週末の帰り道に

小雨の降る


濡れたアスファルトの上


ヘッドライトが


鋭く光って


街の雑踏が


耳に響く



肩を窄めて


ようやく地下道に駆け込み


ホームに着くと


目の前でゲートが閉まり


地下鉄の電車は出ていった



次の電車に乗り込めば


ほっとした


週末の安心感と


連休明け


身体がまだ馴染まないところの


倦怠感および


来週の仕事を思う


憂鬱とが


椅子に背もたれ


つり革につかまり


まん延していた



でもやがて


停車駅が重なるごとに


ぽつりぽつりと


密は疎となり


弛緩した空気が


やがて車内を包んでいけば


寂しげな胸で


タイミング良く震える


スマホの着信



何かを期待して見れば


でもただのDM


自分が送らないのだから


無理もない



どうせ人は与えたものしか


与えられないのだ



突然、斜め前の客が


急に気付いたように


慌ててホームに降りていった


間に合って良かったね



そんな少し


優しい気持ちになって


自分の駅で降りて


出口を出てみれば


雨は上がり


薄雲の隙間から


月が覗いていた


少し優しげな


朧げな光で



週末の帰り道


濡れたアスファルトが


少し優しく輝いていた

 

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