第20話 ドラゴン討伐 其の六

 式典が終わった後、俺は冒険者ギルドに呼び出されていた。


「ドラゴンを討伐してくださって本当にありがとうございました。戦って命を落とした者も少しは浮かばれるでしょう」


 無事に討伐が終わり街の危機は去ったが、亡くなった人はたくさんいる。そのことを想うと胸が痛む。


 この職員さんも辛いはずだ。何年も仕事を一緒にしてきた冒険者が揃って亡くなってしまったのだから。


「今回のドラゴン討伐の報酬ですが、まずはこちらがドラゴンの素材を換金したものです」


 よっこいしょ、とカウンターに大きな袋が置かれる。中身を覗くと見たこともないような量の金貨が入っていた。


「そして、こちらがクエスト達成の報酬です」


 同じくらいの大きさの袋がもう一つカウンターの下から出てくる。


「今回、コルネさんはお一人でドラゴンの幼体を討伐されました。状況からCランクパーティ以上の実力は確実におありだと判断しました。よって、コルネさんをメンバーが一人のCランクパーティとして登録しておきました」


 メンバー一人のパーティ──これはかなり異例なことだ。通常、一人で討伐などの危険を伴うクエストを受けることは許可されない。死亡率が跳ね上がるからだ。


 昔、師匠は一人で大物を討伐してそれを覆して一人のパーティとして登録したことがある──そう聞いたがもしかして俺が師匠の弟子だということも関係あるのだろうか。


「現在パーティを組んでいないということで、次のパーティを組むまでクエストを受けられないのは不便でしょうから」


 パーティとして登録しておくことで、もしこのようなことがまた起こったら堂々と依頼が出来るということか。そういう魂胆もあるのか……こんなことは滅多に起こらないだろうから、別に構わないけども。


 お礼を言って、立ち去ろうと袋に手をかけると感じたことのないずっしりとした重さを感じた。


 俺、こんな大金持って街中歩けるかな……


 * * *


「だめだったか」


 昏い部屋の中、部下の報告を聞き男は舌打ちをする。


「せっかく危険を冒してまでドラゴンの子どもを攫ってきたというのに……」

「申し訳ございません」

「仕方ない。次の機会を待っておけ」

「承知いたしました」


 そう答えるともう一人は音を立てぬように扉を開け、するりと部屋から出ていった。


「さて、次は何にするか……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る