第17話 ドラゴン討伐 其の三
ひたすらに攻撃を流しながら隙をうかがう。狙うのは爪を振り下ろした直後、次の攻撃に移るまでの瞬間だ。
しかし片方の前脚で攻撃したらすぐにもう片方の攻撃が飛んでくるため、次の攻撃がすぐには繰り出せないかそれを必ず避けられる状況を作り出す必要がある。
そろそろ体力がなくなってきたと思っていた矢先、その瞬間は訪れた。足元の死体にドラゴンが少しよろけたのだ。
「ブライト!」
すかさず一瞬だけ瞼を閉じ、光の魔法を素早く唱える。まだ慣れていないため呪文で補助をしつつドラゴンの目の前を発光させた。
サラさんほどの眩しさはないが、ドラゴンは目がいいことと空が曇っていることでかなり効くはずだ。
目を開け、ドラゴンが眼を押さえ悶えているのを確認する。どうやらきちんと効いているようだ。第一段階はクリアだ。
口の高さまでジャンプする予定だったが、都合のいいことに目を押さえながら少し前屈みになっている。これなら跳ばなくても届きそうだ。
ドラゴンとの間合いを詰めながら、毒の魔法を精一杯の強さで発動させる。途端に呼吸が苦しくなるが、今立ち止まるわけにはいかない。
足がもつれながらも半ば倒れこむような形でドラゴンの口の内側に剣を突き立てる。
「ギガゴァァァァァァァァァァァァ」
途端にドラゴンが叫び、必死に頭を振りだす。俺を振り落とそうとしているんだろう。
ここで落ちるのはまずい。体に力の入らない状態で落ちれば、受け身が取れずかなりの重傷を負うだろう。
何より今は頭にくっついているから飛んでこないが、落ちてしまえば前脚での攻撃が絶対に来る。今の俺に避けるすべはない。
どうにか力を振り絞り、剣を持つ手に込める──と次の瞬間、体のそばを何かが掠める。爪だ。自分の頭に当たらないように爪で攻撃しているのか。
頭にぶら下がっている俺の位置を正確には把握できていないようだが、これを何度もやられるといずれ当たってしまう。
気が付けば、反対側の爪が迫ってきているのが目に入った。このままだと当たる、だめだ避けられない──
「コルネくん!」
その刹那に師匠の声が聞こえ、ドラゴンの前脚が斬り落とされたのが見えた。結果、爪は俺の体の下を通りすぎ、少し離れた地面に落ちた。
さらに激しくドラゴンがもがきだすと思って強く剣を握ろうとすると、突然動きが止まった。
きっと毒が効いたのだ。よかった、もう安心だと思うと急に力が抜けた。
「あ……」
落ちてしまうがもう攻撃の心配はない──そう思い安心していると師匠が受け止めてくれた。
ヴッ、と漏れ出る声と歪む表情に申し訳なさをとても感じたが、受け止めてくれてありがたかった。
師匠は倒れてくるドラゴンの死骸を避けてから俺を地面に寝かせ、懐から小さな瓶を取り出した。いつも修行で使っていた解毒剤を持ってきてくれていたようだ。
栓を開け、中身を流し込みながら師匠は安堵の表情を浮かべている。たしかに最後はかなり危なかった……師匠が助けに入っていなければ死んでいただろう。
「よく頑張ったね」
その言葉を聞くと、ぷつりと糸が切れたように俺の意識は闇の底へと沈んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます