第18話 ドラゴン討伐 其の四

 目が覚めると見慣れた天井があった。どうやら道場のベッドに寝かされているらしい。


 そういえば俺はドラゴンを倒したのか……? そのあたりの記憶が曖昧でよく覚えていない。たしか師匠がよく頑張ったね、って言ってくれて──


「コルネくん、起きたようですね」


 俺が目を覚ましたことに気付いたヘルガさんが師匠を呼ぶと、ドタドタという音がこちらに向かってくる。


「おはよう、コルネくん。体は大丈夫かい?」

「なんともないです」


 あのときは本気で毒の魔法を使ったはずだが、もう息苦しさは感じない。


「よかった……でもあれは今後あまり使わないようにね」

「もちろんです」


 俺だってあまり使いたくはなかったが、あれしか使えるものがなかったから仕方なく使ったのだ。まあ俺が戦闘不能になっても師匠がどうにかしてくれるという絶対的な安心感はあったが。


「それにしてもすごいじゃないか! 幼体とはいえドラゴンを一人で討伐するなんて!」

「いやあれは師匠がいたから──」

「僕は何もしてないよ。これはコルネくんの功績さ」


 記憶にある限りでは思いっきり片前脚を切り落としていた気がするが……それは直接の死因ではないのでノーカウントというやつだろうか。


「その功績を讃えて、この後市長から表彰される予定になっているんだけど、式典には出られそうかな? 向こうも昏睡していることを伝えたら無理にとは言わないという話だったけど」

「たぶん大丈夫だと思います。疲れもないですし」


 表彰式にはおそらく出られるが、今昏睡という単語が聞こえた気がした。


「言ってなかったけどコルネくん、あれから丸一日寝てたよ」


 丸一日も寝ていたなんて……道理で外が明るすぎると思った。今後毒の魔法は滅多なことでは使わないでおこうと心に誓った。




 街の中心にある広場のステージで俺は市長さんと相対していた。


「コルネ殿、ラムハの街を守っていただいたこと、市民を代表して深く感謝いたします」


 深々と小太りのおじさんが頭を下げる。そうか……ドラゴンを倒すことで俺はラムハの街を守ったのか。あのときはドラゴンを討伐することしか頭になくて、今になってその考えに至った。


「──その功績を讃えてここに表彰いたします」


 その声を聴くや否や、周りから割れんばかりの歓声が押し寄せる。


 周りを見ると、屋台で串焼きを売っていたおばさんや野菜を売っていたおじさんなど見知った顔がちらほらと見えた。ああ、この人たちの暮らしを俺は守ったんだという実感がだんだんと湧いて、自分がとても大きなことをした気がしてきた。


 街の人々に軽く手を振り返す。


これで少しは兄さんに近づけたかな、アルノ兄さん。

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