青春死体!


 そこは不老不死の亡者共が集まる老人(?)ホーム。

 そこでは日夜、青春を追い求める亡者共が議論を交わしていた。


「戦争とかよく流行ってたよなぁ」

 

 吸血鬼がそんな事を言う。

 魔女が溜め息を吐き。


「そんなの最近もじゃない。もうボケた?」

「うーあー」

「確かに、あの薬物会社は危険だ」


 魔女を無視しゾンビの呻き声に反応する吸血鬼。

 そこに尸解仙が口を挟む。


「ねぇ、私等eスポーツプレイヤー目指さない?」


 しばしの沈黙。

 のちに魔女が口を出す。


「何よ藪から棒に」

「私達。動体視力とか落ちてないじゃん! 行けると思わない!?」

「いやいやいや、今更無理でしょ」

「時間ならたくさんある」

「なんのゲームやるのよ」

「……格ゲー?」


 溜め息を吐く尸解仙以外の全員。


「第一に目立つ、第二に目立つ、第三に面倒くさい」

「第一と第二が一緒!?」


 おもむろにゾンビが立ち上がった。

 吸血鬼がその意志表示を翻訳する。


「そーだそーだゾンビを仲間外れにするな」

「うーあー」

「バイオハザード対策部隊がどうした」

「あんた本当にゾンビと会話出来てんの?」


 議論は続く。


「Vtuber!」

「あーありかも」

「吸血鬼Vtuberとかもう氾濫してるんだが」

「うーあー」

「何!? ヘリが墜落!?」

「だからなんの話してるんだゾンビと吸血鬼ィ!」


 魔女のツッコミが飛ぶ。


「俺の日の下に出れないの不利じゃねぇ?」


 吸血鬼が挙手して言った。


「克服しなさいよ、最近流行りでしょ。太陽を克服する吸血鬼」

「青い彼岸花持って来て!」

「おいやめろ、まだ読んでる途中なんだ」


 尸解仙のマジツッコミが飛ぶ。


「流水もダメなんだぜ? 雨の日とかどうするよ」

「あんた曇りしか出かけられないもんね(笑)」

「おい表出ろ」

「いいの? 死ぬのアンタだけど」


 魔女と吸血鬼は犬猿の仲らしい。


「昔流行ったと言えばさぁ」


 魔女が話題を最初に戻す。


「魔女狩りとか流行ったよね」

「お前が言うと説得力あるな」

「吸血鬼狩りは流行らなかったの?」

「極地的ブームだったなぁ」

「ふーん」

「興味ないなら聞かないでもらえますかねぇ」


 額に青筋を浮かべる吸血鬼。

 魔女はあくびをしながら。


「結局どうする私等の青春取り戻し計画」

「流行りに乗ってソロキャン、夜ならワンチャン……!」

「朝日と共に死ぬんですね分かります」

「イラァ」

「時事ネタはすぐ風化するってそれー」

「ファンに失礼だろうが!」


 ゾンビが立ち上がる。


「うーあー」

「何!? 超強い暴君が追いかけてくる!?」

「だからなんの話してんだテメーら!」

「あーもうめちゃくちゃだよ」


 一旦状況を整理しようという話になって。


「無難にYouTuberで」

「無難か……?」

「しばらくはゾンビの欠損ショーでもたせる」

「即BANだわそんなもん」


 状況は整理されなかった。


「吸血鬼、あんた輸血とかどうしてんの」

「病院に駆け込む、わざと大量出血して」

「は? なにそのマッチポンプ。意味あるの?」

「不老不死と吸血行為自体が呪いだから、血さえ吸えれば総量とかは関係ない」

「出禁になったりしないの?」

「病院ころころ変えてるから大丈夫……多分」


 話題が逸れた。まあ実はいつもの事だ。

 こうしてだらだらと毎日を過ごす。

 それが不老不死老人ホームである。

                          完

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