(2)

 ここんとこ、クソ親父・クソ義弟おとうと・クソ妹と顔を合わせる羽目になると嫌な思いをするだけなので、仕事が終ると、実家ではなく、西鉄の駅の近くに有る親父に買ってもらったマンションに帰る事にしていた。

 あれから数日……次の行動を起こさないと、SNSや動画サイトの「同志」達が、俺達の存在を忘れてしまいかねない。

 そして、「同志」達からの「投げ銭」が無いと……こいつらが生活出来なくなる。

 「こいつら」とは……俺の部屋でダベってる連中の事だ。

 自分達がやった事を撮影した動画に自分で「投げ銭」をするのも、そろそろ限界だ……。いや、「御当地ヒーロー」どものせいで、ロクな「成果」は出てないが。

「あの〜、緒方さん。このミニコミ誌に妙な記事が出てますよ」

 一緒に「活動」をやっている堤が地元のミニコミ誌のページを開く。

 富士山の噴火で、東京が壊滅して以降、「新聞」と言えば地元の地方紙、「雑誌」と言えば地元のミニコミ誌と云う状態になっていた。

 内容は……俺達を助けてくれたヒーロー「クリムゾン・サンシャイン」を叩く記事だ。

「おい、それ、そこのいつもの記事だろ。目が腐る。そんなモン見せるな」

「いや……違いますよ。この写真良く見て下さい」

「えっ?」

 その記事に載ってる写真は、クリムゾン・サンシャインの顔。

 斜め上から撮ったらしい写真だが……クリムゾンサンシャインの顔は……カメラの方を向いている。

「だから、この写真が何だ。使い回しじゃないのか?」

「違いますよ」

「何で、そう言い切れる?」

「だって、背景……」

「えっ?」

 そう言われて写真の背景に写ってるモノを良く見ると……。

「おい、これ……この前の団地?」

「で、この写真……誰が撮ったんですかね?」

「判る訳ねぇだろ」

「いや、良く考えて下さい。住民は、もぬけのから。あの時、あそこに居たのは……俺達と『御当地ヒーロー』どもと俺達のクリムゾン・サンシャインだけですよ。なら、この写真を撮ったのは、その中の誰かですよ」

「俺達……じゃないよなぁ……」

「そりゃ、当然」

「確認した方が良くない?」

 部屋でダベってた連中からは一斉に「違います」「俺じゃない」の声。

「クリムゾン・サンシャインも、まさか、自撮り写真を自分を叩いてるミニコミ誌に提供する訳は無いし……」

「ええ」

「じゃあ……」

「そうですよ……。もしですよ……俺達が、あの『御当地ヒーロー』達の正体を暴けば……」

「そうだ……そうだよ。ヤツらだって、寝る事も有れば、風呂にも入る。四六時中、自分の身を護るのは無理だ」

「俺達……下手したら、日本で初めて……『御当地ヒーローを倒した一般人』になれますよ‼『御当地ヒーロー』達をウザがってるみんなの英雄になれますよ、俺達‼」

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