詩集 鏡箱

TiLA

イカロスの翼は折れようとも

それは以前やったことがある 

でもダメだった 

だから無駄なことはやめとけと

よく言われた


先輩それはあなたがやったからでしょうと

顔に書いてあった僕も

相当生意気だったことでしょう


昔ある学者が鳥と人間の骨の密度を測った

鳥の骨の密度は人間の6分の1だった

実際は真密度ではなく嵩密度だったけど


それでも密度なんていう原理を知らなかった時代に

立派な学者の先生がそう仰った

だから聴衆は皆

『人間の筋力が6倍にならなければ

 人間は鳥のように空は飛べない』と

その学者の言葉を信じた


そして鳥の羽を模した翼で空を飛ぼうとする

挑戦者をあざ笑った


もしそこで100人が100人諦めていたなら

挑戦者が皆、心が折れていたなら

今日僕たちは飛行機を手に入れてただろうか


でも

それでも空を飛びたいと

どうしても空が飛びたいと

強く願ったから 夢を諦めなかったから

そんなへそ曲がり屋が居てくれたおかげで


ライト兄弟は空を飛んだのだ

アポロは月まで行ったんだ

ボイジャーは太陽系をこえて


興味深いことに鉄の翼の飛行機が

なぜ空を飛べるのか

それは翼に揚力が発生するからであり

揚力は翼の上下で風の通り道の距離に差をつけることで

翼の上と下の空気の密度が変わって発生する


つまり


あれほど否定するための理由にしていた

密度という原理によって

人間は空を飛んだのだ


だから先輩

その原理は有り難く教えて頂きますが

だから無理だというその結論については

心の中で先延ばしにしておきますね


たとえそれで自分も失敗したって構わない

自分はイカロスの翼であったとしても


それでも自分の後輩には

最後にこう言おうと決めている

俺にはできなかったが


お前ならできると

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