妄想メトロ

ある日いつもの地下鉄で


彼女は突然現れた


満員電車に関わらず


人混みを避けてそばに来て


何食わぬ顔で近づいて


僕の身体に押しつけた


ナニこれちょっとちょっと待って


マジこれちょっとちょっとヤバい


時にはキュッとしたHが


時にはむにゅっとしたBが


後ろ前とも関わらず


僕に押しつけられてくる


テレワークなんて一部の会社の話さ、今日も地下鉄は月曜の朝から混んでる。

一つ目の駅でまた彼女が乗り込んできた、僕の心拍数が跳ね上がるよビート!

いつも人混みをかき分け、僕のそばに近づいて、

誰の後ろに隠れても、バッグで防ごうとも、

彼女は巧みにそれを避けて僕に押しつけてくる。

車両を変えても、時刻を変えても、いつのまにか見つけらてしまう。

ナニこれちょっと怖いんですけど? お母さん! 東京は恐ろしかとこじゃ!


今日も見つけた可愛い人


私を助けてくれた王子様


あなたが割って入ってきてくれたお陰で


あのとき私は救われたの


えっ?


たまたま押し流されてきただけじゃないかって?


違うわこれは運命なのよ


あなたとは前世から赤い糸で結ばれていたの


きっとね


あぁ、でも今日もとても素敵


ブルガリのアクアプールオムマリン の香り


良い匂い



電車が揺れる


身体も揺れる


そして触れる


心も揺れる


そして匂いが重なり


妄想が駆け巡る


「次の駅で乗り換えよう」

「終点まで行きましょう」


メトロは走る


暗闇の中


次の停車駅


扉が開くのは


どっち?




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