第17話        君が来ない

うんざりするくらい快晴だ

空には雲1つなく、よく冷えたおいしいラムネを彷彿させるような水色が

上空一面に広がっている

蒸し暑いわけでもなく、程よく涼しい風が窓を介して流れ込んで来る

それを心地よく感じながら時計に目をやると

女の子との約束の時間からかれこれ30分が過ぎている事に気がついた

このような状況はよくあることなので、僕自身そんなに気にしてはいないが

全く気にならないと言ったら嘘になるのかもしれない

女の子の検査結果データを見ながらあれこれと作業をしていると

僕のスマホが無機質な電子音と共に

僕に何か伝えたいことがある人がいる事を知らせていた

スマホを手に取り、通話可能にして耳にあてる

少しの沈黙の後、あの女の子の声が僕に入り込んできた

「ごめんなさい。ちょっと遅れます。もうちょっと待っててもらっていいですか?」

謝る必要性は今のこの件に関してそんなにあるわけでもないのだが

世間的な形式上のベタなあいさつとして的確なのだろう

「大丈夫。気にしなくていいですよ。何かあったのか多少心配したけどね」

僕自身、ありふれた会話をしているな・・・と思いつつ

少なからずとも気にしていた事は嘘ではないのでそのような返答になる

「よかったぁ。もうちょっとしたらそっちに行けるから、待っててね」

自分の気にしていた事がそんなに問題ではない事に安堵したのか

女の子が気楽な雰囲気で言葉を発してくる

「何もないのなら安心したよ。慌てなくていいから気を付けてきてね」

僕がそう告げると

「はぁ~い!わっかりましたぁ~」

どこか吹っ切れているような、どこか投げやりな妙な明るさを伴って

女の子が返答を返してくる

返答をしたと同時に通話がプツンと切れて会話の終わりを告げていた

何も音を発しなくなったスマホをデスクに置き

女の子がこちらに向かっていることを知って安心し

僕は視線を窓の方へ向けた

快晴過ぎる空の下、透明な風が白いカーテンをふんわりと柔らかく波立たせている

多数の人間が気分がいいと感じるであろうこの環境

ごくごく普通の平凡な日常が営まれているであろうこの時間の流れ

穏やかで平和極まりない時間がただただ流れていく

ただただ流れていくその時間の中に女の子が現れることはなかった

地球がゆっくりと自転し、太陽の明るさが追いやられ

宇宙の暗闇が幅を利かせ始める時間帯になっても

女の子が「0」の扉を開けて僕の前にその姿を現すことは・・・・・なかった

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