒険者となるとさらに少ない。それに、アンデッドは獣タイプの魔物のように肉や皮等の素材を落とさないので人気がない。
一時間程でアンデッド狩りを止める。今日は他にしたい事があるのだ。
元は領主の別邸であるここの広い敷地の端に、煉瓦造りの家がある。
しっかりした建物で、寝室、居間、ダイニングキッチン、広い土間、屋根裏部屋があり、トイレ、風呂付き。
土間に置かれた錆びた道具類を見るに、庭師の家だったんじゃないかと思う。
先週この家を見つけた時に思った。予定では夏休み明けに学院を退学してカヌレ町で家を借りるつもりだったが、この空き家をマイホームにするのはどうだろう。
家賃がタダ。日当たりは最悪だが、冒険者もこんな所までは滅多に来ないだろうし、伯父に見つかることもない。
今日は試しにここに泊まろうと思っている。外泊届も出してきた。
庭師の家の玄関前で、家を包むように結界を張る。この程度の大きさなら結界を張りっぱなしでも大した負担ではない。これで魔物も私以外の人間も入れない。
中に入り、聖魔法の光で室内を明るく照らす。
食器棚やテーブル、椅子、ベッド等の家具は埃を被っていたが、腕のいい職人が作ったと思われる品々で十分使えそうだ。
まずは、聖魔法の洗浄で家中ピカピカにしよう。
◇◇◇
家は見違えるほど綺麗になったが、住むとなると、やっぱり昼も外が暗いのは引っかかる。いくらタダでも…いやでもタダなら…。
外に出て、家の上空に小さな太陽っぽい光球を出してみる。
「うわっ、魔力食う」
慌てて光量を抑えた。
魔力の消費が大きいし、なんか夜の工事現場みたいだし、微妙。
庭師の家は敷地を囲む壁に近い。
試しに、敷地の外、高い壁の向こうまで結界を広げてみた。
結果、四角い敷地の一部がかじり取られたようにダンジョンの理から外れ、庭師の家を含むその部分に日光が差すようになった。
◇◇◇
節約のためにいつもは週末の昼食も寮の食堂に戻って取っていたのだが、気分がいいので今日のランチはカヌレ町のお洒落カフェだ。
席に案内されて、日替わりワンプレートランチを注文する。
食後は、茶葉とおやつ、夕食と朝食用のパンとお惣菜を買おう。
茶器や食器、カトラリーは庭師の家にあったけど、屋敷の厨房も物色してみよう。
庭師の家のいらない物は売るか捨てるかした方がいいな。
午後は、食材の買い出し→庭師の家の物品整理→屋敷の物品漁り→夜のアンデッド狩り。適当な時間におやつ、夕食、お風呂、就寝だな。
枕とシーツは寮のをアイテムボックスに入れて持ってきてるけど、今晩泊まってみて問題がなければ、カヌレの家用に寝具を新しく買おう。カーテンも新しくした方がいい。
不要品の売却と冒険者ギルドへの魔石納品は明日にしよう。
注文した料理が来るのを待ちながら、私はうきうきと休日の予定を立てていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます