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「ええっと……見た限りでは……重要なデータは、このモバイルPCじゃなくてファイルサーバーに有るようです」

 堤が高校時の後輩のFランの大学の工学部卒のヤツは、そう説明した。

「ええっと……こいつ、何言ってるの?」

「さ……さぁ?」

「あのなあ……俺達からマウント取るつもりで、意味の判んねえ事言ってんだけだろ、おい」

「ええっと……。あ……つまり、他のPCの中に重要なデータが有って……このノートPC中には、大したモノは……」

「なら、最初から、そう言えよ」

「ただ……変なデータとアプリが……」

「何?」

「これです」

 そう言って、そいつはPCを操作すると……。

「何だ、こりゃ?」

 そこに表示されたのは……誰かが自撮りをしてるように見えるCGだった。

 携帯電話ブンコPhoneらしきモノを自分の前方に構えてる人間……ただし、顔はのっぺり、服も着てない。

「写真を画像解析して、その写真が、どう云う状況で撮影されたかを解析するフリーソフトです」

「ええっと……つまり?」

「誰かが、こいつに送ってきた写真が、自撮り写真じゃないかと疑ってて調べてたみたいですが……」

「どう云う事?」

「……さ……さぁ……?」

「で……他に情報は無いの?」

「Webメールで、こいつと仕事関係の情報をやりとりしてたヤツが……」

「誰?」

「こいつです」

 次の瞬間、表示されたのは……。

「お……おい……これ……」

 ミニコミ誌に載ったクリムゾン・サンシャインの写真……いや、複数枚だ……。

 どうやら、何枚も送られたクリムゾン・サンシャインの写真の内、一番、写りが良かったモノをミニコミ誌に掲載したらしい。

「あと、このメールに対する返信も残ってました」

『いつも、ありがとう。礼金は明日中に振り込んでおきます』

「府川拓海……『ふかわ たくみ』って読むのか、こいつ?」

 それが、俺達を何度も護ってくれた「クリムゾン・サンシャイン」を「売った」野郎の名前らしかった。

「『地元民』の名字じゃないっすね……」

「ん〜、ん〜、ん〜……」

 部屋の片隅で、声を上げ……ようとして失敗してる奴が居た。

「あれ〜? 優くん、まさか、こいつ知ってるの〜?」

 マンションのリビングの片隅で縛られてSMプレイ用のギャグを咥えされられて転がってるのは……実の兄である俺を県警けいさつに売ろうとしやがった不届きな妹と……その亭主だった。

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