第149話 久しぶりの討伐クエスト 其の二

 俺が選んだのはここで最初に討伐したコボルトのクエストだった。


 奇しくも、貼られていた中ではこのクエストだけが、Cランクで討伐数が一体だったのだ。推測だがコボルトはCランクの中では体長が大きく、運びにくいから討伐数が増やせないのかもしれない。


 ガサガサと低木の隙間にある獣道を進んでいくと、コボルトの上半身が低木から生えているのが見える。こんなに早く見つかるとは幸先がいい。


 気付かれないように木陰に身を隠して考える。


 やはり雷の魔法剣で痺れさせてとどめを刺すか。とどめは確実で素材も傷つけにくいから、首を落とすのがいいだろう。


 手順を再確認した後、コボルトが後ろを向いた隙に木陰から飛び出し、剣に雷の魔法を纏わせる。


 足音に気付いたコボルトはこちらを振り返ると、背を向けて逃げ出そうとする。その背中は隙だらけだ。


 モンスターは人を見ると逃げるものが多く、その判断が正解なときもあるが──ここでは悪手でしかないだろう。すぐさま追いつき、背中を剣で軽く斬りつける。


 短い断末魔を残して、痺れたコボルトはバタリと倒れた。


「あ……」


 背中を見ると、肩から斜めに大きく深い傷ができており、血がどんどん溢れてくる。毛皮を傷つけないように雷の魔法剣を使ったのに、これでは買い取り価格がかなり下がってしまいそうだ。


 軽くやったつもりだったのに、ここまでざっくりといくとは……俺が成長したことは分かったが、こんな形で知りたくはなかった。


 ため息をつきながらコボルトの首を落とし、水の魔法で血をざっと洗い流す。首のないコボルトの胴体を背中に乗せ、持ってきたロープで自分の体に縛り付けて固定する。


 ずり落ちてこないことを確認した後、落とした頭を手に持ち、ギルドへと戻る。




 ギルドに戻ると、すぐにコボルトの死体を係の人に渡し、報酬を受け取る。やはりというか仕方のないことだが、今回の報酬は少なかった。


 主な素材である毛皮の真ん中に大きな傷があるのでは、査定額もガクンと下がるというものだ。


 まあこの報酬次第で生活が立ち行かなくなるというわけではないのだが、やはり悔しいというか──


「なあ、もしよかったらなんだけどよ。魔法剣ってやつを俺たちに見せちゃあくれないかい?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る